第14話 死を覚悟する時

 大きく開けられた穴から顔を出したのは…。

アレは…まさか…オークキングか。現れたその巨漢はニャリと笑って見える。すぐ目の前にいたシンシアさんに襲いかかる、あまりの恐ろしさに硬直する

シンシアさん…。間に合えっ!瞬間移動の能力で彼女の所へ移動してすぐさまロックウォールを唱えて

怯えるシンシアさんを抱えオレガノさんに引き渡す

ロックウォールは紙のハリボテのように簡単に壊されてしまった。

背後ではまだボルノさん達がオークジェネラルと戦っている。

ここで僕がオークキングを殺らなきゃ僕は、いや僕等は確実に殺されるだろう。

出来る出来ないじゃない、やるしかないんだと腹を決めて、作戦を考える。

…あれしかないな。

 まず、オークキングの足元の土でロックウォールを作り、足場を悪くさせて注意を下に向けさせた。

すぐさま走り出し、勢いをつけたまま瞬間移動してオークキングの目の前に現れ、その左目に剣を突き立てた。なんとか半分刺さった剣を更に押し込もうとした所を思い切り掌底で突き飛ばされ横穴の壁に激突する。身体のあちこちの骨が折れたか激痛が走り今にも気を失いそうだ。

なんとか歯を食いしばりシンシアさんに叫ぶ


「シンシアーッ!!目に刺した剣を狙ってファイ 

 アローを撃ってーっ!!」


 その叫びに我に帰ったシンシアさんは続けざまに

魔法を放った。

オークキングも手で払ったが何発かはすり抜け刺さった剣に直撃した。

その衝撃と剣に伝わる熱に悶え苦しむオークキング

早く、早くトドメを刺さなければ…。

僕がシンシアさんに叫んだ直後、レオンさんが僕に駆け寄りすぐさま(ハイ・ヒール)をかけた。

何かが染み込むような感覚のあと痛みは取れなんとか動けるようになった。

とにかく早くトドメを刺さなければいけない。

無限収納から以前使っていた銅の剣を取り出して

もう一度走り出し瞬間移動して今度はオークキングの右目に剣を突き刺す、今回は掌底がくる前に素早く剣の柄を思い切り蹴り上げその場を離れた。

蹴り上げた剣はオークキングの頭を突き抜けた。

シンシアさんはありったけのファイアアローを放った、両目の見えないオークキングに防ぐ手立てはなくその全てがぶち当たる。

暫く悶え苦しんだ後、ビクビクと痙攣しやがて動かなくなった…鑑定でオークキングの死を確かめた。

オークキングを倒した安堵から身体の力が抜け、その場に膝をつくと、シンシアさんが駆け寄り

僕を後ろから抱きしめて


「貴方がいなかったら…、貴方がいてくれたから

 私達は助かった…ウウウッ…」


そう言って泣き出した。

オークジェネラルを倒して戻ってきたボルノさんも


「まったくその通りだな、この借りは忘れないぜ

 アリガトなヒカリ」


そう言って僕の頭をワシャワシャと乱暴に撫でた。


予想外の強敵との遭遇に疲れ果てた僕達はすぐさま

街に戻ることにした。

疲れてはいたがなんとか山程ある魔石や習得物を皆でかき集める。取り敢えず魔石や習得物は僕の無限収納に収める事になった。

帰り道の道中ずっとシンシアは僕の手を何も言わずに握っていた。(よっぽど怖かったのだろうか?)


そうそう、今回の戦いで僕のレベルは…

なんと!レベル10になっていた。

オークキングの討伐がかなり有効だったのだろうな。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る