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無理だなんてツゥイには連呼されたけれど、テネアリアに
それは馬車が皇城に着いて、ユディングと対面してささやかなやり取りをした時から確信に変わった。
なぜならユディングは式の間中テネアリアのお願いを聞き入れ、彼女を
出会ってすぐに始まった式は
ヴェールを上げてすっきりした視界で、テネアリアの身長よりも断然高い位置から見る景色は、胸がきゅっと痛くなるほどの幸福を感じさせた。
だが、すぐにささやかな幸せは破られることになる。
「へ、陛下……奏上を聞き入れていただきたくっ」
簡単な婚姻式が済んで建物から出て
何よりテネアリアの機嫌を降下させたのは、皇帝の周囲の動きだ。ざわめきは聞こえてくるが、
回廊に冷え冷えとした風がびゅうっと
けれどユディングはいつものことなのか気にした様子もなく、真っ赤な瞳をひたりと男に向けた。
「こ、この晴れの善き日に
男の言葉が
ユディングが
「茶番は終わりだ、解散しろ」
その一言を受けて護衛の兵たちが
ユディングはそこでようやくテネアリアを下ろすと、仕事だと言って立ち去ってしまった。
一度も
自室として割り当てられた部屋に案内されると、テネアリアはほうっと
けれどツゥイはへなへなと床に座り込む。
二人きりなのでとくに
「どうかしたの、ツゥイ」
「どうかしたのじゃありませんよっ、あれの何を甘やかして幸福にするって言うんです。どこが格好いいんですか、想像以上におっかないですよ。さっきだって弁解を
「まあ、私の
テネアリアがえへんと胸を張れば、きつく
「姫様のその自信はどこから来るんですか……」
どこから、と言われてもとテネアリアは小首を
真新しい部屋の家具はいずれも少女が気に入りそうな
床に
まるで
「だってこんなに
「部屋なんてどうとでも
先ほど礼拝堂で挙げた式を思い出しながら、ツゥイは真っ青な顔で震えている。
確かに部屋を整えたのはあの油断ならなそうな補佐官のサイネイトの指示で、生贄の姫が少しでも長く
「単に口数の少ない方なのよ」
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