第017話 変化

「静かだね」

「そうだな」


 寝る前に妹と話をする。


 今日はアイリと二人きり。


 一緒に寝ていたモンスターたちはお試しで育成牧場の厩舎の馬房で眠っている。


 いつも寝る前はモンスターたちが騒いでいて賑やかだけど、今日は誰もいないので部屋の中がシーンと静まり返って少し寂しさを感じる。


 ただ、我が家は狭い。従魔が5人もいると大分手狭だ。その問題を育成牧場が解決してくれた。


 寝る前に今日の成果を確認する。


 ―――――――――――――――

 個体名:リリ

 レベル:2/20(+1)

 進化条件

 ①アチチ草×100(5/100)

 ②Dランクの魔石×20(0/20)

 ③レベル上限

 ―――――――――――――――

 個体名:ポーラ

 レベル:1/20

 進化条件

 ①メディチ草×100(3/100)

 ②Dランクの魔石×20(0/20)

 ③レベル上限

 ―――――――――――――――

 個体名:ルナ

 レベル:2/20(+1)

 進化条件

 ①ヒエヒエ石×100(4/100)

 ②Dランクの魔石×20(0/20)

 ③レベル上限

 ―――――――――――――――

 個体名:プルー

 レベル:2/20(+1)

 進化条件

 ①ミンミンダケ×100(5/100)

 ②Dランクの魔石×20(0/20)

 ③レベル上限

 ―――――――――――――――

 個体名  :クロロ

 レベル:11/20

 進化条件

 ①シャドウナッツ×100(0/100)

 ②Dランクの魔石×20(0/20)

 ③レベル上限

 ―――――――――――――――


 攻撃力が乏しいポーラと新しく加わったクロロ以外はレベルが1つ上がっていた。


 進化素材は集めるのに1カ月はかかりそうだ。コツコツと集めていこう。


「おやすみ、お兄ちゃん」

「ああ。おやすみ」


 俺たちは久しぶりに静かな夜を過ごした。




 次の日。


「チチチッ!!」

「プププウッ!!」

「クククウッ!!」

「ピピピイッ!!」

「のわぁあああああっ!? お、落ち着け、お前たち。のわぁあああああっ!!」


 朝出かける前にリリたちを外に出すと、皆に群がられて大変なことになった。


 離れて寝るのに慣れるまでは大変そうだ。


 しばらくの間、皆が離れようとしなかった。


「うぉおお……すっげぇ楽だ……」


 街を出た後でいつも背負っている荷物を倉庫に仕舞うと凄く楽になった。


 身一つで出かけられるようになるとか最高過ぎる。


 しかも、何かを取り出したい場合は、イメージすると倉庫内に入っている物が頭に浮かんできて、それを選択すればいいだけ。入れる時も入れたい物に触れて入るようにイメージするだけ。


 凄く簡単で便利だ。


 ただ、街中から何も持っていないのは色々支障が出るので、持っていないとおかしい物は、街の外でだけしまっておくことにした。


「よし、今日も働くぞ!!」

「チィ!!」

「プー!!」

「クゥ!!」

「ピ!!」

「ニャ!!」


 身軽になった俺たちは、意気揚々と森へと足を踏み入れた。


「採集も凄く効率よくなったぞ」


 アイテムは触れれば倉庫に入れられるし、意識すれば、何がどのくらい入っているかも分かる。そのおかげで依頼を取りこぼしせずに済む。


 今までは泣く泣く諦めていたアイテムだって持って帰られる。


 その分、稼ぎも多くなる。良い事ばかりだ。


「ニャーッ」

「はっ!!」

「グギャァ……」


 遭遇した数匹のゴブリンの群れを倒す。


『預かったモンスターが初めて戦闘に参加しました。特典として10P付与します』


 モンスターを倒すと、視界の端にボードが浮かんできた。


「こうやってポイントが付与されるのか……」


 何か特別なことを成し遂げた時に特典ポイントが貰えるらしい。


『預かったモンスターが初めてレベルアップしました。特典として10P付与します。また、レベルアップに伴い、1P付与します』


 それと、モンスターをレベルアップさせた時も、ポイントを貰えるようだ。特典は一度きりだろうし、ポイントはなかなかもらえないものだと考えた方が良さそうだな。


 使い道はちゃんと考えないと。


 次は厩舎のアップグレードか、治療院の開設なんかがいいかな。


 厩舎をアップグレードすると、馬房の質が向上してモンスターがより快適に過ごせるようになる。その結果、ストレスが緩和されたり、疲れがより早く取れるようになり、怪我や傷の治りも早くなるらしい。


 治療院は、大怪我や病気をした時に治してくれる場所だ。採集は命と隣り合わせ。何かあった時のために備えておきたい。


 でも、治療院は開設にポイントが掛かる上に、治療にもポイントが掛かる。


 なかなか手が出しにくい。


 俺はポイントの使い道を考えながら仕事を続けた。




「これで終わりだな」


 今日はかなり順調で倍にしたノルマも日が暮れないうちに達成してしまった。


「チチィッ」


 俺の許に周囲の偵察をしていたリリが慌てた様子で戻って来る。


「どうしたんだ?」

「チチチッ」

「なに、オークだって!?」


 リリによれば、近くにオークが1匹だけで歩いているとのこと。


 オークは豚の顔をした人型のモンスターで、2メートル以上のでっぷりとした体を持ち、膂力と体力に優れている。


 一般人なら殴られただけでひとたまりもない。


 Dランクで、本来もっと森の深部にいるモンスターなんだけど、こんなところで一体だけでいるなんてツイてる。


 俺たちはまだDランクモンスターと戦ったことがない。


 クロロも含めてEランクのテイムモンスターが5体。レベルも上がって来たし、そろそろ挑戦してもいい頃だと思っていた。


 願ってもない機会だ。


「案内してくれ」

「チチィ」


 俺はリリの先導に従い、森の奥へと進んでいく。


 数十秒後、オークと遭遇した。


 オークは鎧と巨大なこん棒を持っていて、すさまじい威圧感を出している。本で知った知識と実際に見るのとでは全く違う。


 明らかに今まで相手にしていたモンスターとは格が違った。

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