第058話 打開策
「クゥッ!!」
「ピッ!!」
「ごしゅじんさま、およびですか」
ルナ、プルー、リタが姿を現し、俺の傍に寄ってくる。
「なっ!?」
「どこから!?」
いるはずのないモンスターが突然出現すれば、エルたちが驚くのも無理はない。
エルたちとオーク討伐に参加した時、ルナたちはまだEランクモンスターだった。見た目も結構変わっているし、リタに至ってはまだテイムすらしていなかった。
俺がモンスターを進化させられることを知らなければ、すぐには気づけないだろう。
「心配するな!! 全員俺の従魔だ!!」
大声でルナたちが敵じゃないことを知らせた。
俺の言葉を理解したエルたちは、すぐに再びハーピィに意識を戻す。
ただ、驚いたのは味方だけでなく、ハーピィも同じだったらしい。
やつらも動きを止めていた。
「リタ、鼓舞を頼む!!」
俺はその隙にリタに指示を出す。
「はい!! ララララ~」
彼女はいきなり呼び出されたにもかかわらず、すぐに状況を理解し、俺たちの頭上でクルクルと踊りながらハミングで美しい旋律を奏でた。
リタが通った後にキラキラと輝く軌跡が生まれ、光が降り注いで俺たち全員を包み込む。
その途端、体の内側から力が沸き上がってくるのを感じた。
「これは……」
「強化魔法?」
「なんでもいい。これならまだまだいけそうだ!!」
予想外の増援に、先ほどまで苦しそうだったエルたちの表情が明るくなる。
ダメもとだったけど、クリスの強化魔法と重複して効果が出ていた。
これは良い誤算だ。
「ピュウイッ!!」
こっちの準備が整った頃、我に返ったハーピィリーダーが鋭い鳴き声を上げる。それが合図となって再びハーピィの群れが距離を保ちながら、隙を見つけては時折直接攻撃を仕掛けてきた。
しかし、こっちの能力が上昇し、手数が増えたため、なんなく攻撃を捌くことができる。
「やぁっ!!」
「ピィイイイイッ!?」
その上、エルの能力が上昇したことで、近距離に迫ったハーピィでも、身を躱しつつ、矢で撃ち抜くことができるようになった。
撃ち落とされたハーピィが地面に激突し、痛みでジタバタともがく。エルが追撃して止めを刺した。
その光景を見るや否や、今度はハーピィたちは完全に遠距離攻撃のみに切り替える。俺たちに近づくことなく、空から羽を針のように飛ばすフェザーニードルを放ってくる。
そうなると、空を飛ぶ彼らに攻撃を当てられない俺たちではどうしようもない。
戦局は膠着状態に陥った。
すぐに負けもしないけど、勝てもしない。ただ、時間が経てば経つほど不利なのは数の少ない俺たちだ。
どうにかしてハーピィの数を減らす必要がある。
そこでカギになるのはやはり空を飛べるリリの存在だ。リリならハーピィに近づいて攻撃することができる。
ただ、何十匹のものハーピィの群れに単身で突っ込むのは、自爆のようなもの。大事な従魔にそんなことはさせられない。
リリがもっと大きくて俺を背中に載せられるのではあれば、リリが対処できない攻撃を俺が対応することで状況を打破できるだろう。でも、それは叶わない。
いったいどうすれば……。
対策が思いつかないまま時間だけが過ぎ、ジリジリと俺たちの体力が削られていく。
あ、そうだ!! こんな時こそハーピィのステータスボードを確認しよう。何か突破口が見つかるかもしれない。
俺はリーダー個体のステータスボードを表示させた。
――――――――――――――
個体名 :なし
種族 :ハーピィ
属性 :風
レベル :28/30
ランク :D
スキル :フェザーニードル
状態 :良好
弱点 :状態異常魔法
潜在ランク:C
――――――――――――――
そうだ、思い出した!!
ハーピィは毒や麻痺攻撃などの状態異常魔法に対する耐性が著しく低い。そのため、スリープやパラライズといった魔法は抵抗されることなく凄くよく効く。
「ピッ、ピッ!!」
そこで、飛んでくるフェザーニードルをアクアショットで撃ち落とすプルーに視線を向ける。
プルーはポイズンショットとスリープを使いこなす、まるでハーピィの天敵のようなスライム。プルーはある程度体の大きさを変えられるし、体重もかなり軽い……。
「これなら……!!」
俺はこの状況を打開する策を思いついた。
「リリ、プルー、こっちに来てくれ!! 皆、しばらく時間を稼いでくれ」
俺はハーピィの攻撃の対処をエルたちに任せ、リリとプルーを呼び寄せる。
「チィ?」
「ピッ?」
2人は首をかしげる。
俺はリリの背中にプルーを載せ、プルーの体の一部を引き伸ばしてリリの体にしっかりと巻き付かせた。
そう、1人でダメなら2人組み合わせればいい。
俺が考えた作戦はリリがプルーを載せて飛び回り、プルーがスリープとポイズンショットでハーピィ撃墜していく方法だ。
クリスの強化魔法とリタの鼓舞によって能力が上がった今のリリなら、体重が軽いプルーくらいなら、しっかり体に張り付いていれば支障なく運べるはず。
「2人とも頼んだぞ!!」
「チィッ!!」
「ピピッ!!」
説明を聞いて作戦を理解した2人は、ハーピィめがけて飛び立った。
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