第27話 タイムリープ

 俺は駅のホームで、陽菜のSNSを開いた。するとさっきの写真と共に”家出少年を駅まで送りました”とアップされている。

 陽菜のSNSをそのまま見て行くと、蓮も沢山写っていた。どうやらドラマの宣伝らしい。その他、映画やCMの告知など、まめにしてある。忙しいはずなのに凄いなあと感心した。

 そう言えば蓮もライブの告知、テレビやラジオの告知もマメにしていたっけ。ファンの子と交流したり。

 なのに俺と来たらアカウントもなし。

 ライブでも思ったけど、本当俺、何もしていない。蓮が怒っても仕方ないよ。陽菜と蓮が付き合う訳が分かった。彼女は仕事に一生懸命取り組んでいる。それなのに、俺は…。


 俺は蓮に謝りたくてたまらなくなった。

 蓮が仕事で大変だった時、俺は何にもして来なかった。やる気ないって思われても仕方ない。


 俺は蓮にまたメッセージを送った。

 ごめん。


 そして家出をやめて、きちんと事務所や神谷さんと向き合う事に決めた。


 

 決心をして、家に帰ったものの、翌日からメッセージや着信が止んだので俺はまた問題を棚上げした。

 あの夜の、蓮へのメッセージはまだ未読のまま。いよいよ蓮が俺をブロックしてる説、濃厚になって来た。

 今までも、蓮に頼ってばかりで俺はRELAYのために何もして来なかった。何もしないどころか、あろうことか目の前で眠ってしまったのだ。

 ブロック解除どころか許してもらえる気がしない。落ち込んだ俺は少し、現実から逃げたかったのだ。

 

 現実から逃げるため、俺は蓮が楽しみにしてくれているらしい、メルリの歌チャンネルの二曲目を先に作ることにした。

 

 二曲目は一曲目より慣れていたから制作はスムーズに進んだ。けど曲だけで五日間、かかりっきり。MIXして動画にして、全部で一週間。作り終えた後は達成感があった。

 


 新曲をアップする前に、俺は蓮にダイレクトメッセージを送った。


 “今日二曲目アップします。是非聴いてください。”




♪タイムリープ


階段を踏み外したように

転げ落ちた

悪いほうにばかり向かっている気がする


誰のせいでもない

僕のせい

君にあいそをつかされるまで

ぼんやり日々をすごしていた

僕のせい


長い階段を一緒に駆け上がってる

僕はそのつもりだったけど

君は一歩も二歩も先を行き

難解なダンジョンへ飛び出していった


階段を踏み外したら

転げ落ちて

いつかタイムリープする

奇跡があるんじゃないか


その先で

ハッピーエンドになる

未来があるんじゃないか


夢をみさせてよ ダーリン

ハッピーエンドになる

未来があるんじゃないか?


タイムリープしたら あの日過ちを

全部やり直して

言えなかった”好き”を伝えられる


そう信じないとこれ以上進めないんだ

僕の手を取ってよ ダーリン

ハッピーエンドになる

未来を夢見て つかまえていて




 


 ショート動画も作成して、配信した。

 

 蓮は忙しいからショート動画の方が見やすいかもしれないし。



 二曲目の配信が終わって、俺はいよいよ言い訳ができなくなった。

 阿部マネージャーに連絡して、話し合いをすることになった。



 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る