21.ニワトリスと新たな仲間と西へ

 羅羅ルオルオに食事はしたかと聞けば適当に獲物を狩って食べたらしい。

 やっぱ羅羅も肉食なんだな。

 情報共有はしておかなければいけないので、羅羅が狩った魔物について話した。一部毛皮の方が重要で、肉には毒を含んでいるという魔物のことだ。ただ僕にはどの魔物がそれなのかわからないので、狩った魔物はその時食べる物以外脱毛しないように伝えた。


「わ、我はなんということを……」


 羅羅は落ち込んだように頭を両の前足で抱えた。爪は出ていないからもふもふしている。さ、触りたいかも……。


「僕も知らなかったから、これからは慎重にやっていけばいいよ。シロちゃんクロちゃん、羅羅にむちゃなことは言わないようにしてね」


 知らなかったんだからしょうがないとその毛並みを撫でる。うん、羅羅ももっふもふのふかふかだなー。


「ムチャー?」

「オトカー」

「あー、むちゃじゃわかんないかー……」


 コキャッて二羽が首を傾げている姿はとってもかわいいんだけどな。


「羅羅にいちいち命令しないでってことだよー。よろしくねー」

「エー」

「オトカー」


 シロちゃんは不満らしい。


「シロちゃん、お願い!」

「……ワカッター」


 シロちゃんが不満そうにツンとする。でもこうやって言うことを聞いてくれるんだから本当にかわいいと思う。


「ありがと! シロちゃん、クロちゃんは本当にかわいいなー」

「……主は苦労性であるな……」


 羅羅がぼそっと言う。言われるほど苦労らしい苦労もしてないけどな? だってニワトリスかわいいし。

 村ではさすがに聞けなかったけどここならいいだろうと、羅羅の事情を聞くことにした。

 羅羅は山海経に書いてあった通り、北海というところにいたらしい。そこで自分が食べられるだけの獲物を捕り、平和に暮らしていたという。


「仲のいい相手とかは……いなかったの?」

「物心ついてからは一人だ。特に寂しいと思ったこともなかった。だがな……ある日気が付いたら森の中にいた。いくら走っても海は見えず、海の匂いもしない。しかもこの辺りは寒い。我はどこに来てしまったのかと混乱してしもうてな……」

「ん? 北海っていうぐらいだから寒い地域なんじゃないの?」

「いや? 比較的過ごしやすい地域であったぞ」

「んん?」


 ってことは地域の名称が北海ってだけで、暖かい地域の可能性もあるのか。俺が読んだ山海経にも確か地図はついてなかったな。

 住んでいたところはともかく、羅羅はやはりどういうわけか異世界転移してきたみたいだった。

 もしかしたら元の世界でもそういうことがあったのかもしれないけど(神隠しとか)、迷惑な話だよな。


「オトカに会えてよかった。よろしく頼むぞ」


 羅羅が嬉しそうに言う。俺の知識が役に立ったならよかった。


「うん、羅羅もよろしくね」


 話しながら歩いているせいか、歩きづらい森の中もそれほど苦ではない。でもそろそろ今履いてる靴もくたびれてきたから、どこか人里に着いたら靴を買いたいかな。兄貴の靴はまだでかいし。


「そういえば、西の方角へ向かうのであったか」

「うん。西に一日って聞いた」

「……主の足ではもっとかかるのではないか?」

「たぶんね。でも急ぐ旅でもないしなぁ」


 一晩は先ほどいた村で過ごせたし、西に一日ぐらいならその間野宿をしてもいいと思った。って言うと大分俺も野生児と化してきた気がする。

 あ、でも浄化魔法があるからいつでも清潔だし、それが一番大きいかも。

 けれど羅羅は嘆息した。


「主よ、乗るがいい」


 そう言って大きな身体をその場に伏せた。


「えっ?」

「我に乗って向かう方が早い。さあ」

「うーん……」


 確かにもふもふの背に乗るというのはシチュ的にとてもおいしいのだが、振り落とされないかどうか心配である。


「乗せてもらえるのはありがたいと思うんだけど、振り落とされそうだし……」

「なに、主が我の毛にしっかりしがみついていれば問題ないだろう」

「そういうもん?」


 できれば紐かなんかで俺と羅羅を括った方がいいんじゃないかなと思うんだけど、そこまで長さがあるのは作ってないし、強度の問題もある。


「シロちゃんクロちゃん、人里のあるところまで羅羅が乗せてってくれるっていうんだけど、二人とも付いてこれる?」


 羅羅が速すぎたら二羽を置いていってしまうことになる。そう思って聞いたのだけど、シロちゃんにはつつかれてしまった。そして羅羅には呆れたような目で見られた。


「……主よ。シロ殿は我よりもはるかに速く動くことが可能ですぞ」

「えっ、そうなの?」


 シロちゃんを見たらまたつんつんとつつかれてしまった。


「いたいいたいっ! ごめーん!」

「主はずっとそこなシロ殿、クロ殿と暮らしているというのに能力を把握しておらなんだか」

「……そんなに早く移動する必要もなかったしさ……」


 俺は視線をそっと逸らした。うん、一緒に暮らしてたってけっこう俺の行動に付き合わせてたんだから、思いっきりニワトリスたちが動くのは狩りの時ぐらいだったんじゃないだろうか。そう思うとなんか悪いことをしたなと思う。


「シロ殿クロ殿の移動については問題あるまい。では主よ、参ろうぞ」

「えっ?」


 クロちゃんがずいずいっと近づいてきて、俺を羅羅にくっつけようとする。シロちゃんの方を窺うと、「ノレー」と言われてしまった。やっぱ俺の歩みに合わせるのは疲れるのかもしれない。


「あー、うん。わかったよ」


 俺が羅羅の上に乗って移動した方が確かに早いよな。


「じゃあ世話になるね」


 俺は観念して羅羅の背に乗った。ええと、振り落とされないようにするには密着して乗った方がいいんだよな、なんて考えている間に、羅羅は立ち上がってしまった。


「よし! では向かうとしよう」

「わわっ、ちょっ、ちょっと、わあああああーーーーーー!?」


 羅羅は俺が態勢を整える前にドドドドドーーーッッ! と走り出してもしまった。どうにかその羅羅の身に伏せて毛を思いっきり掴む。それでも羅羅がいろいろ飛び越えたりする度に身体が飛んで行きそうになって困った。

 このままでは振り落とされてしまう――と思った時、俺の背に何かがドスンッと乗った。


「ぐええっ!?」

「オトカー」


 どうも羅羅の身体の上で安定しない俺を見かねてか、クロちゃんが俺の上に乗ってくれたらしい。その乗り方はどうかと思うが、クロちゃんのおかげで安定はしたと思う。

 助かったなーと思いながら、俺は背にクロちゃんを乗せたままどうにか森を抜けたところまで連れて行ってもらったのだった。

 ……すんごく疲れた。



ーーーーー

どうにか書けたので上げますねー。明日以降は一日一話になるかと思われます。よろしくー

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