第12話 本当のところ

俺と、リアナ、ミランは食事処にいた。

「ノアってどこ出身なの?」

ミランに聞かれる。

「・・ラクノ村だよ」

焼いてある肉を食べながら話す。

ウソはついていない。

まさか、異世界から転移したなんて言えるはずもない。

頭おかしい奴って思われるだけだから。


「そうなんだ。ふう~ん」

隣に座っているリアナと一瞬目が合った。

俺とリアナは恋人同士になったのだが、一緒のパーティのため、ミランも同席している。

ミランは俺の前に座っている。

そういえばこの人、名前しかしらないな。

「ミランって歳いくつなの?」

「言ってなかったっけ、15歳」

「同じか」


「聞いてない!」

リアナが席を立った。

「・・あ、言ってなかったねリアナ。なにせ記憶を思い出したのが最近なもんで・・」

「・・そう」

リアナは腰を下ろした。

「三つ下か・・」

リアナは呟いた。

「記憶って何?記憶失っていたの??」

あーまずい方向に会話が行きそうだ。


「・・・・」


「そういえば、パーティ名決めてないね」

俺は話題を強引に切り替えた。

「・・・黒いドラゴンとかは?」


ぶっ!

俺は飲んでいたお茶を吐き出した。

「きったない~。ちゃんと拭いておきなよ。良いと思うけどなぁ」

「物騒なネーミングだな。せめて黒い稲妻とかにしとけ」

「安直すぎて嫌だ。やっぱ、目立つ名前でないと!」


ミランはフォークを手に持ちながら、話す。

「リアナはどう思う?」

「ドラゴンスレイヤーとか?」

どこのアニメだよ。

それはやり過ぎな気がする。


****


結局パーティ名は決まらずに解散になった。

まあ、懇親会こんしんかいみたいなものだし、いいけど。


「ねぇ、記憶戻ったっていってたよね?」

「うん。そうだけど」

今は俺とリアナの二人きり。

今日も一緒の宿に泊まる予定だ。


「実際の所、ノアって本名じゃないんでしょ?」

宿の部屋に入るなり、リアナに聞かれる。


ぎくっ

まあそうだけど。

リアナには本当の事を言おうか。


「本名は浦野 湊うらのみなと 日本人だ。何て言うか、こことは違う世界から来た」

ドキドキして目の前のリアナの様子を見る。

真剣に聞いてくれているようだった。


「変とか思わないの?」

「何が?ノアってウソつけないでしょ?」

確かに。

俺は嘘は付けないタイプだ。


「異世界から来る人がいるらしい・・とはどこかで聞いた気もするわ」

他にも来た人がいたのだろうか。

「名前ノアでいいのかしら」

「ノアでいいよ。すっかり馴染んでるし」

「異世界から来る人は魔力が多いって聞いたことあるわ。確か初代勇者が、異世界人だったとか・・」


「勇者とか・・かんべんしてくれ」

「あらそう?ノアならいけそうだけど」

「俺はのんびり暮らしたい!」

これが俺の本音だ。


異世界転移の勇者なんてどこのラノベだよ・・・。

異世界転生とか異世界転移とか、日本ではアニメやコミックが沢山ある。

傍から見てる分には面白いけど、実際に転移ってなると面白くはない。

まぁ、魔法使えたりするし、そういう点では面白いかもしれないけれど。

俺は、嫌だからな!

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