廊下

磐長怜(いわなが れい)

廊下

廊下の先からだいだいが長く差し込んでいる。

西陽に時間が負ける瞬間がある。


東側の端からはみんな影絵に映る。

上履きの薄いゴムの音。

外で陸上部がタイムを測っている。

先生は部活と添削の時間、見回りにはまだ早い。

教室から彩度の落ちた笑いが聞こえる。


笑いすぎて帰りどきを僕らは逃した。

ふと訪れた沈黙は、地続きに大人になってしまう不安と哀しみに満ちている。


そして廊下にはだれもいなくなる。


教室から出て、影絵の君が近づいてくる。

いつもみたいに。

いつもみたいに?

顔が見える前に、僕は目覚めてしまうのが分かっている。

喉でつかえた名前は口にのぼることがない。

やるせない郷愁に目眩がする。

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廊下 磐長怜(いわなが れい) @syouhenya

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