第13話 漆黒の閃光

いつもの酒場でオレ達は飲んでいた。

「ミランが裏切っただと!」

ギルド長グレイルに呼び出され、事実確認をされた。

「解けない暗示をかけたはずなのに・・」

ギリッとオレは奥歯をかみしめる。

「解けない暗示はありませんよ」

青い髪のウィルナは口角を上げ、宝石が沢山ついた杖を置く。

左手には酒の入ったグラス。


「ミランのお陰で、青い牙は三か月停止処分だ。あいつを見つけて、再起不能にしてやる」

オレはグラスの酒を一気に飲み干す。

「あら、お優しいんですのね」


「アレン、いい加減にしろよ」

ケニーがアレンをいさめる。

「ちっ、わかったよ」

ケニーの筋肉野郎には逆らえない。

表面上はいう事を聞いているように見せかけて、バレないようにすればいいだけだが。

さあ、どうしようか。

「そういえば、最近どこかの新しいパーティに入った、という噂を聞きましたわ。なんでも、リアナがいるパーティとか・・・」

「楽しみですわね」

ウィルナはアレンの腕に絡みついた。



****



「まじか・・・」

冒険者ギルドに行ってみたら、勝手にパーティ名が決められていた。

漆黒しっこく閃光せんこう

「これ、誰が決めたの?」

「ああ、あたし、あたし。」


ミランはパンをかじりながら緊張感が全くない会話をする。

「因みに漆黒って?」

「だって、ノア、髪が真っ黒だから、あと閃光ってなんだかカッコいいでしょ?」

「・・そう、まあいいけど」


黒っていうから、想像はついたんだけど。

なんていうか、中二病な名前だな。

この世界では普通なのだろうか。

「リーダーはノアにしといたから、ちなみにあたしはAランクだよ」

「え?Aらんく?」

「そんなに驚かなくてもいいじゃない。少し実力があるだけだよ」

同じ歳でAランクか。

正直凄いな。

普通、人より上に行ったら威張ったりするだろう。

謙虚けんきょなところも好感が持てる。

それにしても、Aランクなら彼女がリーダーでもいいような気がするが。


「相変わらず自由ね~」

リアナは慣れているのか、少し呆れた様子で見ていた。

しかし、漆黒かぁ。

何だか魔王とか悪の帝王とかのイメージが強いんだよなぁ。

まあ、いいけどさ。

俺達は『漆黒の閃光』と言うパーティ名になった。

名前だけ聞くと何だか凄そうだな。


まあ、名前考える手間が省けたと思えばいいか。

一人増えたことで、依頼もやりやすくなるだろうし。

前向きに考えよう。


****


「漆黒の閃光?ぷっ。大層な名前ねぇ」

「本当にな、それでいつにするか」

「いつでもいいんじゃない?リーダーは人間相手だと戦えないって話だし。大丈夫よ」

青い髪の男女は腕を組んで笑いながら、立ち去っていく。

「本当に楽しみね」

杖を持った白いドレスの女は、冷たい視線を落としていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る