第40話 任命式典で…

 あくる朝、任命式に出る為にギルド本部へ出向き

用意された礼服に着替える。

式典自体は王宮内にあるホールにて行われる。

3人で馬車に乗り王宮へと向かう。

「いよいよですねご主人様、緊張してませんか?」

「いや、特にはね。別にゴールドランクにこだわりはないからね」

「ダーリンはそんなちっぽけじゃない!」

「ありがとうマリン」


ホールに付き自分達の席に付き式典の始まりを待つ

二人は僕の横に緊張の面持ちで並んで座っている。

来賓席にもぞくぞくと人が入ってきた。

最後に貴賓席にその男が入ってきた。

「第四王子グスタフ様のご入場で御座います」

偉そうに入ってきたその男は席に着くなりふんぞり返り辺りを見廻した。

そしてその視線が僕の横で止まる…。

「おおう、エルフがいるではないか」

(なんだコイツ?)

「おい、そこのエルフっ、俺の側室に加えてやろう、今よりも良い暮らしが出来るぞ。どうだ?」

(絶対に頭が悪いなコイツ)

慌ててそば付きの者が説明する。

「あの者は本日のゴールドランク任命されます冒険者様のお連れの方にございますゆえ…」

「その冒険者とは?」

「私ですが、何か?」

「金はたんまりやる。そのエルフを譲ってくれ」

「謹んでお断りいたします」

コメカミをピクピクさせているマリンを抑えながら

答える。(勘弁してくれよ)

「この第四王子の頼みを断るだとお!それでは

ゴールドランクの任命は認めんぞ!」

「では、いりませんので帰ります。二人ともとっとと帰るぞ!」

立ち上がり二人を連れて帰ろうとすると

「待って下さい、ヒカリ様〜!」

とギルド総括のジゼルが僕の足に縋り付く…。

「この任命権に王子の権限は及びません。あくまでもギルドが貴方様を任命するのです」

「あのバカは?」

「無視して進めましょう」

第四王子を無視しているとブチ切れ出して

「おい、衛兵よ、そのモノ達をつまみ出しエルフを私の元につれてこい!」

この勘違い野郎!僕が抑えているマリンの手を離したら確実に死ぬぞ

本当にどうしてくれようか?と思案していると

「誰の許しを得ての暴挙じゃグスタフ?」


深い怒りを感じさせる声がホールに響いた。

「お、王様!?」

横にいたジゼルが膝を付き頭を垂れる。

さっと、僕もそれに倣いマリンとラナにも従わせる

「ち、父上!?」

「お前はこの勇者ヒカリに何をしたいのだ?」

「ゆ、勇…者?」

「昨晩、ワシの枕元に女神フローラ様が現れこう告げられた。明日、この城に現れる冒険者ヒカリは

いずれ魔王を倒す勇者たる人物です。どうか支援をして上げて下さいと…」

グスタフは恐れおののく。

「この国を魔王の手から救わんとする勇者の邪魔をするとは国賊と同じ事、近衛兵よ、このオロカモノを捕らえ牢に監禁せよ!」

「父上、これは間違いですう、どうか許し…」

「ええい、早く捕らえよ」

屈強な近衛兵に両脇を固められグスタフは連れて行かれた。


一堂騒然とした中、王様が僕に近付く

「本当に愚息が失礼をしたな」

王様が僕に謝ろうとしたが

「王様、どうかおやめ下さい。僕はまだ一介の冒険者に過ぎません。魔王を倒すにももう少し時間がかかるのです」

それでもなお謝ろうとする王様は

「それではそなたも気が済まぬだろう?」

優しく問いかける。

「いいえ、すでに王様のお気持ちは頂きました。

先程の出来事も取るに足らない事です」

「何と心の広い…何か困った事があったら来なさい必ずや力になろう」

肩に置かれた王様の手に強い意志と優しさを感じた

その後、任命式はつつが無く進み無事にゴールドランクの冒険者となった。

僕は女神様の優しさにも感謝する。

(ありがとうございますフローラ様!)

(いいのよヒカリ、あのバカ王子がいることはわかっていたからね。これからも頑張ってね…)

さて、任命式も終わったしとっとと帰りますか。

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