第11話 今更だけど

俺たちはラズリー町に帰ってきた。

冒険者ギルドへ向かって歩いているところだ。

「あのさ、リアナ・・聞きたかったんだけど」

赤い髪のミランが口の近くに手を当てて、小声で私に話しかけた。

「黒髪の彼、ノアだっけ?つきあってるの?」

「・・・えっと、・・」


付き合ってるの?

付き合ってはいないと思う。

そう言われると・・。

好きとかそういうの抜きで一気にいっちゃったからなぁ。

一応確認したほうがいいのかな?


「んん?」

ミランがいぶかしげな表情をしている。

「でも、いつもくっついてるじゃん」

「ま、まあね」

好きなんだけど。

付き合っているかと言われると、どうなんだろ。


「どうしたの?」

ノアが振り向いた。

「ああ、いや何でもないよ~」

私とミランはとぼけた。


****


「サンドワームか。よく無事だったな」

冒険者ギルドへ戻り、報告する。

「剣と盾などが落ちていまして、回収してきました」

俺は魔法収納鞄マジックバックから取り出して、カウンターに並べる。

「遺品だな。ありがとう。親族に渡しておこう」

グレイルは遺品を、丁寧に皮の袋にしまった。


「それとこちらのミランさんが青い牙を抜けたいと言っています」

「少し事情を聞かせてくれるか?」

ミランさんはグレイルに呼ばれて奥の部屋に入っていった。


「これで一安心だね」

「そうだといいけどね」

リアナさんはため息を付いた。


「どうだった?」

ミランが戻ってきたので、リアナが訊ねる。

「何とか辞めさせてもらえるみたい」

「よかった」

リアナはミランと抱きしめあった。


「ひと段落着いたところで・・ノア聞きたいことがあるんだけど」

ミランさんが俺の目を見る。

「リアナとは付き合ってるの?」

「付き合ってないかな。好きだけど」

「はぁ?訳わかんない」


そうか、そうだよな。

こういう事はきちんと言わないと。

俺は腹を決めて、深呼吸をした。


「今更ですけど、リアナさん俺と付き合ってください」

俺は右手を差し出し、頭を下に傾ける。

あれ、異世界なのに日本式かも。

そんな事を考えていると・・。


ワッと冒険者の声が騒がしくなった。

注目を一気に集めているようだった。


「「ええ~付き合ってなかったのかよ!」」


忘れてた、ここギルドだった。

「オレいっとけばよかった・・」

「ほんとそれ」

喧騒はしばらく止みそうにない。


「うん。よろしくお願いね」

リアナさんが俺の右手を、両手で優しく包み込んだ。

感極まって、俺はリアナを抱きしめた。


「ん~見てらんないわ」

先に帰るね、とミランさんが手を振って、立ち去った。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る