第14話「父親」
エリオットの病室にて。
「はぁ?超能力ぅ?」
「……おぅ」
グラハムは訝しげな目でしばらくエリオットを見つめる。
「……お嬢さん、『空』の技術でコイツの頭の中覗く事は?」
「一応可能ですが」
「……あぁもう絶対信じないと思ってた」
頭を抱えるエリオット。
カナはグラハムに説明する。
「発症率が極めて低いかつ、余計な不安で日々の生活に滞りが生じないよう、病の存在は公には機密事項とさせていただいております。どうか外にはご内密にしていただければ……」
まだ、信じられないと言った様子で、グラハムは困り顔に汗を垂らす。
「うーん……なんかよくわかんねぇけど、生きてるみてぇだしまぁいいわ。こっちが頭おかしくなりそうだ……俺ぁ店戻んぞ」
「はぁ?! もう帰んのかよ!!」
病室から出ていこうとするグラハムを、引き止めるエリオット。
「なんだ? なんか文句あんのか?」
「……だから、これからこいつらんとこ行かなきゃいけなかったりするから……店出れない期間とか出てくるかもしんねぇ……」
グラハムは黙って聞いてる。
「……俺いなくても大丈夫か?」
「ん? んや、それは全然問題ないが。」
あっけらかんとしたグラハムの返答に、エリオットは拍子抜けの様子。
「いいのかよ」
呆れた様子でグラハムは答える。
「なんだ、たかだかアルバイトのくせして一丁前に重鎮気取りってかぁ?。お前なんていなくても店は回るよ。むしろ人件費浮いてせいせいするわ」
「ッんだよその言い方よぉ!」
「ま、せいぜいこれから頑張れや」
グラハムは部屋を出ようとしたその時、彼にボソッと言い残す。
「……早く治せよ。クソガキ」
そう言い残すと、彼は出て言った。
***
グラハムが病院の入り口を出てを歩いていると、見覚えのある人物をすれ違う。
「……お前」
その人物は彼を無視してスタスタとエリオットの病室の方へと向かっていってしまう。
グラハムは、その人物を寂しげな表情で見送り、病院を後にした。
***
「ったく、可愛くねぇジジイ」
病室にて、誰にも聞こえないのをいいことに、グラハムに対して悪態ついているエリオット。
その時、グラハムが半開きにしていったドアの向こうに、人影が映る。エリオットがそれに気づくと、人影は引っ込む。エリオットは不審な目をする。
「なんだかまるで親子みたいだったなあ」
「親子ねぇ。……ま、グラハムにゃ下手したら親より世話になってっかもな」
「……ふぅん。そうか」
カナが面白くなさそうな顔をしていると、エヴァンが割って入ってくる。
「カナ……そろそろ私たちも」
「ああ、はい。わかりました」
椅子に座りながら居眠りこいているヨクトをカナが叩き起こす。
「……ってぇ‼︎」
「……アンタらも行っちまうのな」
「生憎こちらも次が控えててな。少し長居しすぎた。なんだ寂しいのか?」
「まさかよ」
カナはヨクトの耳を引っ張り、3人は扉へと向かう。
「ははっ!! 冷たい奴だな。またその内会う事になる。実は今回の任務からこの街の管轄は私達になったんだ」
カナは余裕のある笑みを浮かべて別れを告げる。
「そう遠くない内にまた来るよ。では、またの機会に」
ヨクトはカナに耳を引っ張られながら、だるそうにひらひらと手を振って無言で別れを告げる。
エリオットもそれを見て、少し寂しそうににこりと笑いながら無言で手を振る。
3人が出て生き、病室は静まり返る。誰もいないはずの病室で、彼は口を開く。
「……いつまでそこにいるつもりだよ」
すると、変わらず半開きのドアの向こうに映る人影が、微かに揺れる。
エリオットは、頭をくしゃくしゃとかき回しながら大声でその人物を呼ぶ。
「……ぁあもうッ……入れよクソ親父!」
ゆっくりと入ってきたのは、この街の長である、エリオットの父、ウィリアムだった。
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