32.まだ待機なニワトリスたちと冒険者ギルドでいろいろ聞く俺
「依頼を受ける前にいくつか確認をさせろ」
ギルド長であるドルギさんがずずいっと近づいてきた。でもクロちゃんガードがあるせいか必要以上に近づけないらしく圧は少ない。もふっとしながら僕の前にいるクロちゃんガードは重要だ。
「はい、僕に答えられることでしたら」
というわけでまたギルドの二階に上がって、今度はお茶をいただきながら(従魔たちにも水をもらった)青虎とニワトリスを従魔にした経緯を話させられた。副ギルド長のルマンドさんがそれを全部書いていく。やっぱアイテムボックスは魅力的だもんな。気持ちはわかる。
「……そうか。やっぱニワトリスを飼いならすってのは無理があるんだな」
ドルギさんはため息をついた。
「もしヒナから育てることができたとしても、愛情表現としてのつつきは回避できないと……。麻痺を解除できる者が常にいないと難しいですね」
ルマンドさんも頷く。
「少年はニワトリスの加護とやらで状態異常が無効化されるのか。とんでもない特殊体質だな」
冒険者ギルドには一応守秘義務があるという話なので、俺の体質については話した。一応生まれつきではなく、状態異常無効化はニワトリスの加護ということにした。(本当は生まれつきだ)状態異常無効化も確かにとんでもないことなんだけど、俺にアイテムボックスを使えるということの方が危険な気がしたのだ。
それから、この世界には容量に制限のあるマジックバッグのようなものはあるらしい。それらはダンジョンでしか手に入らないレアな品なのだそうだ。ダンジョンとか聞いて思わずわくわくしてしまった。俺もそのうち行ってみたい。
「ニワトリスの加護はニワトリスの親からか……それも難易度が高いな」
「ですね」
「一応冒険者ギルド全体で知識の共有は図るが、それで無謀な奴らが出てこないかどうかが心配だな」
「……そんなおバカさんは痛い目を見るといいと思いますよ。ただ、教会もニワトリスの確保に動くかもしれませんね。オトカ君には強力な護衛がいるから問題ないとは思いますが……くれぐれも気を付けてください」
ルマンドさんにそう言われ、礼を言った。
で、気になったことを聞いてみた。
「僕はニワトリスたちにつつかれても麻痺することはないんですけど、もし麻痺を解除する魔法を持っている人が麻痺した場合、その人が自力で解除することは可能なのでしょうか?」
「……それは、どうなんだ?」
ドルギさんがルマンドさんを見る。
「確か……麻痺を解除できるということで冒険者パーティーに参加した新人が麻痺したことがありましたね。確か自力では解除できなくて教会に担ぎ込まれたかと」
「えー……」
やっぱりそうらしい。魔法だと心の中で唱えてもだめなのか。状態異常恐るべし、と震えた。
「そ、その方って、そのまま冒険者パーティーには……」
「さすがにクビになりました。ですが教会では積極的に状態異常を解除できる魔法を使える者を採用していますから、教会からスカウトがきたようです。その後は……特に冒険者として活動はしていないはずです」
「へえ……」
まぁ働く先があるのはいいことだよな?
