第12話 雪月夜宵side
「ふぁぁ…」
夜宵は眠い目を擦って体をベットから起こす。
「結局そんな寝れなかったな」
そう呟き夜宵は昨日の事を思い出す。
昨日は乃亜と一緒に放課後に遊んだ。
「でも乃亜、好きな子いるって言ってたな…」
それを聞いた時夜宵は真っ先に思い浮かんだ人物がいる。
それは他校の女の子で、凄く可愛いと言われており、でも男の子には興味が無いように見えるため『難攻不落の氷姫』と呼ばれている少女のこと。
正直なことを言うと夜宵はその女子の名前すら知らない。
でもその子を羨んでいる。
「乃亜の好きな人がやよ……な訳ないか…」
微かな希望が頭をよぎったが昨日の感じからしてその可能性は極めて低いだろう。
夜宵は頭をぶんぶんと降ってそんな甘い考えを頭から追い出した。
「おねーちゃん何してるの?」
「ふぇっ?」
いつの間にか部屋のドアが開いてそこには1歳年下の妹の
「や、これはなんでも……」
「ふぅん?変なおねーちゃん」
「あはは……」
「朝ごはんできてるから早く起きてきてね」
「はぁい」
1歳年下の可愛い妹は不思議なものを見たような顔を浮かべて部屋から出ていった。
「やよの想いが届かなくてもあの子が幸せそうにしてるならいいか」
(そうだ、あの子の笑顔も乃亜のおかげであるんだった)
そう思って夜宵は思考を遡らせる。
(たしかあれはやよが中学3年で
♦︎♦︎♦︎
「ねぇ光葵、やよはどこの高校行けばいいと思う?」
「おねーちゃんまだ決めてなかったの?もう12月だよ?」
「そうだよねー、もうそろそろ願書出さなきゃ行けない時期だよ〜」
今は12月で高校受験もいよいよ大詰め、夜宵の周りの友達はみんな必死になって塾に入り浸って勉強をしていた。
その一方で夜宵はまだ志望校も決まらず塾にも行かずお世辞にも受験生と言えるような状態じゃなかった。
「まぁおねーちゃんはコミュニケーションもちゃんと取れるし頭もそこそこなんだからどこの高校行っても大丈夫だと思うよ」
「えへへ、光葵がそんな褒めてくれて嬉しいよ〜」
「もぅ、そんなにニヤニヤしてないで早く帰るよ?今日はお母さんの誕生日でしょ?」
「そうだったそうだった!」
夜宵と光葵の2人は母親の誕生日ケーキを一緒にサプライズで買いに行っていた。
4時くらいには家を出たのだが選んだり悩んだりしてるうちにもう時間は7時すぎになってしまっていた。
すっかり日も落ちてあたりは薄暗くなっていた。
「
急いで家に帰ろうとしていたところ突然後ろから外国人に声をかけられた。
「え?」
「
「えっと……」
「おねーちゃん分かる?」
「さすがにネイティブの人のは分からない…」
目の前にいる外国人は屈強な体立ちをしていた。
それもあってか思考が上手くまとまらなかった。
「そーりー…」
「
外国人は2人をまくし立てるようにそう言った。
「どうしよう…分からないよ」
「うん…ちょっと怒ってる感じするし」
「
するとその外国人は舌打ちをして明らかに機嫌を悪そうにした。
夜宵と光葵は外国人を前に何をすることも出来なかった。
「
突然横から男の子の声が聞こえた。
声の方向を見るとそこには夜宵と同じくらいの年齢に見える日本人の男の子がいた。
「
すると外国人は満足そうに去っていった。
夜宵と光葵はその男の子の方を見た。
「えっと……ありがとう」
「うん、大丈夫だった?怖くなかった?」
「うん…大丈夫」
その男の子は優しく声をかけてくれた。
「英語、習ってるんですか?」
夜宵は勇気をだしてその男の子に聞いた。
「いや、習ってるというかアメリカに住んでてね」
「え、じゃあどうして今ここに?」
「高校受験の下見にね、俺ここの近くの筑星学園に行こうと思っててね」
「そうなん…ですね、」
「うん、じゃあ俺この後予定あるから」
「はい、助けてくれてありがとうございました」
「いえいえ、じゃあ気をつけてね」
そうして2人はその男の子と別れた。
その男の子がいなければどうなっていたか分からない。
吊り橋効果的なものもあってなのかその時の夜宵にはとても魅力的に見えたのだった。
♦︎♦︎♦︎
「思い出してみると懐かしいな」
(たしかそれ聞いて今の高校を決めたんだっけな)
夜宵は制服に着替えながら思考を巡らせる。
その時の夜宵ではその高校には受かる可能性が低かった。
だが残りの3ヶ月弱夜宵は本気で勉強した。
その男の子と一緒になるために。
そして無事受かって高校に入るとある男の子に目がいった。
ひとめ見た瞬間あの人だと分かった。
(光葵には色々と言われたなぁ、でも最終的には応援してくれて……)
そこで夜宵の目から涙がこぼれ落ちた。
(あれ…なんで、だろ)
溢れ出る涙の意味を理解できなくて夜宵は少し戸惑う。
でもそれが失恋によるものだと理解した時には涙はもう止まっていた。
(そっか…これが失恋、か…)
夜宵の実らなかった小さくも大きな想い。
「これもこれでいいのかもな」
そうして夜宵は透き通った失恋の思いを噛み締める。
「ありがとう、私の初恋」
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