第2話 一度枯れた泉はもう一度潤うのか
泉が完全に枯れてからは、何を書いても「お利口さん」な文章しか書けなくなった。
自分らしさのかけらもない文章に最大限の肯定をされた事は、自尊心を叩き潰すのに最大の効力を発揮したらしい。世の中が求めている文章とはこういうものだ、と言わんばかりに、私の文章は「正統派」な文章になっていった。
そして、必要以上に物を書かなくなった。
高校受験・高校入学・勉強・部活・日々の生活と慌ただしく過ごすうち、文章を書くという機会も極端に減った。
大学入学の為の入試で小論文を書く際も、もちろん自分らしさなど皆無だった。
でも、ちゃんと合格した。
世の中を生きていく上で、私自身が自信を持っていた私らしい文章など必要ないのだと再認識したが、前程傷付く事もなくなっていた。
そんな大学生活を送っていたある日、とあるサイトを見つけた。
私は本(マンガ等も含む)を読む事も好きなのだが、そのサイトは読んだ本に対する感想を書けるというものだった。
最初は読んだ本の備忘録として。また、その本に対してどんな感想を自分が持ったのかを記録したいと思い、また、同じ本を読んだ人がどんな感想を書いているのかを見たいと思い始めた。
最初は本当に短い文章で。むしろ、感想とも言えない様な言葉の羅列。でも、後でその本に対して自分がどう思ったのか見てすぐにわかる様にちゃんと書きたい!と思ってからは、日に日に言葉も増え、その本に対する興奮や感動をそのまま記せる様になってきた。
そうすると、同じ本を読んだ人から反応が出てくる様になった。最初は星だけ。そのうち、コメントが送られてくる様になった。
そして、「私がこの本の感想として言いたい事を全部言ってくれた」。この言葉を私の感想に対して言われた時、私の中にまた泉が湧き出ていた事に気付いた。
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