第027話 起死回生
――ズサァアアアアッ
地面を転がる中、重心をコントロールしてなんとか体勢を立て直す。このタイミングで強化魔法が切れてしまった。
「エル!! キース!! クリス!! 無事か!!」
俺は大声で3人の名前を叫ぶ。
思い出した可能性を実現するためには3人の協力が必要不可欠。他の皆のことも心配だけど、今は3人になんとしても承諾してもらわなければならない。
それさえできればオークキングに勝てる可能性が生まれるはずだ。
この際、俺の力がバレるとか言っている場合じゃない。エルたちなら勝手に言いふらしたりしないだろう。ここで死んでしまったら元も子もない。
「俺にチャコとカロンとラッキーを代理で育成させてくれ!! 何も言わず受け入れてくれ!! 頼む!! 少しでも意識があるなら応えてくれ!!」
そう、その可能性とは代理育成契約を結ぶこと。
俺にはまだあと3つの代理契約の枠が残っている。3人と代理育成契約を結べば、3体分のDランクモンスターの力を受け取ることになる。
「……分かった……あなたにチャコを預ける」
「わ、私も――きゃーっ!!」
エルとクリスから承諾を得ることができた。
でも、キースからの反応がないし、クリスの悲鳴が――マズい!!
『個体名:チャコの契約主エルからの承諾を得ました。チャコを預かりますか? はい いいえ』
『個体名:ラッキーの契約主クリスからの承諾を得ました。ラッキーを預かりますか? はい いいえ』
今はとにかく"はい"だ!!
『これより、チャコの契約主エルから破棄または契約が満了されない限り、ブリーダーイクスがチャコの主人代理となります。契約主エルより、テイム契約以外の全ての権限が貸与されました』
『これより、ラッキーの契約主クリスから破棄または契約が満了されない限り、ブリーダーイクスがラッキーの主人代理となります。契約主クリスより、テイム契約以外の全ての権限が貸与されました』
ボードが現れると同時に力が湧き上がる。
状況を確認すると、クリスの近くまでオークキングが迫っていた。
走ったら間に合いそうにない。
「クリス伏せろ!! ファイヤーボール!!」
俺は指示を出した後すぐに、オークキングに向かって魔法を放った。クリスは蹲るようにその場にしゃがみ込む。
大人の顔サイズだったファイヤーボールが、その倍以上に膨れ上がり、手に平の先から弾かれるようにオークキングめがけて飛んでいった。
――ドォオオオオオオオオンッ
ファイヤーボールがオークキングの顔に直撃して爆発を引き起こす。
威力もとんでもなく向上していた。大きさは倍を超える程度だけど、威力だけで見るなら明らかに二倍以上になっている。
これなら今のオークキングでも牽制に使えるはずだ。
「動けるやつは全員、オークキングを牽制してくれ!!」
爆発した際に生じた煙に乗じて、叫びながらキースのところに走る。
「キースッ!! ちょっと待ってろ!!」
「うぐぅ……はぁ……」
キースに近づくと、胸当てが破壊され、腹部を大きく斬り裂かれて装備と地面が真っ赤に染まっていた。痛みで苦しそうに顔を歪めている。
「ハイヒール!!」
「プーッ!!」
祈りを捧げた後で傷口に手を翳してハイヒールを掛けた。俺の肩にずっとしがみついていたポーラも一緒にヒールを使う。
ラッキーと契約を結んだ俺はハイヒールを使用できるようになった。
2つの緑色の光がキースの体を包み込み、大きな傷をみるみる癒す。
「ごほっごほっ……イクスか……」
かなり危ない状態だったキースが奇跡的に回復した。
言いたいことは沢山あるけど、今生き延びるために聞くべきことは1つ。
「何も言わず、俺にカロンを代理で育成することに承諾してほしい」
「分かった……」
キースはそれだけ言うと、そのまま目を閉じてしまった。
「キース!! ……いや、気を失っただけか」
呼吸は安定しているから死ぬことはないはず。今はそれだけで十分だ。
『個体名:カロンの契約主キースからの承諾を得ました。カロンを預かりますか? はい いいえ』
はい!!
『これより、カロンの契約主キースから破棄または契約が満了されない限り、ブリーダーイクスがカロンの主人代理となります。契約主キースより、テイム契約以外の全ての権限が貸与されました』
これでよし!!
俺に3体全ての力が流れ込む。Dランクモンスター3体とEランクモンスター5体の力が俺の内に宿った。
今まで感じたことのないほどに大きな力を感じる。
「キース!! 大剣借りてくぞ!!」
俺はキースの剣を持ち、オークキングの許に走る。
ファイヤーボールはオークキングの皮膚を焼いていたが、再生能力によって徐々に回復していっていた。
チャコとカロンが主軸になって、血まみれになりながらもクリスを守るために必死に足止めしている。
その貴重な時間で俺はオークキングの傍まで距離を詰め、飛び上がって大剣を振り下ろす。
「おらぁああああっ!!」
「フグゥウウウウッ!!」
オークキングは危険を感じたのか、咄嗟に俺の剣を受け止めた。
――ズサァアアアアッ
しかし、俺の力を抑えきれずに、後ろへ吹き飛ばされる。
よしっ!!
俺の力は明らかにオークキングを上回っていた。
「クリス、ラッキー、ポーラは皆を回復させてくれ!! その間、俺がオークキングを押さえる!!」
指示を飛ばした俺は、オークキングと相対する。
ジリ、ジリとお互いが少しずつ近づき、ある1点を越えた時、お互いに走り出した。
「うぉおおおおおっ!!」
「フグゥウウウウッ!!」
――ガンッ、ガンガンッ
お互いの剣がぶつかり合い、その度に腹に響くような衝撃波を放つ。
オークキングにも全く力負けしていない。それどころか俺の方が押している。
このまま畳みかける!!
俺は剣速を速め、オークキングを追い込んでいく。
「パワーアップ、ディフェンスアップ、スピードアップ、マジックアップ、シャープエッジ、ハードアーマー」
俺を援護するように、まるで図ったかのようなタイミングでクリスの強化魔法が再び俺を包み込んだ。
「はぁああああっ!!」
俺が再び剣を振り下ろす。
「フガァアアアアッ!!」
オークキングは真正面からその攻撃を受けた。
――バキンッ
その結果、オークキングの剣が壊れて使い物にならなくなった。
オークキングの顔が驚愕で歪んだ。
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