11.狩りをしたニワトリスと翌朝
太くてでかい木の途中の太い枝の側にあるうろに、身体を丸めて寝転がりうとうとしていた。
うろの前にはクロちゃんがいてくれるらしく、俺の足にそのもふっとした羽が触れている。優しくてかわいくて大好きなんだよなーなんて思っていたら、カリカリカリ……と何かをひっかくような音が聞こえてきた。
俺が登れるぐらいだから、他の生き物が登ってきてもおかしくはない。
緩慢に身体を起こした時、キイイイイイッッ! という高い鳴き声がした。クロちゃんがうろを塞ぐようにしているから見えないけど、きっとシロちゃんが何か倒してるんじゃないかな。
キーーーーッ! という鳴き声が遠ざかっていく。もしかして落ちたか?
それからもキイキイという鳴き声は少し続いたが、そのうち静かになった。(静かになったと言っても俺たちの周りは、という程度である。夜の森の中は意外とうるさい)
クロちゃんがうろの前から身体をどけた。どうやら終わったらしい。
「オトカー、キルー」
シロちゃんの声がしてその足元を見た。
「……わぁ……」
とっさに叫ばなかったのが不思議なぐらいだ。黒くて、それなりに大きな生き物みたいな物が3、4つ転がっている。暗いからそれがなんなのかまではよく見えなかったけど、切るってシロちゃんが言ってたから解体しろってことなんだろうな。
「しまってもらっていい? 明るくなったら解体するよ」
「ワカッター」
シロちゃんの嘴が汚れているみたいなので布で拭いてやり、羽を撫でた。
「シロちゃんもクロちゃんもありがとなー」
礼を言って、俺は今度こそ寝た。
「……オキロー、オトカー、オキロー」
なんか壊れたステレオみたいに「オキロー、オトカー」がくり返されている。うるさいなーと思って目を開けたらなんかよくわからないものが目の前に迫っていた。
え? って思う。
「オトカー、オキター?」
「あ、うん……」
それはシロちゃんのドアップだったらしい。一瞬俺は何を見ているのかと考えてしまった。
「オトカー、キルー」
「ああ、うん。確かに明るくなってきたなー……」
二羽は寝ないで番をしてくれていたらしい。それはとてもありがたい。ありがたいのだが……。
明るくなってきたといってもうっすらというだけで、見えると言えば見えるんだけど解体できるほどは明るくない。
「シロちゃん、もっと明るくなってから声かけてくれ。これぐらいの暗さだと木から降りれないからさ……」
ふあーあとあくびをして俺はまた倒れた。
次に起きたのは、つつかれながらだった。痛い、痛いです。状態異常にはならないけど怪我してしまいます。手加減お願いします。
「オトカー、オキロー!」
「……はーい」
食い意地の張ったシロちゃんに起こされました。
それなりに明るくなるまで待ってくれていたみたいだった。そして二羽の足元には卵……。
「シロちゃんクロちゃんありがと。降りてから作業したいから、もう少しだけ待ってて」
毛布も卵もアイテムボックスにしまってから木を降りることにする。……これ、登りはいいんだけど下りがめちゃくちゃ怖いんだよな。登ったはいいけど猫が降りられなくなるとかよくわかる。昨夜もクロちゃんの助けがあったとはいえ、よく登ったもんだ。
「……ちょっとここ、自分で降りるの怖い」
正直に訴えてみた。
「ヘタレー」
シロちゃん、そんな言葉どこで覚えたんだよー。
「オトカー、ギュー?」
「えっ?」
クロちゃんがコキャッと首を傾げた。
ギューっていうとだっこかな。でもだっこ?
「ギューってこれ?」
前からクロちゃんの首の後ろ辺りに腕を回してぎゅっと抱き着いてみた。
「ギュギュー!」
もっとしっかり掴まれと? 少し力を入れて密着したら、クロちゃんは俺をくっつけたままトテトテと枝を歩き、
「え? うそ、マジで?」
ぴょんと木の枝から跳んだのだった。
「ちょっ、まっ……!?」
クロちゃんはそのまま羽をバサバサと動かし、ぎこちないながらも風に乗って木の根元まで降りてくれた。ちょっと、いやかなり生きた心地がしなかったです、ハイ。
「あ、ありがと……」
クロちゃんから離れて、座り込んでしまった。どうやら腰が抜けてしまったようである。
自力で降りるのと、クロちゃんにくっついて怖い思いをするのとどっちがいいのだろう?
次の機会にはしっかり考えたい。
基本的に二羽は木の上で過ごす魔物だから、こういった機会は多いはずだしな。さっそく今夜とかありそう。げんなりしながらどうにかこうにか身体を起こし、シロちゃんが出した昨夜の魔物を見て遠い目をしたくなった。
「でっかい、ネズミ?」
と言いたくなるような生き物だった。体長は尻尾を含めないで4,50cmぐらい。まるまると太っている。よっぽど餌がいいんだな。
「じゃあ解体していくか」
比較的平らな岩のような場所を探し、その上に浄化魔法をかけて作業の準備を整える。鍋にお湯を沸かし、でっかいネズミモドキにかけてから毛を毟った。一頭は丸ごと二羽が食うらしいので、毛を毟ったものを渡しておく。結局四頭も狩ったらしい。
アイテムボックスに入れておいてもらったので新鮮なままだ。できるだけ早く解体して近くの川で冷やすことにした。
「……ふー……」
これぐらいの大きさでよかった。イノシシみたいな大きさになるとさすがに解体するのも骨が折れる。俺がもう少しでかくなればイノシシぐらいの生き物の解体も楽になるんだろうけどなー。
二羽はネズミモドキをがつがつ食べている。毛を毟ったものの方がおいしいらしくて、俺が毟ったものを持って行くのだ。狩ったのは二羽だから文句はない。
基本保管と運搬はアイテムボックスで行うから、俺が朝飯を食べ終えたら回収して移動することにしたのだった。
ーーーーー
今年もたくさん読んでいただきありがとうございました。
また来年もどうぞよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます