第028話 激闘の果てに
「もう一丁!!」
俺はオークキングの隙を見逃さずに大剣を横なぎにした。
「プギィイイイイッ!!」
驚いて硬直していたオークキングは俺の攻撃をガードもできずに受けた。その結果、キースと同じように身に着けていた鎧が砕けて大剣が体に深々と刺さる。
かなりの深手だ。
しかし、オークキングも
「くそっ!! 放せ!!」
力を入れているが、相手も必死なせいかビクともしない。
「フゴォオオオオッ!!」
剣を引き抜こうとする俺にオークキングが拳を振った。
「ちぃっ!!」
仕方なくキースの剣から手を離して距離を取る。
オークはキースの剣を引き抜き、自分のものにしようとした。
「ファイヤーボール!!」
引き抜いたところを、俺がつけた傷に向かって魔法を放つ。
カロンの分も増えた力によってファイヤーボールがさらに強化され、最初の3倍くらいの大きさになっていた。
――ドォオオオオオンッ
先程よりも大きな爆発が起こり、オークキングの体を焼く。
「プギィイイイッ!!」
再びオークキングは悲鳴のような叫び声を上げた。
よし、最初の時と違って確実にダメージを与えられている。
「フゴォオオオオッ!!」
しかしオークキングは、痛みなどまるで感じさせない動きでキースの剣を振って炎をかき消した。
姿を現したオークキングの脇腹は、俺が深く抉った上に焼かれたことで、ジュクジュクと焼け
それでもなお、一歩も引かない態度。流石オークたちの王。凄い胆力だ。その点は称賛せざるを得ない。
「フグォオオオオッ!!」
オークキングは傷をものともせずに俺に襲い掛かってきた。
まるで暴風のように振り回される大剣。
俺はその攻撃を紙一重で躱し続ける。
「フゴォ……フゴォ……」
怪我と疲労でオークキングの呼吸が荒くなってきた。
「はぁああああっ!!」
大振りになってきたところを狙って、回復しきっていない脇腹に蹴りを突き刺す。
「フグゥウウウウッ!!」
クリーンヒットしているにもかかわらず、オークキングは動きを止めずに、俺に剣を振り下ろした。
バックステップをしてその攻撃を回避する。
――ドンッ
大剣が地面に叩きつけられて半円状に陥没した。あれに当たったら、今の俺でも大怪我は免れなさそうだ。
それから幾度もの攻防を交わし、いくら蹴りやパンチを打ち込んでいるけど、オークキングは一向に倒れる気配がない。
それどころか、ゆっくりとだけど、脇腹の傷が治り始めている。折角つけた傷が消えたら、再びオークキングが勢いを取り戻してしまうだろう。
そうはさせない。
こうなったら俺も自爆覚悟で攻撃をするしかない。
「うぉおおおおっ!!」
俺はオークキングの攻撃の隙をついて距離を詰め、傷に向かって思いきり拳を突き入れた。
「グゥウウウッ……」
傷に塩を塗るように抉る。
オークキングは距離が近すぎて剣を当てることができない。しかし、必死に暴れて俺を突き放そうとする。
「ぐわぁああああっ!!」
肘や膝が当たり、吹き飛ばされそうになるが、必死にしがみつく。
「ファイヤーボール」
そして、魔法が完成して体内にファイヤーボールを打ち込んだ。
――ドォンッ
オークキングの体内でファイヤーボールが爆発する。
「プギィイイイッ!!」
「がぁああああっ!!」
身体の内部なら回避も防御もできない。その上、体の内部は鍛えようがないから、かなり大きなダメージになるはずだ。内臓が焼かれる痛みは想像すらできない。
その代わり、俺の腕も爆発を受けてズタズタになる。
しかし、そんなことに構っている場合じゃない。
「ファイヤーボール!! ファイヤーボール!! ファイヤーボール!!……」
何度もファイヤーボールを炸裂させる。
そのたびにオークキングの体内が赤く膨れ上がって、血が蒸発して煙を上げ、肉と骨が焼けるような匂いが俺の鼻孔をついた。
「ぐっ……がっ……」
そのたびにオークキングの脇腹に突き刺している腕に引き裂かれるような激痛が走る。
それでも何度もファイヤーボールを唱え続けた。
「フゴォオオオオオオッ!!」
これ以上やられまいと、オークキングが俺を投げようと左腕で掴んだ。腕にダメージを受けすぎて踏ん張り切れなくなった俺は思いきり投げ飛ばされる。
「かはっ……」
俺は受け身も獲れないまま地面に叩きつけられ、ゴロゴロと転がって木にぶつかった。
視界がチカチカする。今にも意識を失いそうだ。
ここが正念場だ。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
俺はなんとか立ち上がった。右手の感覚がない。これは使い物になりそうにない。それに魔力の残りも少ない。今は回復している余裕はない。最優先なのはあいつを殺すことだ。
「プギィ……プギィ……」
流石のオークキングも体内をズタボロにされて満身創痍だ。剣を地面に突き刺してなんとか体を支えている。
俺が走り出すと、オークキングもその身を起こして待ち構えた。
「うぉおおおおっ!!」
「フゴォオオオッ!!」
俺はオークキングの攻撃を掻い潜って懐に潜り込み、傷に左腕を突き刺した。
「ファイヤーボール!!」
「プギィイイイイッ!!」
「ぐわぁああああっ!!」
右腕だけで足りないなら左腕も差し出してやる。
「ファイヤーボール!! ファイヤーボール!! ファイヤーボール!! ……」
引き裂かれるような痛みに耐え、何度もファイヤーボールを体内で爆発させた。
「プギィ……」
オークキングの瞳から光が消え、体から力が抜ける。
俺が痛みをこらえてわき腹から腕を引き抜くと、オークキングは俺の肩を掠めるように前のめりに倒れた。
「まだだ……」
倒れたからと言って死んだとは限らない。
俺はまだ辛うじて動く左腕で剣を持ち、横たわるオークキングの首に体重をかけて突き刺した。
オークの体がビクンと震えると、ピクリとも動かなくなった。
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