1-3
「単に口数の少ない方なのよ」
「口数が少ないっていうレベルでもないですよねっ。それに婚姻式を茶番で片付けられたんですよ。怒らないんですか!!」
床に座り込みながら
「お前は私に不用意に怒ってほしいのかしら。式も
「
「それはさすがに私に失礼なのではなくて?」
「事実です、真実です、現実です!」
人生における幸せの
むしろない方が多い。
確かにユディングには悪い噂しか聞こえてこない。
彼は先代皇帝の低位の
それが幸いしたのか、皇都を
結果、皇帝位についたのは
だが戦場しか知らぬ男は城の中でも剣を振るった。
目の前で
ユディングに反発している者たちが意図的に流している噂だとは思うが、彼が戦に明け暮れていたことはその通りだし実際血に
だからあまり強く否定できないのも事実なのだが。
「でもほら、今だって私は無傷で生きているわけだし」
「はあ!? 姫様が一体何をご存知なのかは知りませんが、
「肘鉄……?」
「馬車から降りる時ですよ。物凄い速さでどすっと││ そうですね、姫様はヴェールを
式の間は離れていたけれど彼女なりに情報収集をしていたようで、皇帝と補佐官の間
けれど、テネアリアにはずっと気になっていることがある。
「お前には皇帝陛下の周囲の方がおかしいとわからないものかしらね」
「どういうことです?」
「家臣が勝手をしても誰も
「いえ、全く同意できませんけど!?」
「あんな部下ばかりなのよ。むしろ陛下が無礼を許せる度量の持ち主だと思わない?」
「いや、それかなり無理ありませんか? あの皇帝見て、度量が広いなんて言う人まずいませんよ。どうせ
「もう、
「ええ? 頑固とかそういう問題じゃないですよね!?」
テネアリアは自分の
あんなに格好いいのに、一体何が不満なのかしら。
大真面目に彼女は呆れる。
理解されない
ユディングが素敵な人であることは、もはや、テネアリアの中の正義である。
「はいはい、もういいわ。ところでツゥイ。正式に婚姻式をしたのだから、これからは
「
「あら、そうなの?」
それを見たツゥイははっとしたように慌てて頭を下げる。
「――妃殿下。この後は
落ち着いたように取り繕ってすくっと立ち上がると、ツゥイはすっかりいつもの侍女の顔に
「まずは
帝国の貴族や城仕えの者たちがテネアリアを
「……」
彼女の反応に満足して、テネアリアは先ほどの
姫と英雄の出会いとしては、上々だったのではないだろうか。少なくとも無駄な血が流れることはなかったし、
れっきとした
問題は、出会って恋に落ちて――で終わらないところだ。
ユディングの周囲は常に
まずはユディングを自分に惚れさせることからだと思うけれど、さすがに
むしろ好きだと実感してしまったのはテネアリアの方だ。
これではだめだと思うものの、心はやっぱり
格好よくて、愛しい英雄様。
これでもかと彼を甘やかして、いちゃいちゃしたい。野望はどこまでも強く、果てしないのだ。
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