42.肉を解体してもらってウキウキなニワトリスたちと、茫然とする俺

「今日はこれぐらいでいいかー?」


 暗くなる前に解体しているおじさんたちから声がかかった。

 羅羅もニワトリスたちもよだれが出ているような気がしたけど、解体している肉に飛び掛からなかったのはえらいと思う。


「ありがとうございますー!」


 買い取り分と、肉と一部皮などを避けてくれたみたいだ。


「けっこう高値で売れる肉なんかもあるんだが、全部引き取るのか?」

「ええ、うちの従魔たちが自分で食べる為に狩ってきたので……」


 全くどんだけ食いしん坊なんだかと思う。


「そっか。一応毒を含む肉はわかりやすいようにこっちに避けておいたぞ」

「ありがとうございます」


 見た目だけじゃなんの肉かわかんないしな。一応アイテムボックスから出す時に~の肉とか考えればそれが出てはくるんだけど、リストが出てくるわけではないから困るのだ。それとも全リスト出てこいとか考えたら出てくるもんなんだろうか。つくづくいろいろな能力について説明書がほしい。

 買い取り分は毛皮やよくわからない部位などいろいろだった。石がごろごろある。そういえば魔物は体内に魔石があったのだった。それはニシ村でもいただいてきたのを今頃になって思い出した。


「これが買い取りしたリストだ。確認してくれ」


 薄い木板になにやらいっぱい書いてあるんだが、数字しかわからない。読めないって困るなぁ。


「……すみません。数字はわかるんですけど読めないので読み上げてもらってもいいですか?」

「読めないのか。必要最低限読めるようにはしておいた方がいいぞ? そうしないと騙されるからな」

「そうですよねぇ。でも文字を教えてくれるところなんてあります?」

「だったら依頼を出せばいい。時間と労力に見合うと思えば誰かが受けてくれるだろ」

「そうですね。頼めるだけのお金があれば依頼したいかなぁ」


 そう言うとおじさんたちがキョトンとした顔をした。


「……ボウズ、もしかして今まで魔石を売ったことはないのか?」

「ないですね。こちらが初めてです」

「……だが、ここに来る前もニワトリスたちと一緒にいたんだろ? 魔物を狩った時の魔石はどうしたんだ? ニワトリスたちが食ったのか?」

「……あんな硬いもの食わん」

「カターイ」

「オトカー」

「シラナーイ」


 みんな即答してくれた。ありがとう。でもクロちゃんや、それじゃ俺が魔石みたいだよ?


「あー……そういえば解体した時石が出てきましたね。やっぱりあれは魔石なんですか。機会がないのでそのままでしたけど」


 道中、ニワトリスたちが狩ったのを解体した時に出てきた小さい魔石をカバンからいくつか出した。(もちろんアイテムボックスを繋げている)確かこれはでっかいネズミモドキから出てきたんだよな。


「自分で解体したのか」

「はい」

「なかなか手慣れてるな」


 石を見せてほしいと言われたので一個渡した。おじさんはその石を持って重さを測るような仕草をすると、苦笑してこう言った。


「ボウズ、これ1個で大銅貨1枚になるんだが、知ってるか?」

「えええええ?」


 そんなことは初耳だ。


「え? じゃあ……ここにある魔石は……」


 買い取り用の台に置かれた魔石の山を見る。


「一番小さいのでもこれぐらいの大きさだな」


 眩暈がしてきた。俺、もしかして一気に大金持ち?


「じゃあ読み上げていくから、ちゃんと記憶しろよ。ボイズンオオカミの魔石が4つ、各銀貨2枚で8枚。ポイズンラットの魔石が3つ、各大銅貨5枚で銀貨1枚と大銅貨5枚。グレートボアの魔石が5つ、各銀貨2枚で大銀貨1枚。ボアの魔石が4つ、各大銅貨7枚で銀貨2枚と大銅貨8枚、それから……」


 最終的にすごい金額になった。でも実はこれで約半分なのだ。残りは明日引き続き解体してもらうことにして、一旦シロちゃんにしまってもらった。アイテムボックスの中は時間経過がないからね。

 一番高かったのはブラックディアーの魔石で、1つで大銀貨1枚だった。それが2頭分とかどうなってんだ?

 こちらの世界の通貨は、あまり使われない鉄貨が一番下で、1枚当たり元の世界の10円ぐらいの価値だ。(おおよそである)

 鉄貨が10枚で、銅貨1枚。銅貨1枚で100円ぐらいだな。つまり冒険者ギルドの”パン一切れと野菜スープが付くセット”というのは300円ぐらいということになる。まあまあ良心的なセットだと思うのは、この世界の貨幣に俺が慣れていないせいかもしれない。

 次。銅貨10枚で、大銅貨1枚。大銅貨10枚で、銀貨1枚。銀貨10枚で、大銀貨1枚。大銀貨10枚で金貨1枚だ。金貨とか100万円相当だからまず子どもの俺が見る機会はないだろう、そう思っていたのだが……。

 読み上げは魔石だけでなく毛皮や羽、皮にまで及んだ。それからポイズン系の肝臓を買い取りたいと言われたので従魔たちに聞いてみた。


「うまいのだが」

「タベルー」

「オトカー」

「イラナーイ」


 やっぱ内臓は全取りなんだな。まぁ一番栄養がある部位だし。


「内臓はこちらで全て引き取ります」


 ピーちゃんは肉食べないでしょ。クロちゃんは俺を食べようとしないでね?


「そうか。いい薬ができるらしいんだがなぁ……」


 おじさんは残念そうに言った。約半分だけでも全部で23体もあったらしい。だからうちの従魔はどんだけ魔物を狩ってきたんだよ。中にはポイズンイーグルやターキーとかもいたみたいだし。


「じゃあ……解体費用を引いて、しめて大銀貨9枚、銀貨9枚、大銅貨8枚だな」

「……はい?」

「肉とボアの皮1枚一枚は渡していいんだろ?」

「あ、はい……」


 なんかよくわかんないけどすごい金額をもらった気がする。


「あ、ええと、毛皮が欲しかったんですけど……」

「うーん……じゃあポイズンラットの毛皮三枚分を返そう。ボウズが使うんだろ?」

「はい」


 ってことで大銅貨9枚を返すことになり、全部で大銀貨9枚、銀貨8枚、大銅貨9枚になった。日本円で換算すると約98万9千円である。

 どゆこと?

 とりあえず肉と皮と毛皮をクロちゃんに回収してもらい(ポイズン系はわかるようにしてねと注意した)、お金はカバンにしまうフリをしてアイテムボックスにしまうことにした。

 で、大銅貨は1枚分銅貨に両替してもらった。


「……ありがとうございます」


 かろうじてお礼は言えた。


「アイテムボックスっつーのは本当に便利だな。また明日なー」

「……はい」


 そうしてぼーっとしながら羅羅の背に乗り、ゆっくりと防衛隊の詰所まで移動してもらったのだった。



ーーーーー

話を書くよりも設定と金額の計算で時間を食うという。。。

ここには全部は記載してないので計算しても合わないですー。


連載開始して一か月が経ちました。これからもよろしくですー

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