俺もそういえば、能力を見てもらった教会で声をかけられた。なんか目が怖かったことは覚えている。
「どうして教会はそんな積極的に状態異常を解除できる人材を集めているんですか?」
「えっ? そりゃあなぁ……状態異常ってのは麻痺だけじゃねえからな。回復魔法で治らない病気も状態異常を解除する魔法で治ったりすることもあるんだ。それに確か変装魔法なんかも解除しちまうはずだ。能力的に地味だなんだと言われているが、ボウズが持ってる能力は、わかる奴らからしたら垂涎の的だろうぜ?」
ドルギさんに言われて身震いした。
「ぜ、絶対にバラさないでくださいね……?」
「俺もトラブルには巻き込まれたくねえからな。それにブルータイガーとニワトリスが怖いから言わねえよ」
ほっとした。
うちの従魔さまさまである。俺の横に腰かけてもふっとしているクロちゃんをぎゅっとした。
「オトカー」
嬉しそうに俺の名を呼ぶクロちゃんが超かわいい。やっぱ語尾にハートとか音符とか付いてそうだ。
「……そうして見るとかわいいですが……ニワトリスですものね」
ルマンドさんがぼそっと呟く。俺はそれに深く頷いた。
そう、ニワトリスはとてもかわいいけどその嘴は凶悪なのである。
しっかし状態異常魔法が変装魔法まで解除できるなんて知らなかった。ってことは、もしかしてスパイとか後ろめたい人を検挙するのにも役立つんじゃないか? それは教会が積極的に雇用するというのもわかろうというものだ。
でもそれって、この国の国政に携わる人たちも知ってんのかな?
ま、そんなこと俺が考えることじゃないか。
そうしてやっと俺は階段を下り、依頼の受け方を教えてもらうことになった。
さすがに受付の人たちはうちの従魔を怖がっているので、引き続きルマンドさんに説明を頼むことになってしまった。そのうち慣れてほしいものである。
「すみません。よろしくお願いします」
「こちらこそすみません。従魔というともっと小さい魔物を連れている人はたまにいるのですが、こんなに大きな従魔を連れている人は見たことがないもので。そのうち慣れると思いますので大目に見てください」
「あ、それは大丈夫です」
こちらが申し訳ないのだ。でも
で、依頼の受け方である。
これは俺が元の世界で読んでたラノベの描写と似通っていた。
まず受付横のボードを見て、受けたい依頼が書かれたところに付けられている木の札を取って受付へ。(依頼は直接ボードにチョークのようなもので書かれていることもある為)依頼の説明を聞き、冒険者が受けると言えば契約完了。期限までに依頼が達成できなくても違約金などは発生しないが、三回未達成があると最低でも一週間は依頼が受けられなくなるから注意してほしいと言われた。こわっ。
話しているうちにルマンドさんの口調がフランクになってきた。ちょっと嬉しい。
「依頼にも程度というものがあるけど、簡単な依頼を三回未達成だと冒険者としてやっていけないからね。その場合は一か月ぐらい受けられなくなるから」
「じゃあ、逆に難易度が高いのを三回未達成したらどうなるんですか?」
「それはそれで自分たちの能力を把握していないってことだから、内容によって依頼が受けられない期間が決められるかな」
「そうなんですね」
厳しいといえば厳しいが、依頼を出している方からしたら依頼を達成できない冒険者にやってほしくはないよな。
「あの、薬草とかの依頼ってありますか? ここに来るまでに少し摘んできたんですけど」
「見せてもらえるかな」
ルマンドさんに言われて、クロちゃんを手招きした。
「止血の薬草を……」
と言ってクロちゃんの前で出す。まるでクロちゃんが出したように。
「わわっ、と」
けっこう摘んだのをバラバラと出してしまったから落とさないようにするのがたいへんだった。
「ああ、この薬草か。血止めには早いんだが付けた時の痛みが強いからな。これだと葉が十枚で銅貨三枚といったところだ」
「銅貨三枚だと何か買えますかね?」
「ここの食堂ならパンが一切れと野菜スープが付くセットが食べられるよ」
基準がよくわからないけど、食べられるって重要だ。今日の昼飯は自分たちで調達しないといけないし。
「じゃあ二十枚買い取りをお願いします」
「はい、銅貨六枚どうぞ」
「ありがとうございます」
葉っぱの状態を確認してもらい、買い取ってもらった。
「薬草は常時募集しているから、持ってきてくれれば普通に買い取るからよろしく」
「わかりました。ただ僕、文字が読めないので読んでもらうことって可能ですか?」
「職員が空いていれば頼んでくれてもかまわないよ」
受付の人たちがええ? って言いたそうな顔をしていたが無視だ、無視。
夕方にはここに一度戻ってくるとして、これから受けられる依頼ってあるかな?
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