オーク集落殲滅作戦

第018話 異変

「Dランクからは別物って感じだな」


 オークの姿を離れた場所から見て呟く。


 ――――――――――――――

 個体名  :なし

 種族   :オーク

 属性   :なし

 レベル  :3/30

 ランク  :D

 スキル  :バーサーク

 状態   :良好

 弱点   :下半身への攻撃

 潜在ランク:C

 ――――――――――――――


 ステータスボードはスキル以外は特筆すべきことはない。バーサークは凶暴になって攻撃力が数倍になるかなり危険な技だ。


 ただし、敵味方見境がなくなり、知能が低下するので攻撃の隙が大きくなる。当たらなければ問題ない。


 今の俺たちなら十分やれるはずだ。


「よし、全力で倒すぞ。リリは上空からファイヤーボールで奇襲。その隙をついて俺とクロがミラージュで地上からの奇襲。最後にプルーのアクアブレットをルナのアイスブレスで凍らせて攻撃だ」


 俺が小声で指示を出すと、皆が頷いてリリが音もなく空へと飛び去った。クロロは、クロの方が呼びやすいからそう呼んでいる。


「フゴ?」


 オークが辺りを鼻をヒクヒクさせ、辺りを嗅ぎ始めた後、こん棒を構えた。


 もしかして気が付かれた?


 俺とクロはミラージュという風景と同化することで姿を誤魔化す魔法を使って近づいていた。


 でも、オークは鼻が良い。こっちがルナの嗅覚を頼りにしているように、オークも嗅覚で俺たちが近づいていることに気が付いてしまったらしい。


 オークがこちらに向かって迫ってくる。


 しかし、オークは俺たちに近づくことはできなかった。


「チチィッ!!」

「フゴォオオッ!?」


 上空からリリのファイヤーボールが命中したからだ。


 俺たちに気付いてしまったことで、図らずもリリの奇襲の成功率を上げて、オーク自らが墓穴を掘った形だ。


 リリのファイヤーボールがオークの脳天から直撃。顔を焼いた。


「いくぞ」

「ニャッ」


 そこに俺とクロが強襲。


 俺は太ももを狙って思いきり剣を振りぬいて駆け抜ける。クロは足元を狙って引っかき攻撃。


 ステータスボードの弱点に従い、下半身を狙う。


「フゴォオオッ!!」


 オークは痛みでこん棒を振り回して暴れ出す。


 俺とクロは距離を取った。


「チチチィ」


 リリが空からファイヤーボールを放つ。


「ピピッ」

「クゥッ!!」


 合わせるように、プルーのアイスブレットが氷の塊になって、オークの背後から襲い掛かった。


「フゴォッ!?」


 2方向からの攻撃を躱しきれずにアイスブロックとでも呼ぶべき氷の塊が背中に突き刺さる。


「フガァアアアアアアッ!!」


 突然、オークが天に向かって高らかに吠えた。


 バーサークだ。


 目が真っ赤になってこん棒を持って手あたり次第振り回す。


 これは近づくのは危険だな。


「遠距離攻撃を叩きこめ。危ないから近づくな!!」


 離れた場所から俺とリリがファイヤーボール、ルナとプルーでアイスブロック、ポーラとクロは待機。


「フゴァアアアアッ!!」


 オークは苛立つように吠える。


 さしものオークも3方向から浴びせられる魔法になす術がない。


 徐々にオークの勢いが失われ、目が普通に戻っていく。バーサークが切れた。再び使用するには少し時間が必要なはずだ。


 魔法を散々受けたオークは満身創痍。


「今だ!! 全員でツッコめ!!」


 俺たちは全員で襲い掛かった。


 リリが空から延髄に急降下してつつき、ブルーは顔を包み込んで呼吸を奪い、俺とルナとクロは足元を狙う。


「フゴォ……」


 何度も執拗にヒット&アウェイを繰り返していると、遂にオークは倒れた。


「ふぅ。危なげなく倒せたな」


 こっちが一方的にオークの情報を知っていて先制が取れた上に、Eランクモンスターと言えど5体も揃っている。さらに、その5体の力を借りている俺までいるんだから倒せない方がおかしい。


 なんにせよ、初めてDランクモンスターを倒すことができて良かった。


 ここから魔石の価値がグンと上がる。次からはオークを積極的に狙っていきたい。


「それにしてもなんでこんなところにオークがいたんだろうな……」


 普段はもっと奥にいるはずだ。それなのに中層くらいをうろついていたのが気になった。


「少し調べてみるか。リリは空から、ルナ、クロは嗅覚で、ポーラは聴覚で、プルーは探知で、それぞれ辺りを探ってみてくれ。何か分かったら教えてほしい」

「チィ!!」

「プー!!」

「クゥ!!」

「ピ!!」

「ニャ!!」


 俺の指示を聞いた皆が良い返事をして散っていった。俺は俺で皆とは別の方向に森を進んでいく。


 しばらく探してみたけど、俺の方には何もない。


「チチチチ」

「ニャッ!!」


 一息ついたところに帰って来たのはリリとクロ。どうやらここから西の方に何かあるらしい。


 他の皆が戻ってきたところで、リリとクロに案内され、西へと向かった。


「あれは……」


 30分ほど西へ進むと、塀に囲まれ、雑な造りの建物が点々としている集落が見えてくる。


 遠くから見ればただの集落だけど、住んでいるのが人間ではなく、オークだった。


 オークの集落。


 それは人間の村や街に多大な被害を与える恐怖だ。


 オークは一定以上の群れになると集落を築く。集落には数百体のオークが暮らしていると言われている。


 Dランクと言えば、ランクで言えば低いモンスターだけど、俺たちが数で攻めれば上のランクのモンスターを倒せるように、数が集まれば格上の相手だって殺せる。


 それにオークの集落には間違いなく、オークを統率する存在がいる。今回の規模で言えば、Cランクモンスターのオークキングだ。


 それだけの戦力が街の近くにあるというのは非常に危険だ。見つけたら、速やかに殲滅させなければならない。


「皆、街に戻るぞ」


 一人では手に負えないので、静かに街へと引き返すことに。


 帰る前に、リリに空を飛んでもらって視界を共有することで、集落の場所の地図を描いておいた。

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