33.ニワトリスたちと初依頼を受けようとしてみる
まだ俺たちは冒険者ギルドの中にいる。
「本日夕方までにこなせそうな依頼、か……Fランクだったね」
ルマンドさんは考えるような顔をした。最初は誰でもFランクからなのだそうだ。
「Fランクだと、ペット探しや町中の清掃などの雑用、または害獣とされる比較的小さめの魔物の討伐や薬草の納品などが主な仕事にはなるよ」
やっぱFランクだとそれぐらいだよな。
小さめの魔物というと、森の木の上で寝ていた時襲ってきた魔物とかだろうか。でも森まで行くとなると、普通は朝早くから出ていかないといけないような気がする。俺は
そういえばうちの子たち、感知魔法が使えるんだよな。だったらペット探しなんてどうだろう。
勝手に触られないぐらいの怖さってのはわかっててほしいけど、恐れられてばかりってのもやりづらいしな。
というわけで羅羅に確認してみた。
「羅羅、これこれこういう生き物を探してくれって言われたら探すことはできる?」
「……主は誰に物を聞いているのか。探せぬはずがなかろう」
羅羅がふーっと息を吐く。ルマンドさん以外の人たちがびくっとして、俺は苦笑した。
「とのことなので、ペット探しを受けたいです」
羅羅は俺に偉そうな口をきいたせいなのかシロちゃんとクロちゃんにつつかれていた。そんなにつついたら麻痺しちゃうでしょーが、まったくもう。
「ペット探しだと、あまり稼げないけどいいのかな?」
「はい、かまいません」
ペットがいなくなるってとってもつらいことだと俺は思う。元の世界では小さい頃に猫を飼っていたが、ある時いなくなってしまった。猫は死期を悟ると飼い主の前から姿を消すなんて話を聞いたことがあったが、勝手にいなくならないで最後までお世話させてほしかったと思ったのだ。
偽善と言われても、うちの魔物たちの感知魔法で探せたらいいのではないだろうか。
「じゃあ、現在出ている依頼はこちらの四件だね」
そう言ってルマンドさんは探す動物とその報酬について教えてくれた。俺も数字ぐらいは読めるけど、こうして読み上げてもらった方が安心だ。
報酬が低いのは子どもが依頼を出しているものだという。二件あり、それぞれ一週間程前に依頼が出されたが受けた者はいないそうだ。
まぁ、報酬が銅貨2枚じゃなあとは思う。でもきっと子どもからしたら精いっぱいのお金なんだろうし、見つかったらきっと嬉しいだろう。
「こちらの二件を優先的に受けたいです」
「どちらも町の西側の家から出されている。直接そちらのお宅を訪ねて詳細を聞いてくれ。私はさすがにギルドを空けるわけにはいかないから……ツコソ君」
「はっ、はいぃっ!?」
しゃちほこばって返事をしたのは、ギルドの職員ではなさそうだった。
どうやら冒険者らしい。皮鎧を身に着けている少年である。
「こちらのオトカ君を町の西側まで案内しなさい。依頼をきちんと受けられるまでサポートするように」
「お、おおお俺がですか!?」
「きちんとできたら依頼受付停止期間を三日縮めてあげよう」
「や、やりますやります! やらせてくださいお願いします!」
ツコソと呼ばれた冒険者は床に頭をこすりつけんばかりの勢いだった。俺はうろんな視線をルマンドさんに向けた。依頼受付停止期間があるってことは、三回依頼を失敗したってことだよな? 新人冒険者のサポートをしたりすることで救済があるみたいだ。
「えーと、ツコソさん?」
「呼び捨てでかまいません!」
「いえ、僕より年上ですよね? 僕はオトカって言います。よろしくお願いします」
「よ、よよよよろしくぅ!」
なんか暑苦しそうな人だなと思ったけど、この町は不案内だ。案内人がいる方が助かるのでお願いすることにした。
静かだなーと思ったら羅羅が麻痺していたので触れてそれを解除し、俺たちは冒険者ギルドを出たのだった。
「ふぅ……死ぬかと思うたぞ……」
羅羅ははーっと息を吐いた。その背を撫でる。
「羅羅、シロちゃん、クロちゃん、お待たせー。って、ええ?」
俺はクロちゃんとシロちゃんにくっつかれたと思うと、ぐいぐいと羅羅の方へ押しやられた。乗れってこと? まぁその方が従魔だってのはわかりやすいかな?
「わかったわかった乗るよー。ツコソさんはすみませんが、羅羅の横を歩いて案内してもらっていいですか?」
「は、ははははい……」
かわいそうに、羅羅を見てびびっている。まぁ普通はこういう反応なんだろうな。だからこの人を案内に付けてくれたんだろう。普通の家にこの姿でただ訪ねて行ったら町の防衛隊を呼ばれかねない。
俺が羅羅の上に乗ると、クロちゃんが俺の前、シロちゃんが俺の後ろに乗った。もうこれが定位置のようである。
もふもふに挟まれるの、サイコーだ。クロちゃんが嬉しそうに「オトカー」って言ってる。かわいい。
「僕に危害を加えようとしなければ何もしませんので、よろしくお願いします」
「はははははい……」
ぎこちなくツコソさんが歩き始めた。この人大丈夫かなとちょっと心配になった。
「ツコソとやら、決して道を間違えるでないぞ」
「ははははいぃっっ!」
「羅羅、脅さないよー」
「脅してなぞおらぬわ」
そんな会話をし、町を歩く人たちにぎょっとされながら、俺たちはどうにか町の西側へ移動したのだった。
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