第2話 後悔
「さっきはあの子を助けることができてよかったなぁ」
あのセリフを言えたことに満足して本屋に行くことも忘れ、すぐに家へと帰ってしまった俺は自室にてネットサーフィンをしながらふとそんなことを考える。
(あんなにかわいいなら名前だけでも聞いておけばよかったか)
男はそんなことを後悔していた。
「ん?」
自分に酔いしれているとふと一つの記事が目に留まる。
そこには、、、
とある企業のお嬢様を助けた人を探していると書いてある。その企業は誰もが一度は聞いたことのある名前だ。本日の夕方頃、路地裏で不良に絡まれているところをある男に救われたとのこと。男の見た目は若く、顔も無難、身長も平均。その男を見つけたものには1千万、その男には1億払うという旨が書いてある。
(桁が考えられんな)
俺は他人事のようにその記事に目をやる。
(ふ~ん、俺と同じようなことをする人が世の中にもまだいるんだな・・・でもそんなに金がもらえるのに立ち去るなんて馬鹿だな~~)
俺は名前も顔もわからない探されているという男にむけて言う。
「いただきます」
お腹がすいたため、遅めの夕飯を取る。
「うん、今日もおいしいな」
今日の晩御飯はお手製のハンバーグだ。自分の腕前に満足しながらテレビをつける。
『今日は今話題になっているあの企業のお嬢様に電撃インタビューすることになりました』
ん?
これってさっきの…
テレビをつけると先ほど目に留まったあの記事について詳しく報道されていた。やっぱり金額が大きいからな。俺は一人納得して味噌汁をすする。
『では、突然ですみませんが。よろしくお願いします』
『はい、皆さんこんばんわ。私は皇といいます。みなさんご存じの皇財閥の長女です』
ブーーーーー!
突然の顔に俺は味噌汁をふく。
な、、、なんでテレビに彼女が移ってるんだ!?
そう、今テレビに出ているのはつい先ほど俺が助けた少女だった。
(まさか本物のお嬢様だったとは・・・)
その事実に俺は驚きを隠せないでいた。
いつの間にか食べることを忘れテレビにくぎ付けになる
『今日はあることについてお話ししたくて急遽テレビに出演させていただきました』
礼儀正しく、そして聞くものを落ち着かせる物静かな声で彼女が言う。
『記事にも取り上げられていますが、今日の夕方あまり好ましくない方に絡まれていたところ、とある一人の男性が助けてくださりました。誰もが傍観しているなか、その方は一人、私を助けてくださりました。その方も怖かったと思います。私はその勇気のある方にお礼がしたかったのですが『名乗るほどのものではない』と立ち去ってしまいました。なんてお優しい方なのかと心を打たれた私はこの方を探しています』
それは心からの懇願だった。
(そんな大それたことではないだろうに。俺はただあの状況に腹が立っただけだ)
俺は落ち着きを取り戻しお茶をすする
『あの記事の情報は事実ということでしょうか』
『はい、事実です。私を助けてくださった方を見つけた人には1千万、助けてくださった方には1億円お支払いします』
ブーーーーーー!
本日2度目にふいた。
「ま、、マジか」
『今のところ多数の発見報告、本人だと名乗る人からの連絡が後を絶ちませんが残念ながらすべて誤情報でした・・・』
残念な面持ちに彼女はなる。
『で、ですがきっと見つかりますよ』
彼女の様子を見かねた記者が励ましの言葉を彼女にかける。
『そうですよね!』
その言葉にお嬢様の顔はぱっと花が咲いたように明るくなる。
『あの優しい方もどうかこのニュースを見てくださっていると信じています。どうかご連絡ください』
最後にその言葉を残しテレビが切り替わる。
(そうか・・・そんなに俺のことを探しているのか)
あそこまで取り上げられれば否応なしに探している人は俺だと分かる。
(なら、早速連絡してみるか。これは別にお金が欲しいからではなく、ただ彼女が俺を探しているようなので教えてあげるだけ。。うん)
誰に言うわけでもなく俺はそう心の中でつぶやく。
「よし、善は急げだ」
早速スマホを取り出し電話をかける。
ガチャ
『はい、こちらは皇財閥のものです。ご用件は何でしょうか?』
『ええと、今皇財閥のお嬢様が探している人ってたぶん俺なんですけど…』
俺は緊張しながら要件を言う。
『かしこまりました。記事や先ほどのニュースに取り上げられたことによりただいま似た類の電話が殺到しています』
『えっ、そうなんですか!?』
『申し訳ありませんが事実確認もする必要があり多大な時間を要しています。そのため、只今順番待ちということになっています』
『そ、それって大体どれくらいですか?』
『およそ20万人でしょうか』
『に、20万!?』
『はい、どうやら金額が金額なため、海外からも連絡が来ています』
『さすがに海外はないでしょう!』
『ですが、お嬢様のご意向は絶対に見つけることなので見逃しがないように…』
『な、なるほど』
『ですので順番が来るまでお待ちください。順番が来ましたらそこから事実確認などもしていくので』
『それってどれくらいかかりますか?』
『そうですね。約2年ほどでしょうか』
『に、2年!?』
『まあ、そこまで続くか分かりませんが…おっと、失礼しました。では順番が来ましたら折り返し電話するので失礼します』
ブツ
ツーーー、ツーーー
電話が切れる。
え、、なんで??
本人だよ??
それなのに2年も待つの???
俺はその事実に膝を落とす。
(どうしてこうなった)
俺は自分の行動を振り返ってみる。
すると一つのことにたどり着いた。
「あの時名乗っておけばよかったーーーーー!!!」
無音の部屋に響く。
自分のしたあのセリフに酔いしれたことが嘘のように心の底から後悔していた。
***
遅くなりました。
何とか今日中に更新できました…
次回の更新は明日を予定しています。
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