短編「亡骸ノ雲行」(完)

不可世

一話完結

美しい水面に

雫を落とした

波紋は伝わり

遠くまで私の孤独を運んだ

この先、生きる、現実にも

確かに波紋はあって、

私は遠ざけられた

波風を立てる者は要らないと

そう、水面を出て行けと言われた


それは、この青い、地球に

居場所を失う事を意味していて

私はどこへ行っても

唾をかけられた


もうこれ以上

涙が出ないように

孤独で場を暗くしないように

そう耐えるけど

涙は溢れて

痛くて辛くて


傷跡をえぐられ続けて

もう意識を失い

昏倒するように眠る

泥まみれの制服

血の滲んだ靴底


夕暮れの帰り道だけが

身に染みて

淡い光にそのまま透過して

消えたいと

思ってしまう


この痛みだらけの

不当な巡り合わせを

螺旋のような呪縛の日々を

ただ脱したいと


そう、身を潜めて

ただ死を待ち望んでいた


でも握ったナイフに

涙がこみ上げて

死ぬ逃げ道も行けなかった


そうして

閉塞的に扉の内側で

全てを拒んで

せめて、関わらなければ

心は楽になると思ったけど


先生は押しかけ

親は声を荒げ


息が出来ないほど

過呼吸になって

もう、誰も来ないでよって

ほって置いてよって

それだけでいいのに


どこからも

うるさいほど

引っ張られて

苦しくて、もう、どこにも

安らげる場所が無くて


圧迫感に

苛まれて

汚染され続けていく


このまま

消えてなくなりたくて

誰とも触れたくなくて


でも死ねないから

いっそ、殺してくれればいいなんて

そう、思っている。


ねぇあなたなら、私をどうする

なんてね・・・

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