廊下
磐長怜(いわなが れい)
廊下
廊下の先から
西陽に時間が負ける瞬間がある。
東側の端からはみんな影絵に映る。
上履きの薄いゴムの音。
外で陸上部がタイムを測っている。
先生は部活と添削の時間、見回りにはまだ早い。
教室から彩度の落ちた笑いが聞こえる。
笑いすぎて帰りどきを僕らは逃した。
ふと訪れた沈黙は、地続きに大人になってしまう不安と哀しみに満ちている。
そして廊下にはだれもいなくなる。
教室から出て、影絵の君が近づいてくる。
いつもみたいに。
いつもみたいに?
顔が見える前に、僕は目覚めてしまうのが分かっている。
喉でつかえた名前は口にのぼることがない。
やるせない郷愁に目眩がする。
廊下 磐長怜(いわなが れい) @syouhenya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます