第2話 嫉妬から始まって


私だって、最初から彼女に対してこんなに過保護だったわけじゃない。


幼い頃は、私ルナ・ナイトメア、従姉妹のリイナ・サンダルフォンに嫉妬していた。



全ての始まりは5歳の時。

庭で大人たちはすぐ近くのテラスでティータイムを楽しんでいたのだけど、子供の私たち子供は、庭で遊んでいたのだ。


その時、とある木の前で私はこんなことを言った。



「はるになったら、このきのまわりで、おはなみパーティーするんだよ!」



「どんなおはななの?」



「ピンクのおはな、かわいいんだよ〜」



そういうと、みんな見たい見たいと騒いだ。

みんなに羨ましがられていい気分になった私は、良きところで『はるになったらウチにおいでよ!』と…パーティーにお誘いするつもりだったのだ。


ところがリイナは、私がそのセリフを発する前に、こんなことを言った。



「おはなみたい?みせてあげようか?」



なんて。


できるはずもないことを言い出して驚いていたのだけど、みんな興味津々でやってやってと他の子供達が騒ぎ立てた。


だからリクエストに答えて、リイナは『枯木に花を咲かせましょう!』と言って手を振った。


今思えば、このセリフは現世の私が童話に影響されて、この言葉にしたんだろうな。

と思うのだけど、そんなことはどうでもいい。


とにかく、この呪文で花は咲いた。


木が光り輝き、春にしか咲かない木一面にピンクの花が咲いたのだ。


子供たちの感嘆な声と、ティーカップが割れる音。

そして大人たちが駆けつけて、リイナに魔法の才能が開花したと騒いだ。

魔法使いの家系以外で魔法の能力が発現するのは稀だからだろう。


リイナの母……言ってしまえば私の叔母は、とても喜んでいた。


そうなると、負けん気の強いうちの母親が面白く思うわけがない。


だからその日の夜、お母様からからこう言われた。



「リイナに魔法の才能があるなら、あなたにも才能があるかもしれないわ。魔法の勉強をしなさい」



そう言って、魔法が使えるわけでもないのに、魔法使いの教育が始まった。

もちろん、それ以外にも才能があるのでは、とありとあらゆる教育をさせられた。

そうして2年、私が何一つ結果を出せないでいる間に、リイナは聖女の候補として名前が上がった。

その上、私と同じ伯爵の娘でありながら、公爵家の息子フィリックと婚約したのだ。



そのリイナの状況を知ったお母様は、7歳の時に私に今度はこういった。



「がっかりだわ。同い年の従姉妹なのに、どうしてこうも差が生まれるのかしら……男の子じゃないなら、せめて出来損ないではなく、優秀な子供が欲しいものだわ。」



こんなことを言われれば、コンプレックスも爆発した。

聖女に関しては、この国の女の子の憧れの地位だったし、

しかも、その公爵の息子は当時私もリイナと一緒に仲良くしていて、今はそうでもないけど、この当時は少し好意はあった。


感情のコントロールのできない幼い私は、怒りの矛先はリイナに向けた。


だから、私は嫌がらせをと、彼女を階段から突き落とそうとしたのだけど……


その時『ダメ』と言う声が聞こえたことで、足を止めたせいで体勢を崩し、代わりに私が階段から転んで頭を打って気絶した。



その時に思い出したのだ。



この世界は……私が作り出した物語の世界なのだと。



そして私は……は……自分の作った『呪いを受けた聖女(仮)』と言う作品のヒロイン……のに転生したのだと。




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