35.チート全開なニワトリスたちとペット探しをする

「……どんなかんじ?」


 犬と猫の匂いも嗅いでもらい、羅羅ルオルオとニワトリスたちには更に感知魔法も使ってもらう。

 俺だけじゃとても探せないだろうけど、ペット捜索は従魔がいる人に向いてるだろうなと思った。

 それにしても二件聞いて二件とも大きめのペットというのが気になった。猫も犬も普通より一回り以上大きなものを飼っていたという。しかも近所でいなくなったのは猫が十日前で犬が九日前だ。とても偶然とは思えなかった。


「まぁでも……全くの偶然ってこともあるんだけどさ……」


 なんにでも因果関係を求めていたら疲れてしまう。


「ふむ……」


 羅羅が頭を上げた。


「主よ……全くの偶然ではなさそうだぞ」

「どういうこと?」

「犬と猫は非常に近しい場所におる」


 ええ……とげんなりした。猫が迷子になって帰ってこないとかはよく聞くけど、犬もいなくなるってのはあまり考えられなかったから、やっぱりかという気持ちだ。

 慈善事業的な一貫でペット探しをしようと思ったんだけど、これってなにかに巻きまれる系?


「それってさ……もしかして誘拐ってこと?」

「何者かに連れ去られた可能性は高いな」

「うーん……」


 歩くのにちょっと邪魔だなと思うぐらいくっついているクロちゃんをだっこする。


「オトカー」


 どうやら甘えているらしい。だから、尾がびったんびったん暴れてて危ないってば。


「その辺ってさ、他にも動物がいるかどうかわかる?」

「……いるな。動物の他に魔物も一か所に集まっておる」

「マジかー……」


 どーすっかな。

 ペット誘拐事件として防衛隊に報告した方がいいんだろうか。でも人が誘拐されたわけじゃないから報告されても困るかもしれない。冒険者ギルドに伝えたとしても、そういった依頼がなければ動けないだろう。

 となると、実際にペット探しをしている俺たちが動くしかないのか。

 どちらにせよ見つけないことには依頼は完遂できないしな。

 ラノベなんかだと実力も何もないのに主人公がトラブルに自ら首を突っ込んで、逆に捕まってしまうなんて話も多いが……。

 横で歩いている羅羅と、その上に乗っているシロちゃん、そして俺がだっこしているクロちゃんを見る。俺にできるのは鑑定と浄化、そして状態異常無効化ぐらいだけど、うちの従魔たちはすんごく強いし。

 たぶん、大丈夫だよな?


「……探しに行くか。羅羅、俺には感知魔法は使えないからわからないんだけど、動物たちって何かの建物みたいなところにいるのかな? 周りに人の気配とかある?」

「主よ、町の中は人だらけだぞ」

「そういえばそうだったね。じゃあ、探している犬と猫がいるところの近くまで連れて行ってもらっていい?」

「あいわかった。主よ、乗るがいい」

「ありがと!」


 道行く人には驚かせてしまって悪いなと思ったけど、俺はクロちゃんと共に羅羅に乗り、そのまま町の南東へと向かった。(シロちゃんは羅羅に乗ったままだ)


「この辺であれば近いといえば近いな」

「……わかりやすいなぁ……」


 なんというか、建物も薄汚れているし、人気ひとけがない。壊れているような建物からみすぼらしい子どもが出てきて、「ひぃっ!?」と叫び、逃げて行った。

 なんか悪いことをしたなと思った。

 町の中でもスラムと呼ばれるような一角だろうか。魔法とかもある世界なのに、貧しいところは本当に貧しいし、こうやって町に住んでいても生活が苦しい人も一定数はいる。

 みんながみんな魔法を沢山持っているわけじゃないから余計なんだろうな。


「主よ、あの建物から匂いがするぞ」

「中に人がいるかどうかはわかる?」


 お互い小声で会話する。


「三人ぐらいか。それにしてもこの視線もうっとうしいのぅ……」

「え? やっぱ見られてる?」

「見られておるな」


 シロちゃんとクロちゃんがぎゅうぎゅうくっついてきているからそういうことなんだろうな。俺としてはもふもふでふわっふわのかわいいのがくっついてきてくれて幸せなんだけどさ。


「……隠密行動とか無理だよねぇ」


 これだけ目立つんじゃなぁ。

 ってことは、一気に制圧してみんな解放するしかないか。でも動物はともかく魔物はここで放すわけにはいかないよな。


「羅羅、羅羅より強そうな魔物って、あの建物の中にいる?」

「おるわけがなかろう」

「じゃあ言うことを聞かせることってできるかな」

「むろん」

「それじゃ、助け出しますか。建物の扉が開いたらシロちゃんとクロちゃんは中に向かって威嚇してね。で、中にいる人はつついて無力化して」

「ワカッター」

「オトカー」


 クロちゃんや、頼むから俺のことはつつかないでね。


「……建物を出る際は外に向かって威嚇した方がよさそうだ」


 羅羅がぼそっと言う。確かに建物の外にも仲間はいそうだしなぁ。


「了解。ちゃっちゃと終わらせてごはんにしよう!」


 そろそろ腹が減ってきた。町の外にでも出てみんなとごはんが食べたい。



 神経を研ぎ澄ませる。確かに姿は見えないけど、いろんな建物の影に人がいて、こちらを窺っているみたいだった。羅羅の言う通り、建物を出る時とか背後にも気を配らないとだめだな。

 俺には感知魔法はないはずなんだけど、最近感覚がかなり鋭くなっている気がする。

 羅羅が頭でドンドンッと建物の扉を叩いた。


「誰だ!?」


 しばらくも待たないうちに、中からいらだったような声がした。羅羅が更に強く扉を頭で叩き、鍵がかかっているだろうそれをバリバリッと壊してしまった。


「なっ!?」


 クァアアアアーーーーーッッ!!

 シロちゃんとクロちゃんが一斉に中に向かって威嚇する。扉の近くにいた男はその威嚇で固まってしまった。それをシロちゃんがつついて一瞬で無力化した。


「行くぞ!」


 羅羅に乗ったまま建物内に入る。次の扉を壊せば二人の男が固まっていた。それをまたニワトリスたちがつつく。

 部屋はそこだけだった。動物の姿は見えない。


「? もしかして、隠蔽魔法がかかってる?」

「主よ、下だ」

「わかった」


 羅羅から下り、床に手で触れると扉のような物が見えるようになった。床に隠蔽魔法がかかっていたようだ。そこを無理矢理こじ開け、また羅羅に飛び乗って俺たちは地下に駆け降りたのだった。



ーーーーー

隠蔽魔法も状態異常の一種なので、その場所にオトカが触れれば解除されます。

チートなのは誰だよ

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