第3話

<現在>

「は〜〜〜」

 先日のことを思い出し、余計に落ち込んでしまう。

(あの時、ちゃんと名前を名乗っていたら今頃は人生バラ色だったのに…)

何度目になるかわからない後悔が自分に襲ってくる。

(なんでかっこつけたんだろう)





 頭をぶんぶん回し、気持ちを切り替えようと努める。

「いや、もう過ぎたことは忘れよう」

もちろんすぐに切り替えれるはずはない。

俺は重たい足を動かしながら自宅へと足を運ぶ。




<翌日>

朝日が目にかかる。

俺の気持ちをあざ笑うかのように雲一つない快晴だ。

「まぶしいな」

目を細めながら支度を終え学校の支度をする。

無情にも学校はまだある。





「は~~」

教室に入るなり盛大に机に突っ伏す。

「おいおい、今日も元気ないな。昨日といい大丈夫か」

様子を見かねた友人が心配してくる。

「別に、、ただ受け入れたくない現実に落ち込んでいるだけ」

顔も上げずに返事を返す。

「元気出せよ。それに今日はとっておきのいい知らせもあるんだからよ」

「いい知らせ?」

何かあっただろうか

俺が質問すると友人は笑みを浮かべ、

「なんとうちのクラスに転校生が来るそうだ!!」

「へーーー」

「反応薄いな!?」

俺の反応が意外だったのか友人は驚いたようにこちらを見る。


俺からしたらどうでもいい話だ。

「期待させるからもっとすごいのかと思ったよ」

「ならどんなのがお望みなんだ」

先ほどの反応に納得がいかないのか不満げに友人が聞く。

そうだな…





「タイムマシンができたとか」

「なるほど、、、てそんなことあるわけないだろ!!」

見事なツッコミだ。

「冗談だ」

「おいおい、本当に大丈夫か」

(いやでも本当にタイムマシンがあったらな~~)

現実逃避をする。






ガララ

友人と雑談をしていると先生が入ってきた。

「席につけ。出席を取るぞ」

いつも通りのホームルームが始まる。




「今日はお前らにいい知らせがある」

一通り話し終えると唐突に言う。

(どうせさっきあいつが言ってたことだろう)

興味がないと言わんばかりに睡眠の態勢に入っていく。

「うちのクラスに転校生が来ることになった。しかも普通の転校生じゃないぞ。なんと今話題の皇財閥のお嬢様だ!」


ガタタっ

(今なんて???)

唐突に聞こえてくる言葉に先ほどまでの眠気はなくなる。



「入ってきてくれ」

「はい」

先生が促すとある一人の女の子が入ってくる。

「初めまして。私の名前は皇桜華といいます。今話題になっている皇財閥の長女です。突然の転校ですがよろしくお願いします」

彼女は恭しく頭を下げる。

その様は誰もが彼女がお嬢様だと再認識することとなった。

(嘘だろ…)

「うおおおおお」

「顔小さっ」

予想外の人物の登場にクラスが浮足立つ。

「静かに」

あまりの騒々しさに先生が仲裁に入る。

「色々言いたいことがあると思うが、あまり困らせないように。それと皇さんの席は、、、一番後ろの席だ」

「はい、分かりました」



 彼女は先生に言われた席に歩いていく。

「やったーーー」

「そんな嘘だろ…」

あるものは喜び、またある者はこの世の終わりかのように絶望する。

「隣の席の人は彼女に学校の中でも案内してやれ。以上だ」

先生はこれで話は終わったようで教室を出ていく。


先生がいなくなったことで、よりクラスは賑やかになっていく。





「予想外の人物だったな!」

友人も興奮気味に前の席から俺に話しかける。

「え、これって現実だよな?」

俺は夢でも見ているのかとその光景を信じられずにいた。

「何言ってんだこいつ」

友人はあきれながらこちらを見る。

「それにうらやましいぜ、さっそくあのお嬢様とお近づきになれるなんて」

「?」

「先生も言ってたろ。学校を案内してやれって」

(いやいや、なんで俺が!?)

俺は友人の言っている意味が分からなかった。

「なんで俺が…」

そこまで言ってようやく気付く。

そう、なんと俺の席の隣が皇桜華だったのだ!







***

お読みくださりありがとうございます。

1話に誤字があったため修正しておきました。すみません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る