第34話 最奥で待っていたモノは…

 焼き肉パーティーを終え、迷宮攻略に戻る。

後は4層のボス部屋だ。

部屋に入るとベヒーモスが身構えていた。

ラナと連携で倒そうと思っていると、耳をつんざくような咆哮が聞こえた。

もう1頭いた、キマイラだ…。

「マリン、キマイラを頼めるか?」

「キマイラも美味いかな?」

「……。」

きっとキマイラの魔力を感じても余裕なのだろう。

僕はベヒーモスにスノーブリザード当てる。

凍りつき動きが止まった所で四肢を切断し、ラナに

仕留めさせた。

マリンの方を見るとキマイラをタコ殴りにしてもう虫の息だ。

絶対隷属でテイムしようかと思ったが、マリンに簡単にやられてるしなぁ…。

もっと強いモンスターをテイムすることにした。

キマイラは僕が遠慮なく仕留めた。

5層目に下りてみる…?

今までの階層とは明らかに違う、空気が重いというか威圧感が全身にかかる。

ビリビリと感じる何かに流石のマリンも無言になっている。

それにこの階層にきてから結構進んだが、モンスターに1度も出会っていない。

何とも嫌な予感がして引き返そうか悩んだ時、

そいつはいきなり話し掛けてきた

「魔族にハイエルフ、それに人間…?もしかして

 お前はこの世界の者ではないな?」

ズンズンと腹の底に響くような重苦しい声にラナも

マリンもガタガタと震えだした。

「そういう貴方は何者なのですか?」

僕は勇気を出して聞いてみた。

「フファファ、人に名乗るのは5千年ぶりだな、

 我が名はヨルムンガルド」

うわっは〜、ちょ〜ヤバいヤツ引き当てたっぽい、

確か前世にも同じ名前の大蛇がいて、神の子で神獣でラグナロクとか絡んでたヤバいヤツ…。

「あ、あの僕ら間違えてココに迷い込んだみたいで…」

「そんな事は我には関係ない、5千年振りの来客だ。我を楽しませろ」

そう言いながらヨルムンガルドが姿を現した…。

デカい、シャレにならない。

ラナは気絶した、マリンは僕の後ろに隠れてる。

僕も女神様から勇気百倍の元を施されていなかったらやばかったと思う。

「楽しませろと言われても…。そう言えば5千年前に誰か来たのですか?私達の言い伝えでは3層以降は誰も来たことが無いハズなのです…?」

「そんな事は知らん、5千年前に勇者とか言うのが来ていきなり斬りかかってきたから喰った。そいつがココに来たことを誰も知らんのじゃないか?」

「そうかもしれませんね…」

次に喰われるのは僕達かもしれない…。

「さあ、早く我を楽しませろ!」

ついに凄んできたよ、どうすれば…。

腹踊り?あっち向いてホイ?……絶対喰われる。

ふと、思いついて聞いてみる。

「ヨルムンガルド様は私の様な人間の姿に変わる事はお出来になりますか?」

「たやすいことだ、ソレっ!」

白い煙が立ち込めたあと中性的な大柄の人が現れた。

「それでは僕とこれで勝負をしましょう」

そう言って一か八か無限収納から自作のリバーシを

取り出した。

「何じゃソレは?」

首を傾げるヨルムンガルドに詳しくルールを説明する。

「なるほどのう、簡単そうではないか」

フッフ、初心者が舐めてかかると大怪我するよ。

黒の先手を譲り対戦を始めると……盤面はほぼ真っ白に…。

「ぐぬぬ…、もう1回だっ!」

その後も僕が勝ち続けると

「クソう、何故勝てぬのだ!」

流石にちょっと可哀想になってきたので、ちょっとしたコツと四隅を取るようにすることを教えた。

「ふぬう〜、それでも勝てぬのう…」

「私はコレを何年もやってましたからね」

「私もやっていいですか?」

気絶から目覚め先程から対戦を見ていたラナが声を

かけてきた。

ヨルムンガルドに確認するとOKらしいので

「じゃあ僕は晩御飯の準備をしますね」

そう言ってラナと代わった。

晩御飯は何にしようかな…?ミノタウロスの肉は

全部食べちゃったしなあ…、遺跡で狩ったグレートボアの肉があったな…。

お鍋にありったけの脂身を入れて油を作る。

次にパンを取り出しファイアとウインドの魔法を混ぜた魔法で乾燥させ、粉々にしてパン粉を作り…

ここまで来たらもうわかるよね。

マリンは何が出来るのか楽しみでずっと横に張り付いている。

後はキャベツを千切りにして…揚げたトンカツを

添えて出来上り。

ソースも自家製なんだけど、ソースって前世じゃ簡単に手に入ったけど、作るとなるともう大変…。

まず、醤油から作らなきゃいけなかったし、シナモンとかクローブとかナツメグに近いものをミラノさんに聞きながら…本当に日本にいた時は恵まれていたと身に染みましたよ。

料理が、終わったので声を掛けるとラナとヨルムンガルドの勝負は勝ったり負けたりでいい勝負だったようで、ヨルムンガルドの機嫌も上々だった。

「人間はこの様な物を作って食すのか」

そうだよね、貴方は基本ナマで丸呑みですもんね。

ヨルムンガルドは恐る恐るトンカツを口にした…。

「…………………。」

えっ、えっ?口に合わなかった?

ヨルムンガルドはプルプルと震えだした…。

あちゃ〜っ、やっぱりナマの肉にすれば…。

「我は…、我は1万年前に神にこの地に追いやられて今日まで1人でいることを何とも思わなかった…しかし、この様な美味いものを食わせてもらい、楽しく遊ぶことを知った…、この先一人では耐えきれぬだろう」

そう言うヨルムンガルドの頬には涙が流れていた。

「我は決めた。神に許しを請い、この地より出ることを…そしてソナタ…?」

「あっ、すいません。ヒカリと申します」

「そうヒカリと共にあらんことを!」

「「「え〜っ!!!」」」

「ちなみに我は性を決めておらなんだが、女になることに決めたぞ。その意味はわかるな?」

再び「「「え〜っ!!!」」」

ヒカリのハーレムにまた1人加わることになりそうです。


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