第51話 最下位層のボスは…

 ボス部屋に入る前にパーティーメンバー全員、ポーションやマジックポーションで体調を全回復させる。

どうにも嫌な予感がするのだ。

フェンリル様も言っていたし…。

ラナに部屋に入ったらすぐにパーティー全員に補助魔法をかけるように指示した。

5階層のボス部屋の重い扉を開ける。


そこで待っていた者は…黒きドラゴン…ヘイロンか

(ヘイロンはここまで出て来た魔獣とは何の関係もありません。)

「良く来たな、いや辿り着いたと言うべきか」

静かにしかし威厳のある声が響き渡る。

「貴方はヘイロンですか?」

僕の問い掛けに

「そう呼ぶ者もおるが名は特にない、好きに呼ぶが良い…?ほ〜お…」

黒龍はヨルムを見つけ

「お前が何故にここに居る、ヨルムンガルドよ」

「私は私の伴侶となった者と共にあると決めたのです」

「ほ〜お、伴侶とはその人間のことか、生きておると面白いこともあるものよのう」


笑っているのか?龍の表情は読み取れない。

「して、どうする。我を倒すか?」

「貴方に恨みはありませんがこの迷宮を踏破します」

この一連の会話の間にラナはメンバー全員に補助魔法をかけ終わり、マジックポーションを飲んで魔力も全回復していた。

僕も会話が終わるやいなや頭の中に浮かぶ強化系のスキルと相手の戦力ダウンのスキルを有効化する。

しかし相手はヘイロンだ、効かないダウンスキルもあるようだ。


僕は瞬間移動でヘイロンの後ろへ移動し渾身の力で首を落としにかかるが…流星剣はその恐ろしく硬い鱗に跳ね返される。

呆然としている僕をヘイロンが振り返っている隙に

マリンが殴りかかるが…

「いでっ!」

デコピンほどにしか効いていないようだ。

僕の未来視が仲間のピンチを伝える。 

「ラナっ!右へ跳べっ!」

とっさに右に跳んだラナの元いた場所をヘイロンが

吐いた炎が通り過ぎる。

微かな記憶の黒龍の弱点の光属性にかけてみる。

ホーリーブレード!

剣に光属性の魔力を纏わせ斬りかかる。

僅かにヘイロンの身体にキズをつけることに成功した。

「弱点は光属性だっ!」

その声を聞いたメンバーは

「ホーリーアロー!」

とラナが光の矢を放つ。

「ホーリーウェイブ!」

シンシアが光の上級魔法をぶっ放す。 

少しずつだがヘイロンにダメージを与えられた。

「僅かだが効いているぞ、このまま攻めろっ!」

ヘイロンも体力を回復しようとするが、僕の魔力封印が効いていてほんの僅かしか回復出来ていない。

とにかく皆んなで光属性の攻撃を続ける。 

マリンとヨルムは光属性の攻撃を持っていないので

仲間の守りに徹する。

ジワジワとヘイロンの体力を奪っていく。

強い…もう1時間は戦っている。

鑑定でアナライズするとヘイロンの体力が10%に

なった。

欲しい…ヘイロンに絶対隷属のスキルをかける。

だが、効かない。

残り9%…まだ効かない。

残り7%…まだ効かない。

残り5%…これでもまだ効かないのかっ?

残り3%……、

「みんなっ!止めだ止めっ!」

仲間に攻撃を止めさせた。

その声にヘイロンは不思議に思い僕に問う

「何故止める?お前達の勝ちはもうすぐだぞ」

僕は溜息をつきながら答える。

「出来れば貴方を従わせその強さが欲しかった。

でもソレは無理そうだ。殺してしまうには惜しいと思ったのです」

黙って聞いていたヘイロンは一粒涙を落とし、

「我は生まれてこの方そんな言葉を…そんな想いを向けられたのは初めてじゃ、貴方になら従おう」 

ヘイロンの身体が光輝く…。

ヘイロンの力が身体に入ってくる。 

「我が主よ、これからよろしくな」

頭の中にヘイロンの声が響いた。

どうやらヘイロンを使役出来たようだ。

ステータスを確認すると各パラメータが2倍になり

称号には黒龍の主とある…やったね。

レベルが1つ上がってついにレベル30だ。

レベルが上がって増えた能力は

【空間転移】…1度行った場所なら瞬時に移動OK

再び頭の中にヘイロンの声が響いた。

「主よ、間もなくこの迷宮は崩れさる。早くこの迷宮から出るのだ」

折角なので空間転移を使おう!

仲間と輪になり手を繋ぎ、頭の中にフェンリル神殿の広間を思い浮かべた。

「テレポート!」

その場からヒカリ達の姿は消え、次の瞬間にはフェンリル神殿の広間に現れた。

フェンリル様が

「よくぞ戻られた、勇者よ」と笑う。

どこからともなくド◯クエの音楽が聞こえた気がした。




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