第3話 病棟は笑いの宝庫か⁈

今回初めに

絞扼こうやく性イレウスについて解説

(イレウスとは腸閉塞のこと)


腹膜が剝がれ腸などに巻き付くことにより

激しい痛みや嘔吐が現れる

そして腸の血行障害を伴い腸が壊死する


❝緊急度最高レベル!❞


大事な事だからもう一度


❝緊急度最高レベル!❞


の病

つまり、早く手術して

腸に巻き付いた腹膜を取り除かないと死ぬ

100%死ぬ!絶対に死ぬ!死ぬしか無い!

たとえ手術が成功しても

敗血症などを併発し死ぬ事もある

怖い病気なのです。


では、何をしたら絞扼性イレウスになるの?

何が原因?何が悪いの?どんな人がなるの?

答えは・・・無い!

残念ながら原因も遺伝性要素も

性格の良ししも関係なく

いつでも誰にでも起こりうる病

だから防ぎようが無いのである~残念!


因みに桶星は小腸(空腸・回腸)を

腹膜が覆い被さり握りつぶしていた


術後の説明を受けた息子曰く

「写真見たけど、小腸がギューって握られて

 めちゃ小さくなってた(笑)!

 血の気が無くて真っ白だったよ~(笑)」

だそうである


(そりゃ痛いはずだわぁ

  想像してくださ~い

 腹の中に手を突っ込まれ小腸をギュッと

 ギューッと握られる様を)


その時の息子と担当医師(執刀医)の会話

担当医

「小腸が握りつぶされていました」

息子

(写真を見せられ、ってか腹の中撮ったんかーい)

「おぉ・・・」

担当医

「小腸が腹膜に包まれているでしょ。

 どうやって取ったかわかる?」

息子

「真ん中からはさみで二つに切って剝がした」

担当医

「正解!二つに切り分けて、そっと剝がした。

 暫くしたら血液が通って腸の色が

 正常に戻ったので良かったです」


このような会話をされたそうで

なんとも楽しそうで何よりです(何が?)

 

********


手術が終わり病室へと戻った桶星

茫然と天井を見上げる・・・

そして思った

あぁこの病気になったのが桶星で良かったぁ

息子で無くて良かったぁ

あんな激痛に息子が苦しむ姿を見たら

とても平常心ではいられ無い

絶対に心配し過ぎて卒倒してしまう!


あぁこの病気になったのが桶星で良かったぁ

医療が充実していない国の人なら

死んでしまってた

あぁこの病気になったのが桶星で良かったぁ

幼い子が、あんな激痛に襲われたら

可哀想過ぎる

本当に桶星で良かった

と、普段なら思わない聖人のような事を

考えたのは

きっと術後ハイになっていたからだな(笑)


********


桶星の術後経過は至って順調で

三日目には鼻から胃に通していた管を抜かれ

(担当医が抜いてくれたのだが

 とてもお上手で全然痛く無かった)

担当医

「尿管カテーテルも抜こうか」

看護師さん

「良かったですねぇ桶星さん」

桶星

「・・・(マジかよ⁈まだ力が入らんのに

 自力でトイレに行くのかよ?

 いやぁそれは抜かないで欲しいです!)

 はい・・・」


尿管カテーテルが入っていれば

トイレに行かなくて済むのに~

そして無残に抜かれる尿管カテーテル

さらば尿管カテーテルよ


看護師さん

「トイレに行ったら紙コップに

 尿を取って量を記録してください」

桶星

「はい」

看護師さん

「尿用の紙コップは専用のゴミ箱に

 捨ててください。尿はトイレに流して

 紙コップだけ捨ててくださいね」

桶星

「???いや、尿はトイレに流すでしょ」

看護師さん

「それが、尿を入れたまま

 紙コップをゴミ箱に捨てる人がいて

 困るんですよぉ」

桶星

「うそぉ~、有り得ないでしょ」

看護師さん

「本当にいるんですぅ」

桶星

「噓だぁ止めて~

 可笑しくて笑いが止まらない~

 痛い!痛い!笑うとお腹の傷が痛い~」

看護師さん

「本当なんですよぉ」

桶星

「もうダメだアッハッハッハアッハッハッハ

 痛い!傷が痛いアッハッハッハ」


笑いが止まらず痛みと笑いの戦い


********


桶星のベットは出入口の隣りで

廊下の話し声がよく聞こえていた


看護師さん

「駄目ですよ〇〇さん!

