24.前後にいるニワトリスと冒険者との遭遇

一話抜けてました。申し訳ありません(汗

ーーーーー



 羅羅ルオルオの背に揺られてしばらく進んでいくと、羅羅がピクリと反応した。

 背に乗ってるから何か感じ取ったのがわかる。


「羅羅?」

「……走ってきた。森の中だ」

「えっ?」


 低い声で言われ、クロちゃんをぎゅっと抱きしめた。


「キター」


 後ろでシロちゃんが教えてくれる。来たーではなくイントネーションが北だったから、俺たちが向かっている方向から人が走ってくるみたいだ。それも森の中ってことは、斥候とかかな?

 羅羅の歩みは止まらない。気づいていないように装っているのだろう。ホント、頭いいよな。


「……戻っていく」

「北に?」

「そうだ」


 ってことは北から何人かが来るんだろうな。行商人の護衛とかだろうか。できれば道を教えてもらえるといいななんて思った。

 道なりにしばらく進むと、前から何人かの集団が歩いてくるのが見えた。その先頭にいた二人がこちらへ向かって軽く走ってくる。

 これはどう反応したらいいんだろうか?


「止まれー! 止まってくれ!」


 走ってくる人が大きな声を発した。


「羅羅、止まって」

「承知した」


 羅羅は歩みを止めた。それに走ってきた人たちはほっとしたような表情を見せた。やっぱり羅羅は怖いかもな。

 走ってきた二人は簡易な皮鎧のようなものを身に付けていたから、冒険者なのではないかと思う。一人は剣を下げていて、もう一人は弓を持っていた。二人は僕たちから3,40mぐらい離れたところで立ち止まった。二人とも男性である。


「少年、そのブルータイガーとニワトリスは君の従魔か!?」

「はい! そのつもりです!」


 まだ従魔登録はしていないのでそう答えた。青虎の羅羅はブルータイガーという名称らしい。こっちにもいるのかな?


「少年はどこに向かってるんだー?」

「冒険者になりたいので、冒険者ギルドがある町を探してますー!」


 離れた場所からなのでお互いに大声を出して話している。向こうが怖がっているのでしかたないが、シロちゃんが「ウルサーイ」とか後ろで言ってる。


「ごめん、シロちゃん。ちょっと耐えて」

「……ワカッター」


 うちのシロちゃんはとてもいい子だ。親バカじゃないかって? ほっとけ。


「冒険者ギルドがある町なら、俺たちが来た方向にあるぞー!」

「ありがとうございまーす!」


 やっぱり彼らが来た方向に町があるらしい。


「俺たちは南に行きたいんだが、行ってもいいかー!?」

「はーい! 大丈夫ですー! 彼らは危害を加えたりしませーん!」

「じゃあそっちへ行くぞー!」

「はーい!」


 こんなやり取りを経て、彼らがおっかなびっくり進んでくるのを待つことにした。羅羅に頼んで街道の脇に避けてもらう。確かにこんなでかい魔物に遭遇したら怖いよなぁ。ニワトリスが二羽と俺が悠々乗ってこれるぐらいでかいんだし。


「すみません、ちょっと教えてもらっていいですか?」

「ああ、いいぞ。でもこちらが進んでからでいいか?」

「はい、かまいません」


 集団は僕たちの前をおそるおそる通り過ぎていく。羅羅はそれを見ているのも飽きたのかその場にまふっと座った。気づいた人がビクッとする。


「大丈夫ですので~」


 と声をかけて行ってもらった。

 弓を持った青年が残り、近づいてきた。5mぐらい手前で止まる。それぐらいだと羅羅なら飛び掛かれそうな距離だけど、後ろに跳び下がれれば大丈夫かな。そんな近さだった。


「そちらの歩みを止めてしまってすまないな」

「いえ、僕たちも攻撃されたりしなければそれでいいので……」


 攻撃されたら羅羅とニワトリスたちが反撃して、多分今の集団ぐらいなら倒してしまうだろう。今の人たちの中にものすごく強い人がいたなら別だけど。


「で、教えてほしいことってなんだ?」

「冒険者ギルドがある町はこの先をまっすぐ行けば着きますか? 町に入るのにお金とかいります? あと、従魔って町の中に入れますか?」

「ああ、この先にまっすぐ進むと道が二股に分かれてる。右に進むと北の山だが、左に折れていくと町に着く。だいたいここから歩いて半日ってとこだな」

「ここから半日もかかるんですね」


 けっこうかかるなぁ。

 それから町に入る方法とか、従魔がどうかとかいろいろ教えてもらった。すんごく親切にしてもらえてありがたかったので、羅羅とニワトリスたちに許可を取り、獲物(魔物)の肉を少し分けた。解体してもらったやつである。


「えっ? こんなにもらっていいのか?」


 青年は戸惑いながらも喜んで肉をもらっていった。


「ありがとうな、少年。俺はキュウって言うんだ。少年は?」

「僕はオトカっていいます。いろいろ教えていただきありがとうございました!」


「おう、町に着いたらアイアンに会っていろいろ聞いたって言うんだぞ。たぶん悪いようにはされないから。また会えたらいいなー」

「はい、なにからなにまでありがとうございます!」


 青年の顔はずっとひきつっていたけど、肉をあげてからは笑顔になった。よかったよかった。

 ここから半日ということで、羅羅が走っていっても大丈夫かどうか聞いたら、速足程度ならいいのではないかという話だった。

 この先の町の名前はキタキタ町というらしい。町からの道はこの道の他に、西に向かう道があるそうだ。西の方が森からは遠くなるので遠回りでも西に向かう人が多いらしく、この道はあまり使う人がいないそうだ。それでも道としてなければ困るので冒険者たちに街道整備の依頼などはちょこちょこあると聞いた。今はまだ依頼がないのでおそらく人にはあまり会わないだろうという話だった。それならそれでありがたい。

 キュウさんの姿が見えなくなるまで手を振って別れ、とりあえずそこでごはんにすることにした。

 なかなか前に進めないが、キュウさんたちに会えてよかったと思う。ちなみにキュウさんが言っていた「アイアン」というのは彼ら冒険者グループの名前らしい。「アイアン」て鉄か。俺も冒険者登録をしたらなんかグループ名を考えるかな。

 うーん、モフモッフーズとかしか浮かばないぞ。

 はー、それにしても緊張したー。

 俺はクロちゃんの羽に顔を埋めて、クロちゃんを吸わせてもらったのだった。

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