第24話 盗賊

ゴトゴト・・・

今日も乗合馬車に俺と、リアナは乗っていた。

珍しく二人きりだ。

前には御者の青年がいるけど。

森に入り、気持ちがいい風が吹く。


「いい天気だよな。ずっとこんな感じだといいんだけど」

「まあ、そうね。何事も無ければいいわよね」


ガタン

急に乗合馬車が止まった。

「ん?どうかしたのかな」

「まだ、随分先よね」

俺とリアナは顔を見合わせた。


「・・・・」

「・・・・」

御者のいる近くから話し声が聞こえる。

俺はそっと覗いてみた。

見ると、頭にバンダナを巻いた、盗賊っぽい感じのガラの悪そうな人物が数名取り囲んでいる。


「へへへ・・」

盗賊は薄ら笑いを浮かべていた。

これ、やばいやつだ。

短剣を出して御者に突き付けている。

「有り金、全部出しやがれ」

御者の青年は青くなって震えていた。


俺とリアナは乗合馬車から降りる。

「どうするかな・・ま、いっか」

俺は風魔法を使い、とりあえず周りにいる数人の盗賊を吹き飛ばした。

「な、なんだ」

慌てふためく盗賊。


「もしや、魔法か?」

リーダーらしき男が御者を人質に取る。

「殺してほしくなければ言うことを聞け」

御者の喉元に刃を突き立てる。

何でこういう奴らって卑怯なんだろう。


飛ばされた盗賊が数名戻ってきた。

リアナが剣で応戦していた。

「何だこいつ・・剣士か?」

キィン

剣が交差する。

「大したことないわね」

次々と襲い掛かってくるが、器用にかわして気絶させていく。


「俺が言う事聞く道理なんて無いし」

「なにっ?」

盗賊全員めがけて、炎をぶつける。

「熱っつ!」

リアナと応戦中の盗賊にも、炎が襲い掛かる。


盗賊のリーダーが御者から手を離し、その隙にリアナがリーダーの後頭部を叩き、気絶させる。


「リアナって結構強かったんだな」

初めて見る剣術さばきに、俺は感動した。


「久しぶりに体動かして、すっきりしたわ」

リアナは軽い運動感覚だったようだ。


「どうするか?こいつら」

「どうするって・・縛っておけば?」

「それいいね」

俺は倒した盗賊を、縄で縛って放置した。

乗合馬車は何事も無く進んでいく。


御者の青年が縛られた盗賊を、びくびくしながら見ていた。


「ノアって結構残酷よね」

「そう?」

「最初会った時は、虫も殺せない感じだったのにね」


盗賊は放置されて、運が悪ければ魔物に襲われるかもしれない。


「今の俺、嫌い?」

「そんなことない。冷たいところも好き・・」


俺とリアナは肩を寄せ合っていた。

ガタゴトと乗合馬車は、鬱蒼うっそうとした森を抜けていく。

もうすぐ王都に着く予定だ。


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