 勝手にベットから出ないで

 お部屋に戻ってください!」

患者A

「俺、おしっこが出そうなんだよ」


あら、それは大変

トイレに行こうとしてるのに注意するなんて

看護師さん、いけませんねぇ


看護師さん

「〇〇さん、おしっこは管が入っているから

 トイレに行かなくていいんですよ」


エッ⁈


看護師さん

「おしっこ溜めてるパックを

 引きずって歩いたら駄目ですよ」


あら、それは大変!

この爺さん桶星が入院中に

3回は同じ事を繰り返し

その度に看護師さんに注意されてた(笑)


********


入院四日目

二階のレントゲン室で

レントゲン撮影して来いと言われ

一人で点滴台を手押し車代わりに行きました


🎶行きはよいよい帰りは恐い🎶

桶星は筋金入りの方向音痴であ~る

帰り道、エレベーターを降りたら・・・

病棟じゃ無ーい!

あれっ何階に戻ればいいの?

懸命に思い出す桶星・・・

たしか入院する時に外来看護師さんが

四階と言ってたようなぁ・・・

気を取り直し再びエレベーターへ

そして四階で降りた

おぉここは病棟だぁ~

しかーし!病室が分からなーい!

フラフラと今にも倒れそうになりながら

点滴台にしがみ付き病棟内を彷徨う桶星

彷徨さまよう・彷徨う・彷徨う

だってさぁ病棟広くて

A病棟B病棟があるんだものさぁ

自分のベットに辿り着いた時は嬉しかったです


レントゲン異常なーし血液検査も異常なーし

なので担当医が

「桶星さん順調だよ!」

と、お喜びあそばしておりました


********


入院五日目

点滴終了

看護師さん

「良かったですねぇ桶星さん

 点滴これで終わりですぅ針抜きますねぇ」


良く無い!全然良くありません!

歩くのに点滴台が頼りだったのに

つかまる物が無くなる~ショック!

(普通の人間なら、鼻の管取れた~

 尿管カテーテル取れた~

 点滴もうしなくていい~

 と喜ぶのかも知れないが

 桶星は嬉しく無かったですますです!)


そうそう、桶星が救急搬送される時に

校正係に

「いま救急車の中」

と電話していたのですが

術後、頭も体も放心状態で連絡忘れ

心配した校正係から

LINEがバンバン来てたのに

スマホを開くこともできずにいたら

「心配だから既読だけでも付けてぇ」

と悲痛なお願いをされ

めちゃ心配をおかけてしまったのよね


その上

緊急搬送され診察室で点滴されてる写真を

X(旧Twitter)にポストしたっきりで放置

だからフォロワーさんの70割りの方は

❝桶星死んだ❞ろ思っていたそうです

改めて皆、その節は心配かけてゴメンよ~


********


入院七日目

再度レントゲン&血液検査

結果は全くもって異常なし


担当医

「桶星さ~ん、こんなに早く回復する人は

 初めてだよ。僕は嬉しいよ~

 明日、退院していいよ」

看護師さん

「先生、明日は土曜なので退院手続きが」

担当医

「あぁそうかぁ、じゃぁ月曜に退院ね。

 院内の売店で売ってるものなら

 何を食べても良いから」

桶星

「わぁ~やったぁ!」

と喜んで見せたが

・・・実は許可出る前に隠れて売店へ行き

すでにお菓子を買い隠し食べていた(笑笑)

だってぇ病院食不味いんだも~ん


退院許可が出て嬉しい事と不安な事が有った


嬉しい事

パンが食べられる~

桶星は毎朝パン!何がなくともパン!

なのに病院食は三度の飯が粥

もぅパンが食べたくてイライラしてた


不安な事

まだ傷が痛くて体を伸ばして歩けないのに

独り暮らしで乗り切れるのか?

自分で飯が作れるのか?


嬉しいと不安を両天秤に掛ける

パララッパッパッ~パンが勝利する!

ので、取り敢えずパンの為に退院できる!

と喜びテンションアゲアゲ~だったのに


担当医

「いやぁ危なかったねぇ

 手術があと数時間遅かったら

 大変なことになってたよぉ」


はぁ⁉なんじゃそりゃ?

絞扼性イレウスだと分かってたんだから

こっちを先にオペすれば良かったじゃん!

冗談抜きで死に掛けだったんだぞ!

