第11話

 皇さんが転校してきて二日目。

今日は皇さんの歓迎会の日だ。


今日は平日のため学校はあるので起きると支度を始める。

昨日寝たのが早かったせいかいつもよりも早く目が覚めてしまった。


俺は朝食を取り終え、準備ができると学校へと向かう。


 登下校の道はいつも学生が多いが今日は時間が早いこともあり、まったくと言っていいほど人がいなかった。

学校へは一本の道になっており木々が植えられている。

(たまにはこういう静かなのもいいな)

俺はその静けさに心地よさを覚える。



ガララ

学校につき、教室に入る。

(まだ早いから誰もいないだろうな)


「おはようございます。南条さん」

「っ!」

驚いて声が聞こえてくる方を見るとそこには皇さんが座っていた。

(まさかもう来ているとは)

誰も来てないと思っていたため余計に驚いてしまう。

「おはよう」

挨拶を返し、席に座る。

「学校来るの早いね」

「はい、学校まで送迎してもらっているので」

「そうなんだ」

軽く話した俺は授業の予習をすることにした。

カバンから教材を取り出す。




数分後

…。

沈黙がながれる。

ノートにペンを走らせる音しか聞こえてこない。

横を見やると皇さんは難しそうな本を読んでいた。

(気まずいけど、俺にはそこまでコミュ力があるわけではないし…)

転校してきたばかりということもあり、なにか話した方がいいのかと思いながらも話のネタもなく時間だけが過ぎていく。


「あの少しいいですか」

どうすべきか考え込んでいると皇さんが話しかけてきた。

「う、うんいいよ」

皇さんは神妙な面持ちだ。

(いったい何を言うんだろう)

彼女の様子に少し気を引き締める。






「私達って友達ですか?」


「…?」

彼女の唐突な発言に首をかしげる。

「友達ではないんですか?」

俺の沈黙を否定ととらえたのか落ち込む。

「友達で合ってるよ!」

慌てて訂正する。

「そうですよね」

俺の言葉がうれしかったのか食い気味に答える。


「失礼しました」

自分の行動が恥ずかしくなり顔を赤くしながら謝る。

「全然いいよ。でも突然どうしたの?」

「先日、お昼休みの時に百合さんに友達になろうと言われたんです。お恥ずかしながら普通の友達というもののなり方が分からず聞いたところ友達というのは損得ではなくお話ししてて楽しいことと教えてくれたのです」

「まあ確かに、友達っていうのはそうだな」

「ですので、南条君と私も友達ということになりますよね」

自信満々に彼女が言う。


「話したといっても案内の時しか話してないぞ」

「ええ。ですが私は南条君との会話は楽しかったですよ」

「っ!」

どうやら彼女は本当に楽しかったらしい。

純粋だからこそ俺は彼女の発言に恥ずかしくなる。

(そう言われて悪い気はしないが)



(…ん?)

俺は先ほどの彼女の発言に引っかかった。


「普通の友達っていうのはどういうこと?」

「以前の学校は少し特殊でした。いろいろな有名企業のご子息などが通う学校でした。私も友達という人は何人かいましたが、みなさん私を見ていないのです。私の後ろしか興味がないようでした。ですがそれが当たり前なんだと、考えるようにしていましたがよく本やテレビなどでの見られる友達の関係にあこがれてたんです」


彼女は自分の話をゆっくりと話し終える。

(そういうことか)


「なるほどな。なら俺たちは皇さんの言うように普通の友達だな」

「はい」

顔を綻ばせる。


「俺や百合以外にも友達はできたのか?」

「はい、お昼休みの時に教室にいた方とは友達になれました」

昨日の出来事を楽しそうに語りだす。

「それはよかったな」

「それに、メールグループにも入れてくださいました。以前の学校ではそのようなものはなかったのでとてもうれしいです!」


どうやら学校に慣れるどころかもう輪の中に入ったようだ。

「ですが普通の友達とは何をするものなんでしょう」

「そうだな、学校では休憩時間には同じ趣味の話や他愛のないことを話したり、休日にはあそびにいったりとかかな」

「なるほど」

興味深そうにうなずく。

「南条君もそうや会って過ごしているのですか」

「俺はあまり友人はいないけど基本的にそんな感じかな。昨日も富士川と昼食取ったりとか。そんなに気負わなくても今日のカラオケでもっと仲良くなると思うから遊びに行こうとか誘われると思うよ」


「それは今日のカラオケが楽しみですね」

「そうだね」

俺はそう返し、俺と彼女のやり取りは終わった。


あれから数分もしないうちにぞろぞろと生徒が登校してきた


「皇さん、おはよう」

「おはよう」

「おはようございます」

何人ものクラスメートが彼女に挨拶する。






ガララ

 扉が開き担任の先生が入ってきた。

「ホームルームを始める。さて、あれから皇さんとは仲良くなれているか」

不器用ながらも生徒のことを心配してかそう尋ねる。


「大丈夫ですよ。みんな仲良くやってます」

早稲栗が明るく答える。

周りもそれにうなずいたりと反応する。

「そうか。それはよかった」

それを聞いて先生は一安心する。


「では連絡事項だが今日で今週の学校は終わりだが、気を抜かないように。それと来週には遠足がある。月曜日にはグループを作ってもらう予定なのでそのつもりでいるように」



話し終え、挨拶が終わると担任の先生は出て行くのだった。

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