第13話 渓谷の魔物

 意気揚々と渓谷へと向かう僕と『ノクチの光』の

メンバー達は連携して次々と魔物を倒していく。

後から思えばちょっと調子に乗っていたんだと思う

その時は誰も気付かなかったけれど…。


「ようし、今日はヒカリもいてなかなか調子がイイ

 な、もう少し奥に行ってみるか」


ボルノさんの一声で先へ進むことにした。

初めて入る領域に差し掛かったそれはおきた。


「ゴゴゴッ!!ドゴーンッッ!!」


背後の通路が大岩で塞がれてしまったのだ。

慌てて魔物探索をかけると囲まれている…。

両脇の崖の上に沢山の魔物の赤い点が散らばって

いる。このままではジリ貧だ。

咄嗟に(ロックウォール)で上からの攻撃に備える

するとボルノさんが少し先にある横穴を見つけた。

他の選択肢はない、急いでそこへ避難する。

 不気味に感じる横穴の奥には今の所、魔物の影はない、が一応念の為に(ロックウォール)で塞いで

おく。


「正面からの攻撃なら大勢の魔物でも中級魔法で

 かなり減らせます。」


と、ウィザードのシンシアさんが言う。

もう、魔法が使えることを隠しておけないな。


「皆さん黙っていてすいません。実は僕も攻撃魔法

 も使えます。初級ですけど…」


「そんなの気にすることないわ、普通に奥の手は隠

 すものよ」


シンシアさんに肩を叩かれる。

それから数度押し寄せる魔物の群れを2人の魔法で

殲滅していく…。密かにシンシアさんにも【魔力強化】をかけておいたが、訝しげな目で見られたので

多分バレてるな。

流石に群れのオークを倒したので僕のレベルも2つ上がりレベル6になっていた。

新たな能力は【瞬間移動】と【即死無効】だった。

なかなかレアな能力だ。そして新たに覚えた魔法は

(エアカーテン)(ウインドカッター)という風系の魔法と(ホーリーライト)(ホーリーランス)と

いう光系の魔法だった。

回復魔法の方は(マジックヒール)(デスペル)を覚えた。つかの間の休憩になるかもしれないが、シーフのガノフさんに警戒してもらい休憩する。

僕は中級魔法の連発で疲弊しているシンシアさんに

こっそり覚えたばかりの(マジックヒール)をかけておくが、やはり回復魔法をかけたとたんに振り向かれ顔をマジマジと見られた。何も言わないが多分

彼女にはバレてるな。


 突然ガレフさんが身構えた僕もそいつの気配を感じた、ヤバいのが1匹混じった集団が近付いてくる


「ボルノさん、ヤバいの来ます」


「わかった、シンシアが魔物の集団を引き付けて

 からのデカい魔法でダメージを与えてから俺が

 斬り込む、ガレフは雑魚の掃除を任せる、オレガ

 ノはレオンとシンシアを守れ!レオンは適宜皆

 の回復を頼む」


「そしてヒカリ…、お前には遊撃を頼む!だが決し

 て無理はするな、生命大事にだ!」


 作戦は決まった、ガレフさんがハンドサインで

そろそろ魔物が近いと知らせてくる。

それぞれの位置につくと魔物の先頭、コボルトが

5匹姿を見せると続いてオークが2匹現れる、まだ

だっ、もう少し近づくのを息を潜めて待つ…。

そしてついに大物が…アレは…クソっ!

鑑定を使い確認する……オークジェネラルに間違いない…しかもレベルが20を越えている。

小声で


「最後のオークジェネラルはレベル20を越えてい

 ます。アイツのトドメは僕が刺します」


「わかった、無理はするなよ」


魔物の先頭が残り20メートル位まで近付いた時に

シンシアさんのウインドブリザードが炸裂した。

先頭のコボルトは息も絶え絶えでガレフさんがとどめを刺しに回る。オークは剣を薙いで2匹とも無事だった。その後のオークジェネラルまでは魔法は届かなかったようだ。

ボルノは左のオークに向かって行くのが見えた、僕は右のオークにウォーターバレットを放ち左目を潰した。素早く自身に付与魔法をかけ縮地でオークの

左足を薙ぎ膝をつかせることに成功した。

このオークはガレフさんに任せる。


 改めてオークジェネラルを見るとデカい、普通のオークは2メートルを越える位だがコイツは3メートルを越えるんじゃないだろうか。

一番近い僕に向かって大剣を振り下ろそうとして迫ってきた所をシンシアさんの援護の攻撃魔法が直撃

するが、僅かにたじろぐ程度で大きなダメージは無いようだ。シンシアさんが作ったチャンスを見逃さず足の腱を斬りに縮地を使うが堅い、めちゃくちゃ

堅い。まるで岩に剣を打ち付けたかのようだ。

一筋縄ではいかないようだ。

 オークを片付けたボルノさんにアイコンタクトを送り、再び僕に大剣を振り下ろすオークジェネラルの剣を寸前で躱す、その隙に後からボルノさんが首筋に剣を突き立てる。オークジェネラルの堅い身体には斬るのではなく、突きが有効と瞬時に判断した

ボルノさんの一撃は確かに効いた。

倒せる、誰もがそう思ったその時、横穴の奥を塞い

だ僕のロックウォールを何者かが打ち砕いた。

大きく開けられた穴から顔を出したのは……。

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