でっかくてかわいいもふもふが増えました

41.仲間が増えたニワトリスたちと少し事情を聞く俺

 冒険者ギルド内にギルド長はいたらしく、また呼ばれてしまった。

 いちいち呼ばなくてもいいと思う。ただの依頼完了報告と従魔登録だけなんだし。


「おう、来たか。上がれ上がれ」


 でもドルギさんは俺がまた戻ってくるのを待っていたらしい。二階に手招きされた。


「あの……先に依頼の完了報告をしたいんですが……」

「あ? ならとっととやってしまえ」


 職員はしぶしぶという体で手続きをしてくれた。そんなにうちの従魔たちを怖がらなくてもいいじゃないかよー。すっごくかわいいんだぞ。俺にとっては、だけどさ。(虎が怖いというのはなんとなくわかる)

 ペット探しの依頼を二件受けて、銅貨4枚なり。

 ちなみにこういった依頼を二十件(物によっては二件とか三件分になるらしい)受けるとランクが上がるのだそうだ。ちなみに止血の薬草は20枚で一件分らしかった。そんなわけで俺は三件分の依頼を達したことになる。それはギルドカードにもマークの数で記載されていた。ちょっとにまにましてしまう。

 ランクが上がれば受けられる依頼の種類も増えるもんな。

 しっかしチップも含めて銅貨11枚か。(銅貨10枚で一応大銅貨1枚にはなる)ここのパン一切れと野菜スープが付くセットなら銅貨3枚で食べられるけど、それじゃ腹いっぱいにはならないし、たぶん宿にも泊まれないだろう。今夜はチャムさんのところにお邪魔できるからいいけど、そうでもなければ安すぎて到底受けられない依頼だったと思う。でも小さい子がお小遣いを持って大事なペットを探してくださいって依頼してきたのだと思ったらほっておけなかったのだ。

 それが結果的にこんなことに。

 そんなことを考えながら、また羅羅ルオルオに乗って二階へ向かった。受付への報告の時は降ろしてくれたんだけど、そういう用のある時以外冒険者ギルド内では降ろす気がないらしい。羅羅はなかなかに過保護だ。

 羅羅がギルド長のいる部屋の扉をガンガン叩く。


「羅羅……もう少し優しく……」

「面倒だ」


 羅羅はへんなところでおおざっぱだと思う。普通魔物がドアをノックするなんてことはないから、俺が考えてることの方がおかしいかもしれない。


「入れ!」


 中から返事があったので、さすがに羅羅から降りて入った。みんな一緒である。


「大所帯だな……部屋が狭くならあ」


 ソファに寝そべっていたドルギさんが呆れたように言った。そして座り直す。


「まあいい。まだ途中だが、一応知らせておく。答えられないことは答えないが、いいな?」

「はい、かまいません」


 あれからドルギさんたちは急いで防衛隊の詰所へ行き、応援を頼んで俺たちが行ってきた場所へ急行したらしい。

 すると例の建物には麻痺した三人と、地下室には動物たちが残されていたそうだ。俺たちが出る時に麻痺させた四人はいなかったという。教会には麻痺した者が担ぎ込まれたら冒険者ギルドか防衛隊に連絡するようには伝えてあるらしい。

 そしてギルドに吊るしていた三人は防衛隊が連れて行った。


「つーわけで、逃げた四人がお前らを逆恨みして襲う危険性はある。それだけは頭の隅に入れておけ。それから、すぐにじゃあないが一応報奨金も出るからな。額はまだわからんが、期待しておけ」

「報奨金……」


 なんという素敵な響きだ。お金は大事である。


「だから少なくとも三日ぐらいはこの町を離れるなよ? 一日一回はギルドには顔を出せ」

「はいっ!」


 どちらにせよ解体を頼んでいるのだ。顔を出さないなんて話はない。

 動物たち(魔物も含む)をどうするつもりなのかは聞かなかった。俺の手に負える問題ではないからだ。


「じゃあ解散だ」


 ドルギさんがそう言って手を振ったが、もう一件用事は残っている。


「すみません、このインコを従魔登録したいんですけど」

「……インコまで手懐けたのかよ。ハンパねえな~」


 ドルギさんは苦笑した。



 ピーちゃんの従魔登録はすぐに終わった。


「インコがどういう魔物か知ってるか?」


 ドルギさんに聞かれて、首を振った。


「見た目も綺麗だし、おとなしい。愛玩用に貴族が欲しがる魔物だ。それにインコは能力が高い。金持ちや貴族に目を付けられる可能性も考えておけよ?」


 ドルギさんはそう言ってニヤリとした。えー、と思った。

 でももううちの子だしな。


「デッカイノー、ニワトリスー、オトカー、イッッショー!」


 と、ピーちゃんは嬉しそうに羅羅の頭の上でステップを踏んだ。首輪は特にきつくはないみたいだ。


「我の名は羅羅だ、呼んでみよ」

「ルー?」


 さすがにルオルオって音は難しいと思う。


「羅羅だ」

「ルーオ?」

「……ふうむ……」


 羅羅は悩んでいるらしい。

 それにしても、太陽の位置を見るとまだ夕方とは言いがたい。今から防衛隊の詰所へ行ったら迷惑だろう。じゃあどこにいればいいだろうか。

 俺も冒険者になったのだから、普通なら一階の背の高いテーブルと椅子のあるところにいられるのだろうが、羅羅はでかくてスペースを取るから迷惑だろう。それにみんな羅羅のことは怖いだろうしな。

 どこへ行くにも中途半端な時間だったので、夕方までは倉庫の方にいさせてもらうことにした。

 解体をしているおじさんたちは忙しそうだ。


「うるさくしなきゃかまわねえよ」


 と言ってくれた。倉庫の隅でみんなにおやつをあげる。羅羅とニワトリスたちには肉、ピーちゃんには普通の人が食べられる草を渡した。クロちゃんが毒キノコを自分のアイテムボックスから出して食べていると、ピーちゃんは興味を示した。


「あれって、食べられる?」

「タブンー?」


 クロちゃんが食べていたのは猛毒のキノコだったので、大事をとって今は渡さないことにした。食べて死んじゃったら元も子もないしな。

 明日にでも町の外に出て、興味がありそうなものを食べてもらうことにしたい。

 ちなみに俺は比較的軽い毒のあるキノコを茹でたものをこっそり食べていた。一見、見た目は毒キノコに見えないキノコである。俺は状態異常無効化があるからいいけど、ホント山菜採りとかする人は気を付けてほしいと思ったのだった。

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