第25話 黒髪の・・。

「ファン様、待ってください~」

わたくしは慌てて追いかけていく。

森の外に行くのは久しぶりだ。

「エリーゼお前は本当に足が遅いな。普段から運動しないからそういう事になるんだ」

本当に王都に行かれるのだろうか?


私たちはかなり目立つ容姿をしていて、あまり外には行かないほうが良い。

特徴的なのがこの耳。

長い耳は一族の特徴である。

ファン様はエルフ族の王子である。

本人に王子の自覚があるのか無いのか、たまにこうして外に行きたがるのである。


「せめて魔法を・・」

わたくしは人間に見えるように、耳を短く見せる魔法をかけた。

「仕方ないな・・」

ファン様も自身で耳を短く見せる魔法をかけた。


「髪の色も変えられた方が・・」

「ったくわかったよ」

ファン様はぶつぶつ言いながら、魔法をかけた。

自身と、わたくしに。


「え?」


わたくしは驚いた。

「黒髪ですか・・・」

黒髪の人間はいなくはないが、かなり珍しい。

「緑よりはましだろ?エルフだと思われるしな」


人間の世間で広まっているエルフの外見は、緑の髪で縦に長い耳だ。


「まぁ、そうですけど・・」

王子はよっぽどウラノがお気に入りらしい。

こんなに執着する王子は初めてだった。


エルフは貴重種で、珍しがられているだけならいいが狙われることが多い。

さらわれて、高値で売り払われるからだ。

なので、普通は姿を隠すのが一般的だ。


「以前は大変でしたね・・ファン様がさらわれて・・」

「それは言うな。他言無用だ」

ファン様は髪が長く中性的な顔立ちで、女性と間違われて売り飛ばされそうになったことがあった。

知っているのはわたくしだけですが。

女と間違われた・・かなり傷ついているご様子だった。

今でもショックみたいですね。


****


「やっと王都に着いた~疲れたぁ」

俺は体を伸ばす。

ずーっと乗合馬車で移動だったからな。

しばらくはいいかな。

「どこか適当なところで食事しないか?」

「そうね」

リアナはあくびをした。


歩いていると、今まで見てきた所より店が多く、人も多い。

「どこの店がいいのかしら?」

あちこちに同じような食堂があって迷う。

「分からないから、取り合えずどこでもいいと思うけど」

「まぁ、それもそうね」


俺たちは人が少なさそうな店に入った。

すぐ食べられると思ったからだ。

中に入ると、酒の匂いと煙草の匂いがしてきた。

「未だに慣れないな。この匂いは」

居酒屋みたいな所だろうか。

昼間から酒を飲んでいる客もいるようだ。


「そういえば、ノアはお酒飲まないわよね」

不思議そうに俺を見つめるリアナ。

「だって、まだ18歳だし」

「15歳以上だったら飲んでもいい・・特に決まりはないんだけどね。って貴方15歳って言ってなかったっけ?」


ここでは15歳から大人なのかな?

「この世界に来たのが15歳の時、それから3年が経っているんだよ。だから18歳だけど?」


「年下だと思っていたのに・・同い年じゃない」

リアナは少し驚いているようだった。


「同じ歳だったんだ」

もっと年上かとおもったよ。

凄く大人っぽかったから。

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