六.これを運命と言わずして何と言うんだ!(3/3)

 俺の中に「結婚」の二文字が浮かぶようになったのがいつ頃なのかは、定かではない。

 ミアプラ人についての情報を必死で掻き集める中で、ミアプラ人も人間と同じように子を産み育てるという事を知った時からだったかもしれない。とにかく、中学生の時には既にキルステンとの結婚を夢見るようになっていたのだ。


 親の猛反対を押し切って高校卒業と同時に海保に就職し、厳しい訓練を乗り越え、現場経験を地道に積んで。そうして、27歳にしてようやく念願の対バージェス特殊機動救助隊に配属されたというわけである。

 しかも、俺の想い人であるキルステンの相棒バディとして。


 当然、俺は舞い上がった。そして、冷静になって振り返ると愚かにも程があるのだが、着任初日に想いの丈をキルステンにぶつけてしまったのだ。



『――そういうわけだ。キルステン、俺と結婚してくれ』


『ごめんないさい、男性からのそういう申し出は全てお断りしているの』



 もちろん、そんなことで心折れる俺ではなく、まずは同僚としての信頼関係構築に務めることにしたわけである。



「……これ、言おうかどうか迷ってたんだけどさ」



 仙崎が、缶コーヒーを飲みながら微妙そうな顔で俺の目を見る。



「鮫島君のキルステンを見る目が、すごくギラついてるのよね。あんな欲望丸出しじゃ、いずれキルステンの方から異動願いを出されるようになるわよ」


「……えっ」



 その時、館内放送のスピーカーから緊急招集の指令が流れた。俺は急いでドリンクを飲み干してゴミ箱に捨てると、仙崎に暇を告げる。



「教えてくれて助かった! 以後、気を付ける!」


「うん……まあ、頑張ってね」



 俺は仙崎の指摘を何度も噛み締めながら、キルステンの元へと急いだのだった。

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