と心の中で怒りながら

「先生のお陰で命拾いしました

 本当にありがとうございました」

と頭を下げ礼を言う桶星はやはり腹黒かっ?


でも、とても良い先生でした

スタッフには厳しく

患者さんには絶えず笑顔で

そして日焼けした細マッチョでナイスガイ


********


退院が決まりベットを部屋の奥へ移動された

(状態が悪い人が入口近くに置かれるらしい)


奥へ追いやられた事により

ある謎が解けた、犯人はお前だ!じゃ無く

いつもナースコールしてるのに

看護師さんが来てくれないお婆さんがいた

その方は骨盤骨折で一人で歩くのは禁止

なのに、いくら呼んでも看護師さん来ないから

自力で立ってトイレへ行き

看護師さんから「駄目ですよ一人で行ったら

ナースコールで呼んでください」

と絶賛注意されていたのだが

桶星は呼んでも来ないじゃん怠慢じゃん

と少々看護師さん達を怒っていた

のだが・・・のだが・・・

ベットが移動してナースコールしても

ガン無視される可哀想なお婆さんの

真向かいに陣を構え、謎が解けた・・・

目に飛び込んで来たのは・・・

世にも恐ろしい光景・・・


骨盤婆さん

「もしもし〇〇です。トイレに行きたいので

 お願いします。もしもし、もしもし」


と、と、と、と、おっとっとー!


お婆さんたら

ナースコールをマイクと勘違いしてるー!


ナースコールをマイクの様に手に握り持ち

呼びかける「もしもし、もしもし」って

慌てて桶星お婆さんに近づき

「あの~、このボタンを押すんです~

 押してから話さないと

 看護師さんに聞こえないんです~」

と優しく教えてあげた

どおりで、この方だけ看護師さんに

ガン無視されてるわけだよ

だってナースコール押して無いんだもん

ナースセンターにコールされて無いんだもん


この方、御年92歳

実にしっかりと受け答えはなさるが

機械の進化について行けないのは仕方ない

いや、そこはスタッフ~が教えてあげてよ

と思った

お年寄りを舐めたらいかんぜよ!である


********


退院前日

看護師さん

「シャワー浴びていいですよぉ」

ってことでシャワーを浴びるために

よちよち歩き目指す浴室

十日ブリブリの綺麗綺麗


全裸になり、いざシャワー

そして「なんじゃこりゃー!」

とマジで叫んだ

術後初めて見た腹の傷

臍が半分無くなってるではないか!

すっげぇデカイ傷痕に驚く驚く

もうビギニンは着れないー!

着たことないけどねぇ~(笑)


********


退院当日

息子は有給休暇を取り迎えに来る予定

だったのだが

もう病院食のせいで

頭がイキまくってた桶星は息子に

「迎えは要らない、パンを買って

 家で待ってて。絶対にパンを買え!」

と低姿勢でお願いした


その日は退院ラッシュで

あちらもこちらも退院されて・・・

皆さん、素敵なお洋服で・・・


桶星は無い、持って来てない

まさか入院してぇ死にかけてぇ手術してぇ

なんて思いもせずに緊急搬送されたから

Tシャツにジーンズにサンダル

しかも荷物入れは35ℓのレジ袋

この袋は着替用の下着を息子に

取りに行ってもらった時に

「大きなレジ袋があるから、

 それに入れて持って来い」

と桶星が頼んだレジ袋・・・

他に旅行用バックも有るのにさぁ

仕方ないよね

デッカイ35ℓのレジ袋を引きずって

病院と、おさらばしやしたよ


家に着くと(桶星は集合住宅の二階居住)

息子が階段下まで迎えに来てくれたよ

荷物(35ℓのレジ袋)を持ってくれたよ

パンも買って置いてくれたよ

ぶどうパンをお願いしたのに

買ってあったのは、ぶどう食パンだよ

ムカついたよ、言ってやったよ


「これは、ぶどう食パンでぶどうパンでは

 ありません!」

息子

「あぁそうなんだぁ~」

バカ、ほんとバカと退院そうそう指導したよ


でもね、いつの間にか隣の部屋で

爆睡こいてる息子の顔を見て

あぁ息子は桶星が大病で死に掛けたから

凄く不安で心配したんだなぁ

無事に帰って来て安心したんだなぁ

やっぱり生きてて良かったぁ

と思いました、おしまい。



























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死にそこなう 桶星 榮美OKEHOSIーEMI @emisama224

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