第11話 君をチャージ
とりあえず結姫には用事が出来て一緒に帰れないと連絡だけしておいた。
結姫の返信は何故か怒っているような文面だったけど。
それで今俺はというと学年で五本の指に入るという程の雪月夜宵とスタバに来ていた。
いやなんで?
まぁそれを今から聞くんだけど。
「なんか…映そうなやつばっかだな」
あまりこういった所にはこないのでよく分からないが学生に人気なだけあるなと感じる。
「そうだねー、まぁやよはそんな気にしたことないけどね」
と言いながら写真をパシャパシャと撮る雪月さん。
いや気にしたことないってどういう意味だっけ…?
「えっと、まず確認だけど雪月夜宵さんで合ってるんだよね?」
俺が心の中でしたツッコミはとりあえず置いといて話を進めるために質問をする。
「そうそう」
「ちなみに今日はどう言ったご要件で?」
キャラメルフラペチーノを啜る雪月さんに尋ねる。
「ちょっと相談があってね」
そう言って雪月さんは1呼吸置いた。
「ねぇ、やよと友達になって」
「え?」
「だから、友達になって欲しいなぁ…って」
少し上目遣いでこちらを見つめてくる雪月さん。
「な…んで?」
若干雪月さんに押され気味になりつつも動機を聞く。
「それを聞くのはどうかと思うなぁ、乙女には色々あるんだからっ」
少し頬をふくらませて怒る雪月さん。
理由は気になるが俺と友達になりたいって言うくらいだからよっぽどの理由があるんだろう。
「えっと…具体的にはどうすれば?」
「まずライルとインスア交換しよ、そしてやよのことは名前呼びでよろしく」
「は、はあ」
「ほら、言ってみて」
「や…よい」
「ふふ、ありがと。やよのこんなワガママに付き合ってくれてごめんね」
「いや、別に…」
そこまで嫌ではなかったので悪い気はしない。
ただこれが周りの目に入るかもしれないと考えると気が気じゃない。
「俺も質問していいかな?」
「うん?」
「高木と夜宵はどういった関係なの?」
「ん〜、強いて言うなら幼なじみ、かな?」
ほう?
「小学校の時からの友達でね、ずっと仲良かったんだ」
「へぇ、でも学校であんまり話してるとこ見た事ないけど…」
「あぁ、琥太朗彼女できたからね。遠慮してたんだ」
「でも彼女できたのって最近じゃ…」
「ずっとそんな雰囲気あったからやよがいたら気まずいかなぁって思って」
「そうだったんだ」
幼なじみ思いのいい人なんだな。
「高木のことはどう思ってるのか聞いていいか?」
「いいけど琥太朗のことはなんとも思ってないよ?」
「そうなんだ」
なら良かった。
高木に彼女が出来て失恋したー、とかじゃないなら一安心だ。
「やよには他に好きな人がいるし…」
そう言って頬を染める夜宵。
「そっか、俺はその恋応援するよ」
「……ばか」
夜宵は俺に聞こえないほどの小声でそう言った。
「ま、今日のところはこれでいいかな?」
「うん。ありがとうね」
「いやいや、こっちこそ。俺に出来ることあったらなんでも言ってね」
「うん、優しいんだね乃亜は」
「そうかな?」
思いがけない言葉にあやふやな返事になってしまった。
とりあえず俺たちは店を出て駅の方面へ歩く。
「最後に1つ聞いてもいい?」
その道中夜宵がふと口を開いた。
「うん、いいよ?」
「答えたくなかったら答えなくていいんだけどさ」
「うん」
「乃亜はさ……好きな人いる?」
「………うん、いるよ」
「そっか、そうだよね」
「でも叶わない恋だって最近気づいてね」
「そうなの?」
「でも諦めきれなくて…」
「そっか…」
「今まで自分から動いてきたことって何一つないけどさ、今ここで自分から動かなかったら何も残らない気がして」
そう、あの時のように自分に言い訳をしたままだと何も手に入らない。
自分が大切にしたいと思ったものは自分で動いて守らないと。
「だからもう1回自分から動いて頑張ってみることにしたんだ」
「……そうなんだ」
すると夜宵は寂しげな表情を浮かべた。
その表情はどこかで見たことがあるような、そんな気がした。
♢♢♢
「結姫…?」
「……」
晩御飯を食べ終わってソファーで休んでいる結姫の隣に座って話しかけるも返事がない。
「大丈夫?体調悪い?」
少しツンとした表情の結姫。
いつもとは全然違う結姫の雰囲気に困惑する。
「違います、これも全部乃亜くんのせいです」
「え?」
「私と一緒に帰るという約束すっぽかして……」
「そのことに関しては本当にごめん。これには訳があって……」
「大丈夫です、私は優しいので特別に許してあげます」
「え、本当?」
「はい、でも条件があります」
「条件?」
「私を甘やかしてくれたら許してあげます」
「え?あま…え?」
「ふふっ、私の勝ちですね」
「え?」
よく分からないけど結姫が笑ってくれた。
機嫌が戻ってくれたようでよかった。
「まずは今日は乃亜くんが不足してたので充電させてください」
「……え?」
すると結姫は体重を俺に預けて寄りかかってきた。
「ちょっ…」
「動かないでください、今はこのままで…」
そして甘くとろけるような時が過ぎていく。
あぁ、そっか。そうだよな。
どんなに叶わない恋だろうと俺は諦めないんだ。
だってこんなにも隣にいるこの少女のことが好きなのだから。
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