40.通訳がいて助かるニワトリスたちと依頼を無事終えた俺

 羅羅ルオルオが困ったような顔をした。ニワトリスたちも俺にぴっとりとくっついた。なんなんだいったい。


「……主よ。このインコ、帰る場所がなさそうであるぞ」

「えええ?」


 あの少ない言葉に言いたいことが全部詰まっていたらしい。羅羅という通訳がいなければとても理解できなかったと思う。

 補足としてインコはいくつかの単語を話した。

 それを羅羅が総合したところによると、インコは遠い町に住んでいたが、飼い主がある日いなくなってしまったらしい。飼い主の家族が言うには、飼い主は重い病気になってしまったからインコと暮らせなくなってしまったという。そしてインコを引き取るだけの場所もお金もないとはっきり言われたそうだ。

 元々インコは魔物なので自力で餌を取ることもできるからその町を出た。かなり長い距離を飛び続けて、この町の近くで休んでいたらあの連中に捕まったのだという。(詳しくはまた今度聞くことにした)


「えっ? インコって魔物なの?」


 魔物同士は意志の疎通ができるというのは助かるのだが、インコを魔物と聞いて俺は驚いた。


「主よ、驚くところはそこなのか?」

「え? だってインコって魔物っぽくないじゃん!」


 羅羅は嘆息した。

 冒険者ギルドに戻る為、俺は羅羅に乗っている。前にクロちゃんをだっこして、後ろはシロちゃんだ。そして羅羅の頭の上にはでっかいインコがご機嫌で乗っている。

 急ぐ旅でもないので羅羅には歩いてもらっている。いくら首輪を付けているのが人々に見えるとはいっても、青虎が往来を走っていたら怖いだろう。

 はー、クロちゃんの羽毛、癒される……。


「……マモノー」

「オトカー」


 シロちゃんが後ろで呆れたように声を上げた。クロちゃんや、それじゃ俺が魔物みたいだよ。


「主よ、シロ殿が……魔物というのは人が勝手に言っているだけだと。魔法を使える人間以外の生き物を魔物と言っているのは間違いなかろう」


 また羅羅が通訳してくれた。


「あー……つまり、ピーちゃんは魔法が使えるのか」

「ピーチャン、マホー、ツカウー!」

「今使わなくていいからね。つか、使わないで?」


 それにしても困ったな。俺はインコ一羽ぐらい増えてもどうってことはないけど、ニワトリスたちはどうだろう?


「シロちゃん、クロちゃん、羅羅。ピーちゃんもこれから一緒にいることになっても、いいかな?」


 だめなら何がだめなのか聞いてみよう。どうしてもだめならインコとは別れるしかない。そう覚悟したのだけど。


「イイヨー」

「オトカー」

「我は構わぬ」


 だからクロちゃんや、それじゃ何言ってるのかわかんないよー。


「ニワトリス、カワイーイ! デッカイノ、カッコイー! オトカー、カワイー!」


 インコに褒められて、みななんとなく尾が揺れる。そっか、褒めてもらえたのが嬉しかったんだな。


「ああうん、ありがと……」


 タカぐらいの大きさはあるけど、もっふもふでかわいいインコにかわいいと言われるのは俺としては微妙だったけど。


「でもピーちゃんの餌が問題だよな。植物性のものしか食べないってなると、町の中では買わないと……」


 するとインコもといピーちゃんはコキャッと首を傾げた。クロちゃんもコキャッと。


「タベルー」

「オトカー」


 シロちゃんとクロちゃんが言うのだが、意味がわからない。クロちゃんや、それじゃ俺が食べられるみたいなんだけど。


「……なんでも食べられるであろう? 食べたくないものがあるだけで」


 羅羅が不思議そうに言った。


「えっ? そういうもん? じゃあ、毒のある草でもってこと?」

「タブンー?」


 ピーちゃんが今度は反対側にコキャッと首を傾げた。


「うーん……」


 後で軽い毒のあるものを、俺がピーちゃんに触れる状態で食べさせてみるか。それで食べられるならごはんは俺たちと一緒でいいもんな。どうせ毒草はそこらへんに生え放題で、ほとんど採取されないし。

 もちろんピーちゃんに見せて食べるなら、だけどさ。無理に毒草を食わせたいとは思っていない。俺だけじゃなくてニワトリスたちも喜んで食べるしな。

 あ、でも毒草とか毒キノコとかの依頼ってあるのかな? それなりに高値なら少しは売ってもいいけど、なんて思った。

 そんな会話をしながらギルドに戻ると、建物がすっきりしていたことから、例の青年たちは回収されていったのだなということがわかった。


「主よ、乗れ」

「え? でもギルドに迷惑じゃない?」

「我は主の従魔だ。離れることはまかりならん」

「あー、うん。ありがと」


 きっと俺がいらんことに巻き込まれないように、なんだろうな。そういえばピーちゃんも一応従魔登録しないとだし。でも、遠くから飛んできたって言ってたけどどこから来たんだろう。


「ピーちゃんて、そういえばどっちからこの近くまで来たの? あっち? むこう?」


 ギルドに入る前にあちらこちらへと指さして聞いてみた。ピーちゃんは南東の方へ顔を向け、「アッチー」と答えた。


「南東か……」


 ってことは王都の方角だな。さすがに王都からってことはないんだろうけど、方角的に森を縦断してきているんだと思う。そうしたらピーちゃんの能力もすごいのかもしれないな。後で落ち着いたら聞いてみよう。鑑定もできたらさせてもらおうっと。


「住んでたところに戻りたいって思うことある?」

「ンー? ナイヨー」


 ピーちゃんはコキャッと首を傾げた。別段考えるそぶりも見せない。


「そっか」


 まぁ飼い主の家族に追い出されたんだもんな。その時どうだったのかとか想像するぐらいしかできないけど、元飼い主には大事にされていたんだろう。だって今は楽しそうに羅羅の頭の上でなんか踊ってるし。

 そして羅羅の上に乗せてもらってルドの中に入ったけど、また受付の職員に「また来た!」みたいな顔をされてしまった。

 悪いけど慣れてね。

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