10.ニワトリスが寝床を見つけてくれたのとごはん

 さて、引き続き北の方角へと進んでいるわけだがもちろんあまり景色は変わらない。

 でも鬱蒼とした木々がどんどん太く、でかくなっているのはわかる。北に向かうと寒くなるんじゃないのかな。もしかしてここは南半球か?

 この森の広さがわからないのが困る。

 え? そういうの学校とかで教えてもらえないのかって?

 そもそも学校なんて大層なものはうちの村にはなかった。両親だって数字ぐらいしか読めなかったし、勉強ナニソレおいしいの状態だ。つくづく教育ってのは贅沢品なんだと俺は実感したね。(個人の意見です)

 雑貨屋のばあちゃんが数字とか簡単な文字とかは教えてくれたから名前は一応書けるけどさ。でも読み書きができるとは言い難い。そういうことも学びたいよなぁ。

 話が大幅に脱線した。とにかく北へ行くのだ。


「高い山があるって話だから、進んできゃぶつかるだろ」


 北へ向かっていくわけだから、耐えられないほど寒そうだったら途中で方向転換すればいい。どうせあてどない旅だ。

 でもまぁ、目的はある程度定めた方がいいよな。

 三男坊ってことで、どちらにせよ家を出るつもりではいた。……こんなに早くじゃないけどさ。

 家を出て、できれば冒険者になってみたいなって思ったんだよな。シロちゃんとクロちゃんもいるし。

 冒険者には冒険者ギルドというところに行くと身分証明書みたいなのを作ってもらえるらしい。もちろん有料だ。その為のお金はこれからどうにかするとして、まずはその冒険者ギルドがある場所へ行かなければならない。

 ……まずは森を出るところからかな?

 北の方に村とかないかなー。

 日が陰ってきたようなのでシロちゃんとクロちゃんに声をかけて足を止めた。無理は禁物だ。


「シロちゃん、クロちゃん、今日はこの辺りで休みたいんだけどいい場所ってある?」

「タブンー」

「アルヨー」


 二羽が答えてくれた。思わずにっこりしてしまう。うちのニワトリスめっちゃかわいい。

 二羽は上を見ながらその辺をうろうろし始めた。きっと過ごしやすそうな木を探しているのだろう。確かに地面だといろいろ虫が這っているから、下で過ごすとなったらまず枯草とか枯れ木とか集めていぶす作業を行わなければいけないだろう。その点木の上にはそれほど虫は登ってこないみたいなので落ちることを考えなければ快適だと思う。とりあえず落ちたら怖いので頑丈そうな枯草を探すことにした。


「ミツケター」

「えっ?」


 シロちゃんがバサバサと羽を動かしてぴょんと跳んだ。

 そのぴょんでけっこうな高さまで跳び、そのままバッサバッサと飛ぶ。いつ見てもニワトリスってすげえ。ついあんぐりと口を開けてしまった。

 シロちゃんはそのままある木の枝に止まると、クァアーッ! と鳴いた。

 あそこがいいってことだな。


「わかった。ちょっと待っててなー」


 あそこまで行ってしまうと用を足すのもたいへんなので、クロちゃんに見張ってもらいながらいろいろ済ませ、そのままでも食べられそうな毒草をそれなりに摘んでから木に登ることにした。ニワトリスは自力で飛べるけど俺は自分で登るしかない。でもクロちゃんは俺が心配だったらしく、バサバサ飛びながら登るのをサポートしてくれたので思ったよりも早く木の上に上がれた。うちのニワトリスはすっごくかわいい。


「クロちゃんありがとなー。お、うろがあるじゃん! シロちゃんさっすがー!」


 太い木の途中、シロちゃんが先に飛んできた場所は太い枝ってだけじゃなくて子ども一人ぐらいは入れそうな穴が開いていた。


「オトカー、ナカー」

「うん、ありがとう。ちょっと待って」


 うろの中を見てみるけど、特に何もない。虫の死骸とか枯れ葉っぽいのは入っているからそれを外に捨てて浄化をかける。

 これで一晩は快適に過ごせそうだった。


「いつもありがとなー」


 シロちゃんとクロちゃんの羽を撫でれば嬉しそうに目を細めてくれた。


「じゃ、夕飯にしよっか」


 アイテムボックスから先ほど採取した毒草や昼に採取した毒キノコを出す。毒を含んだものって苦いとかまずいってイメージがあるけど、魔物が率先して食べるってぐらいうまいものなんだよな。もちろんこういうのを食べないでまんま肉食にくしょくってのもいるから、何年かに一度は村の近くにも魔物が現れたりはするんだけど。


「これ、うまいな」


 クロちゃんが見つけてくれた毒草はなかなかおいしかった。なんていうか、レタスの味をより濃縮したような味だったので、俺は塩を振って食べた。


「失敗したな……」


 毒草も毒キノコもおいしかったんだけど、朝卵を調理した時まとめて調理しておけばよかった。寒くはないんだけど温かいものが食べたくなる。夜は特に。

 アイテムボックスに入れたものは時間経過がないらしく、温かいものを入れたら温かいまま出てくる。明日からはできるだけ作り置きしよう。

 元々暗かった森の中はもうかなり暗くなってきた。月の光も見えないから、俺じゃなんにも見えないはずなんだけど意外と見えるのが不思議だ。これは昨夜も思ったことである。

 毎晩早く寝てしまうから気づかなかったけど、俺もシロちゃんたちみたいに暗視魔法みたいなものが生えてんのかな?

 魔法はないから、やっぱ加護とかなのかなー?


「ふー、おなかいっぱい。シロちゃん、クロちゃんもおなかいっぱいになった?」


 二羽は首を振った。だよなー。でも、


「ダイジョブー」

「オトカー」


 と俺の側にいることを優先してくれる。


「俺はもう寝るから、餌とか取りに行っててもいいからなー」


 そう言って薄い毛布をかけ、うろの中で寝ることにした。

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