第062話 進化を求めて
「うぉっ、ホントだ!?」
俺はすぐに卵に駆け寄った。
卵は買った時よりも大きくなっていて、左右にグラグラと動きながら少しずつその罅を大きくしていく。
隣にアイリもやってきて二人でその様子を見守る。
――バキッ
数十分後、大きな音と共に卵の殻の一部がテーブルの上に落ちた。
――バキッ、バキバキッ
少しずつその頻度と数が増えていく。
――バキンッ
そして、さらに数十分ほど経った時、ひと際大きな音と共に卵の上部が大きく崩れた。
「ピギャアッ」
中から10㎝くらいのクロトカゲが顔を出した。
見た目は名前の通り、小さくて黒いトカゲだ。
とても可愛らしい。
俺の顔を見つけると卵から無理やり抜け出してきて、ぺろぺろと顔を舐めてくる。
「お前、俺のことが分かるのか?」
「ピギャッ」
俺が尋ねると、顔を離して首を縦に振った。
どうやら生まれる前から俺のことを魔力で感じ取っていたらしい。
それに、生まれたばかりでも俺の言葉を理解できる知能が備わっている。つくづくモンスターとは不思議な生き物だと思う。
「お兄ちゃん、可愛いね」
「そうだな」
新しい生命の誕生に、アイリが嬉しそうな笑みを向けてくる。俺も釣られるように微笑み返した。
「ピギャッ」
「分かった分かった」
すぐにテイムしてほしいと顔を舐めてくるので、俺はすぐに名づけを行う。
「テイム、命名、アスラ。この名前でよければ受け入れてくれ」
「ピギャアアッ!!」
いつものようにテイムを発動すると、お互いが淡い光に包まれ、アスラから魔力のパスが伸びてきて俺に接続されてテイム完了となった。
アスラとは、神話に出てくる最強のドラゴンの名前だ。
そのくらい成長してくれることを願って付けた。
SSSランクの潜在能力を秘めているんだ。そのくらいになったとしても不思議じゃない。
これからどうなっていくのか楽しみだ。
「アスラ、よろしくね」
「ピギャッ!!」
アイリがアスラに挨拶すると、アスラも嬉しそうに返事をする。
アスラもアイリのことを認めているみたいだ。仲良くできそうで良かった。
「チチチッ」
「プーッ」
「クゥッ」
「ピピッ」
「ナーンッ」
「よろしくおねがいします」
「ピギャギャッ!!」
他のメンバーとも引き合わせたけど、特に喧嘩したり、毛嫌いしたりすることもなく、お互いにすんなり受け入れていた。
先にテイムしていたモンスターと、後でテイムしたモンスターで仲が悪くなることもあるらしいけど、うちはそういうのが一切なくて助かる。
「あら、また新しい子が増えたの?」
「ああ。アスラって言うんだ」
「可愛いわね。うちの子をよろしくね」
「ギャウッ!!」
母さんへの紹介もあっさり済んで、アスラは晴れてウチの家族の一員となった。
それから数日後。
――――――――――――――
個体名 :アスラ
種族 :オニキスリザード
属性 :闇
レベル :14/20
ランク :E
スキル :シャドウエナジー
状態 :良好
進化条件
①アチチ草×50(50/50)
②漆黒草×50(50/50)
②Dランクの魔石×20(20/20)
③レベル上限
――――――――――――――
アスラはクロオオトカゲを経て、Eランクのオニキスリザードへと進化していた。
大きさは60cmくらい。
黒曜石のような光沢と手触りの鱗を持つことからその名が付けられたと言われ、闇の魔力を凝縮した球を放つシャドウエナジーというスキルを覚えている。
その硬質な体による体当たりと噛みつきが主な攻撃手段だ。
それに、リタも進化した。
――――――――――――――
個体名:リタ
種族 :守護妖精
属性 :風
レベル:1/30
ランク:D
スキル:祈り
守りの風
状態 :良好
進化条件①▼
①風魔石×1(0/1)
②モリレンソウ×100(13/100)
③Cランクの魔石×50(20/50)
④レベル上限
進化条件②▼
①風魔石×5(0/5)
②月の実×5(0/5)
③モリレンソウ×100(13/100)
④ソウカイモモ×100(21/100)
⑤Cランク魔石×100(20/100)
⑥レベル上限
――――――――――――――
大きさはそのままに見た目が少女と言えるほどに成長し、鼓舞が祈りへと強化され、新たに守りの風というスキルを覚えた。
これは見えない風の壁が敵の攻撃の威力を軽減してくれるスキルだ。リタがいれば、全体的な能力が底上げされる上に、守りがさらに厚くなる。
ありがたい力だ。
「ご主人様」
そして、言葉がかなり流暢になってきた。今までは舌足らずな部分もあったけど、随分しっかりとした話し方になっている。
特殊進化の条件も開示された。
やっぱりSSSランクであることが特殊進化の条件の一つなんだろうな。
リタも特殊進化を目指していきたい。
俺はCランクになったし、アスラもある程度動けるようになり、リタも進化した。
もう準備は整ったと言ってもいいだろう。
「よし、まずはシルバー峡谷に行こう!!」
「チィッ!!」
「プゥッ!!」
「クゥッ!!」
「ピィッ!!」
「ニャッ!!」
「はいっ!!」
「ギャッ!!」
俺たちは、より高い報酬と、Cランクへと進化するために新しい探索地へ行くことにした。
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いつもお読みいただきありがとうございます。
カドブコンテスト用の新作を公開しております。
現人神(かみ)様のその日暮らし〜異世界から帰ってきたら、二十年経っていて全て失ったけど、神社を貰って悠々自適な現人神様生活を送ることになりました〜
https://kakuyomu.jp/works/16818093080021653997
どうぞよろしくお願いいたします。
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