第28話 二人のエルフ

喫茶店に俺とリアナは座っている。

目の前にいるのは黒髪の男性と、女の子だ。

姿を変えているらしく、変身を解こうとしたが俺は止めた。

ここはひと目がある喫茶店内だ。


「結界内とはいえ、丸見えだからな・・危険だから姿を変えているのだろう?」

「その通りだよ。オレは緑の髪で、こいつは黄緑の髪色だ。耳も長い」


「目当ての方が、早く見つかってよかったです~」

女の子は喜んでいる。


「オレはファン、こいつはエリーゼだ。見えてるのかもしれないが、オレ達はエルフだ」


「俺は浦野うらの みなと、ここではノアと名乗っている。隣はリアナ」


お互いに自己紹介をして、疑問を聞いてみた。

「浦野 雲とは誰だ?分からないから、説明してもらえないか?」

名前からして、日本人のようだし苗字が同じ・・どういうことだろう。


「ウラノは1000年前の勇者といわれた人物だ。オレと仲間だった。君のように黒髪でね。雰囲気は違うが」


「そうか」


「君はウラノの関係者なのか?」

「分からないが、そうかもしれないな」


「知っていたらでいいんだが、ファンはウラノが元の世界に帰った方法を知っているか?」


ファンの眉がぴくっと動いた。

右手で頬を触る。

「・・だいぶ昔の事だから、忘れてしまったな。すまない」

「そうか、思い出したら教えてほしい」


エルフと聞いたので、直ぐに答えに辿り着くかと思ったが、ふりだしに戻ったみたいだ。

そう簡単にうまくいかないか。

俺はファン達と別れた。


****


「王子・・いいのですか?」

「何がだ」

「嘘ついたでしょう。帰る方法知っているくせに」

「何の事だか」


王子は嘘をつくと、右手で頬を触る癖がある。

先ほど触っていたのだ。


「そりゃ、すぐ教えたらつまらないだろう」

「うわぁ、嫌われますよ~」

「バレていないから平気だ」


「宿屋に行くぞ」とオレはエリーゼと王都の街を歩く。

「まだ、帰らないのですか」とエリーゼはため息をついた。


****


「何か隠してるな・・あのエルフ」

「帰らせたくないんじゃないの?きっと貴方を気に入ったのよ」

「うわぁ、冗談でもやめてくれ・・俺にそんな趣味は無い」


「それでどうするの?図書館に行ってみる?」

「まあ、せっかくだし行ってみるか」


俺とリアナは少し離れた、ネツィー王立図書館に移動した。

受付をして中に入る。

本の独特な匂いがした。


図書館というだけあり、壁一面に本が沢山あった。

本棚も奥まで続いている。

「だいぶあるわね・・この中から探すのも一苦労ね」

「勇者関連の本を見ていくしかないな」


勇者は有名なだけあって、本は沢山あるようだが殆ど創作の物語のようだ。

「本当にあるのかしら・・・」

諦めかけていた頃、目に留まった一冊の本があった。

角がすり減っていてボロボロで古い本のようだ。

「エルフと勇者と姫」

俺は一冊の厚い本を手に取ってめくってみた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る