第23話 飛びたい

朝、宿屋の食堂で。

俺は、昨日思いついたことを言ってみた。

「ふと思ったんだけど、魔法で飛んで移動するのはどうかな?」


「え?何で?」

リアナの手が止まる。

パンを食べようと、右手でつかもうとしていたところだった。

「早く行けるかな、って思ったんだけど」

俺はコーヒーの入ったコップを口につけた。


リアナは眉を寄せた。

「う~ん。止めたほうが良いと思うわ。…理由は目立つから」

「え?」

「以前の田舎町なら、飛んでも気が付かれないと思うけど・・都会に行くとね、魔法使いや、貴族や・・まぁ色々いるから。目を付けられるわよ」


「そっか・・」

「大変だろうけど、馬車移動が無難かな?大変だったら、馬車を借りれば?」

良いアイディアだと思ったんだけどな。


朝食を平らげて、俺とリアナは外に出た。

また馬車を乗り継いで移動しなければいけない。


空を飛んで、王都に行く案は却下になった。

アニメで武道着を着た主人公が、ビュンビュン飛んでるのを見て、いいなって子供の頃よく思ったものだ。

まさか実際にできるようになるとは、思ってもいなかったけれど。


「飛びたいなぁ・・」

「まだ言ってるの?」

リアナは呆れた顔をしている。


「ああ、いや、ほら元の世界の話したじゃない。そこでアニメっていうのがあって、空を飛ぶヒーローっていうかさ・・」


「男の子って勇者とか、そういうの好きよね~」

リアナは遠い目をした。


「・・勇者はごめんだ・・関わりたくない」

「でも、調べるんだよね?」

「・・まぁ、そうだけどさ。調べるだけだ」

何で直ぐ勇者って言葉が出てくるのだろう。

勇者って過去の人だし、今更どうなるってこともないか。


****


「しばらく見ないな・・・」

オレは今日も空を眺めていた。

「空を飛べる人間など、あの黒髪の男くらいでしょうに」

「ウラノに似ていたんだ」

「まさか、人間は寿命が短いのですよ?ありえません」

「本人じゃないとは思うがね」


見たのはこの間の一回きり、あの男は幻だったのだろうかと思ってしまう。


「よし!探しに行くぞ」

「ちょ・・待ってください。わたくしもお供いたします」

「エリーゼお前も行くのか?」


慌てて、俺の後を追いかける黄緑色の髪の少女。

見た目は幼いが、歳は300歳を超えている。

「ファン様は危なくて放っておけませんからね」

「失礼な奴だ」

俺は笑顔でエリーゼを伴い、森の外の世界に旅立った。

外に行くのは数百年ぶりか。


「どこに行けばいいと思う?」

「それ、わたくしに聞きます?」

「・・おそらく冒険者ギルドに行けばいいかと。多分冒険者でしょうから」

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