23.狩りをしたがるニワトリスたちとなかなか進めない俺

 その夜は道を外れ、少し森の中に入ったところで休んだ。

 道は森から少し離れたところにあるが、森に沿っているようだった。

 俺とニワトリスたち、羅羅ルオルオも一緒に上れるような大きな木をシロちゃんたちに見つけてもらいみんなで登る。俺はいつも通り木をよじ登ろうとしたけど、羅羅の背に乗せてもらってしまった。しっかり掴まらないと危ないけど、楽は楽だ。そうして木の上でみんなで寝た。

 羅羅に浄化魔法をかけてキレイになった毛に埋もれるのは至福だった。しかもそんな俺にシロちゃんとクロちゃんもぴっとりくっついている。天国ってこんなところにあったのかーと思った。

 ホント、もふもふってたまらんよなー。

 おかげで快適に寝られた。

 朝は木の下に降りて二羽から卵をいただいた。それを羅羅が羨ましそうに見ていたが、さすがにこれをあげるわけにはいかない。


「これだけは無理だから諦めて」


 そう言って諭したら、朝からシロちゃんと一緒にツッタカターと走って狩りに出かけてしまった。全く、どこまで行く気なんだよー。


「クロちゃんは付いていかなくていいの?」


 クロちゃんも狩りをしたいんじゃないかなと思って聞いたんだけど、俺の方を向いて、


「オトカー」


 と言ってくれた。ああもうなんてかわいいんだクロちゃんはああああ。

 ついにまにましてしまう。


「卵いただくねー」


 羅羅が出かける前に竈は作ってもらったから、感謝しつつごはんを作る。


「クロちゃん、こういう実ってこの辺りにある?」


 油が採れるユーの実を出してクロちゃんに聞いてみた。


「ンー」


 クロちゃんは辺りをキョロキョロと見回してからトトトッと近くの木まで駆けて行き、ぴょんっと跳んだ。そのまま風魔法を使ったのかバッサバッサと飛んで木の上まで行く。


「うわあ……」


 思わずあんぐりと口を開けてしまった。クロちゃんは上の方をつついて何かを落とした。それらは下に落ちてこなかったから、きっとアイテムボックスに収納したのだろう。つくづくニワトリスってのはすごいなと思った。

 クロちゃんなら大丈夫だよなと思い、目玉焼きを二個作る。一個は皿に乗せてアイテムボックスにしまった。毒キノコとか肉を出して焼き始める。そうしてからハッとした。これから人に会うことがあった時、食べ物を見られるようなシチュエーションがあると困るなって。毒キノコは一見そうは見えないものから、見たらすぐにわかるものもある。見たらすぐにわかるものはここで食べてしまうか、調理しておこう。

 冒険者になって宿屋に泊まることができたら隠れて食べればいい。まだ気が早いけど、考えるだけでわくわくしてきた。


「オトカー」


 クロちゃんが戻ってきて、俺の側にユーの実をバラバラと落とした。


「クロちゃん、ありがとー。……ここらへんだと、ユーの実が採れる木ってこんなに育つんだな……」


 うちの近くの木はここまででかくはなかった。だから採りやすかったというのはある。


「油とかどうしてんだろうなぁ」


 アブラナとか、ユーの実に代わる植物があるんだろうか。まぁ元の世界の感覚で植物を語ったらだめだよな。北に向かってきたのに木がどんどんでかくなるとか説明がつかないし。もうこういうものだと思うことにしよう。(ようは考えることを放棄したともいう)

 いいかげん戻ってきてくれないかなーと思っていたら、やっとシロちゃんと羅羅が戻ってきた。


「いっぱい狩れた?」

「主よ、大猟だ」

「あ、ここで出さなくていいからね。そろそろ移動したいから、いいかな?」


 シロちゃんも得意そうな顔をしていたけど、ここで出されたら面倒なのでお断りした。


「エー」

「む……そうであるな。シロ殿、主の言う通りにしよう」

「ヤダー」


 シロちゃんはせっかく狩ってきたのに! とばかりに俺をつつき始めた。


「シロ殿……」

「いたいっ、いたいってばシロちゃん! とりあえず人里に出ないとうまく解体できないからぁっ!」


 理由を言えばシロちゃんはつつくのを止め、フンッというようにそっぽを向いた。


「いっぱい狩ってきたんだよね? あとで見せて?」

「……カッター」

「うんうん、えらいね。でも今は移動しよう」


 そっぽを向いたシロちゃんだったけど、俺の方をまた向いて軽くつついた。くすぐったいかな程度である。ああもうこのツンデレ女子かわいすぎるんですけど!

 とはいえ俺以外をつつくと麻痺してしまう可能性があるから、羅羅とか人に会ってもつつかないようにはお願いした。

 太陽があまり高く上がらないうちに森を出て土の道へ移動する。人の姿も何も見えない。


「うーん、こっからどう行くかなー」


 俺ってば、ホント詰めが甘すぎる。南に行ってもいいんだけど、せっかく離れた村に近づきそうで嫌なんだよな。そうしたらやっぱまた北に向かうべきか。


「よし、道なりに北へ向かおう」

「では主よ、乗るがいい」

「ええっ?」


 さすがにこの道を羅羅に駆けてもらうのは勘弁してもらいたい。丸見えだから矢を射かけられてしまうかもしれないし。


「主が我に乗っておれば、攻撃してこようと思う者もおるまい」

「あ、そういうこと……」


 というわけで羅羅の背に乗せてもらうことにした。羅羅の側にニワトリスたちがいるだけだと攻撃されてしまうことも考え、俺の前にクロちゃんがもふっと乗って、俺の後ろにシロちゃんがまふっと乗る。俺はクロちゃんをだっこするような形で、羅羅の背に揺られて道を進むことになった。

 羅羅は俺の歩みよりちょっと早いぐらいの速度で歩き始める。


「重くない?」


 って聞いたけど、俺とニワトリスたちはとても軽いそうだ。ニワトリスもそれなりにでかいけど、ほとんど羽だもんな。重さでいったら俺の方が重いと思う。

 ……それにしてもなんかこれって、ドナドナっぽくない?



ーーーーー

もふもふの背に乗り、もふもふをだっこして後ろにももふもふ。

想像しただけでオトカが羨ましい!(ぉぃ


1/8 24話、話がずれていたのを上げてしまいました。申し訳ありません。

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