第4話 パワハラ上司は金が欲しい
「ふぅ。 『ようこそ』ねぇ…… 」
スーツ姿の男は、珍しく猫背気味でそう呟く。
その場で明らかに浮いているスーツ姿の男:
「ここが、本当にイシュハルという街だとして、俺は何故こんな世界に…… 」
「考えられるのは、刺されて死んで、生まれ変わった? しかし見た目はそのままか…… 」
どこか遠くを見るような目で手元のそれを眺めている羽輪原。
奥の事務カウンターでは、白い
「少なくとも、これからしばらく、この世界で暮らすことは間違いないだろう。 だとすれば―― 」
羽輪原は、向こうでレイナが銀貨を受け取っているのをチラ見して、それから視線を、近くの掲示板に移した。
「金が要る」
羽輪原は、まるでとびきり苦いコーヒーを飲んだような顔で、眉をひそめた。
◆
他の4人の騎士たちは、疲れたのだろう。 もう既に帰っている。
レイナは席に着くなり店員に何品か注文をして、それからテーブルの上に、膨らんだ布袋をストンと置いた。
「さっきの魔物がいい値で売れました! これは羽輪原さんの分です! 」
「銀貨か」
羽輪原は受け取った布袋から硬貨を1枚出すと、手のひらの上で転がしてみせた。
「それと、ここは私が
「おぉ…… それは助かるが、いいのか? 」
羽輪原はこの世界で
「もちろんです! 助けていただいたお礼ですので! 」
「そうか、では有難く」
羽輪原は銀貨を袋に戻して、それを自分の近くに寄せて置いた。
店内はわいわいと客の声が
しばらくすると、羽輪原とレイナのテーブルにも、大皿が運ばれてきた。
羽輪原は
「これは、なかなか美味いな」
「それはよかったです! 」
それを聞いてレイナは満足そうに笑う。
羽輪原は料理を食べながら、羽輪原の来た
残念ながら、他の世界からの転移については、何の情報も得られなかったが、『羽輪原の着るスーツのネクタイが、勇者の伝承に
「あまりお力になれず、申し訳ないです 」
「できれば早く知りたい、何か思い出したら教えてくれ」
「はい! 」
「ところで、さっきの建物に掲示板があったが、あそこは仕事の
「はい、その通りです。 羽輪原さんは
「
「なるほど…… 私の仕事先だと、手続きに時間がかかりますし…… 」
うんうん
「でしたら、戻って知り合いの職員に良い仕事を回してもらいましょう! 」
「伝手があるなら
常に人を疑っているような態度もレイナは気にならない。
支払いを済ませて、2人は再びギルドを訪れた。
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