でっかくてかわいい凶悪なもふもふたちと町に着いた

25.ニワトリスたちとの移動と町への到着

こちらは25話でした。間違えて上げてしまい申し訳ありませんでした。

ーーーーー


 羅羅ルオルオとニワトリスたちにはキュウさんと話している間待っていてもらったので、まずはごはんを食べることにした。

 俺は朝作ったごはんをアイテムボックスから取り出すだけでいいし、他のメンバーには解体してもらった肉を出せばいいだろう。

 ついでに道から離れたところに生えている薬草も摘んでいくことにする。これ、止血にいいし消毒もしてくれるんだよな。消毒もするせいか傷口に付けるとめっちゃ痛いんだけど、血はすぐ止まるし予後もいい。ただし止血の薬草は他にもあるからあえてこれを使う人はあまりいない。だからこんな見えるところにいっぱい生えているのかもしれなかった。ほくほくしていたら、


「キルー」


 と例によってシロちゃんが身体を揺らしながら言う。

 ちゃんと肉出しただろー。


「町に着いて、俺が冒険者登録してからって言ったよね? シロちゃんは待てない子?」


 首を傾げて聞いたらシロちゃんにつんつんつっつかれた。


「だからー、痛いってばー」


 それほど痛くはなかったけどつつくのは止めさせないとなぁ。って今更止めないか。


「シロちゃん、俺もいいかげん怒るよ?」


 そう強く言ったらシロちゃんがショックを受けたような顔をした。しゅーんってかんじでなんかかわいそうな雰囲気を出している。

 ああもうかわいいなぁ。でも躾は大事だ。ここは心を鬼にして……。


「……わかってくれたならいいんだよ?」

「……マチー」

「うん」

「キルー」

「うん、町に着いて、俺がまず冒険者になったらね!」


 これだけは譲れないのでしっかり言い含めた。シロちゃんは不満そうだったけど、最終的には頷くように首を前に動かした。


「……主はシロ殿クロ殿には甘いのであるな」

「うっ……」


 羅羅にツッコまれてしまった。申し開きのしようもない。だってめちゃくちゃかわいいし。


「そ、それより羅羅、情報のつきあわせをしよう!」


 羅羅はキュウさんが話してくれている間黙っていたから、ちゃんと聞いていてくれたはずである。

 とりあえずこの先の道を西に曲がっていくとキタキタ町に着く。その門は北門で、普段利用者は少ない。門が閉まるのは日没前ということだ。それ以上の情報はまた後で確認することにして、まずは町に入りたい。いいかげん野宿を止めたい。


「大人の足で半日って言ってたよね。今から向かって間に合うかな?」

「間に合わせよう」

「まあ、人に会わなければ行けるかー……」


 というわけでまた羅羅の上に乗った。今回は先ほどのようにクロちゃんが前、シロちゃんが俺の後ろにいて俺の押さえ兼クッションになる。つってもクロちゃんの尾があるから密着できるってほどではないんだけど。


「シロちゃんとクロちゃんが吹っ飛んだらたいへんだから、気を付けてくれよー」

「任せよ!」

「う……わぁあああーーーーっっ!?」


 ……結果、爆走されました。

 なんでクロちゃんもシロちゃんも平然と乗ってられるんだよおおおおお?

 俺はクロちゃんをぎうぎう抱きしめてどうにか横に倒れたりしないようにバランスを取るのがやっとだった。


「主よ、町の近くまで着いたぞ」

「……はーっ、はーっ、はーっ、はーっ……あ、あり、がと……」


 半日の距離が一気に縮んだのは助かったけど、胃がひっくり返りそうだ。


「あっ……ク、クロちゃん、大丈夫?」


 俺、かなりぎゅうぎゅうクロちゃんのことを抱きしめていたけどクロちゃんは……。まだ強張っている腕の力をどうにか抜いたら、クロちゃんは羅羅の上で身体を揺らした。


「クロちゃん、苦しくなかった?」


 心配して聞いたのだけど、


「オトカー、ギュギューッ! オトカー!」


 なんか声がすごく嬉しそうだ。


「大丈夫だったんだね? よかった……」


 ほっとする。このまま進んでもよさそうだ。後ろにいるシロちゃんにも声をかける。


「シロちゃん、大丈夫だった?」

「ダイジョブー?」


 振り向けば、シロちゃんは何言ってんの? と言うようにコキャッと首を傾げた。なんともなかったみたいで、こちらも安心した。たいへんだったのは俺だけのようである。

 ……この移動方法は早いけどけっこうつらい。身体が強張ったりはするけど、乗り物酔いの症状みたいなのも出ないのだ。きっとこれも状態異常無効化と関係しているんだろうな。


「近くって……」


 顔を上げて辺りを見回してみたら、道の先に高い柵があるのが見えた。道を辿れば大きな門がある。その門の前には何人かいて、こっちを見て指さしている。日はまだそれほど低い位置にはない。


「ふー……羅羅、ゆっくりあの門に近づいていくことはできるかな?」

「造作もない」


 羅羅はそう言うと、先ほどとは違い門に向かって悠然と歩き始めた。

 門の前には門番と思しき人たちがいるのが見える。彼らも戸惑っているみたいだった。でも門を通るのに手続きが必要なのだろう。こちらを見て無理矢理町に入ろうとしている人を止めている。たいへんだよなぁ。

 彼らの表情が見えるところまで進むと、


「止まれ! 止まれ! 何者か!?」


 と門番に誰何された。ここの門番は皮鎧だけでなく一応兜っぽいものも被っている。

 羅羅が息を吸い込んだのに気づいて止めた。ここは俺が話した方がいい。


「ニシ村の方から来ました、オトカと言います! このタイガーとニワトリスは僕が飼っています! 冒険者になりたくて来ました。どうか町に入れてください!」


 羅羅の上から大きな声を上げて言えば、後ろにいるシロちゃんが、「ウルサーイ」と言った。「うん、ごめんね。もうちょっと待ってて」と小声で伝えた。シロちゃんが軽くだけど俺の背をつついた。だからつついちゃだめだってば。

 門番は俺の話を聞いて困ったような顔をした。門番は門の両脇に二人いて、一人が受付を担当しているみたいだった。


「ちょっと待ってくれ! 上に聞いてくる」

「はい! よろしくお願いします!」


 ここはもう待つしかない。


「羅羅、座ってくれる? 時間かかりそうだしさ」

「……人間の町というのは面倒なものよのぅ。いざとなれば我が飛び越えて……」

「だめ。それは絶対だめだからねっ!」


 そんなことをされたら冒険者になるどころではないではないか。町に入れたらいいなと思いながら、俺は元の村で稼いだ銅貨を数えるのだった。

 ……俺の小遣い程度で入れるかな?

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