第013話 最弱なのは変わらない
思い立ったが吉日。
「皆、どんどんモンスターを探してくれ」
皆で手分けしてモンスターを探す。
「チチチッ」
「ププゥッ」
「ククゥッ」
「ピピピッ」
従魔たちも仲間が増えるかもしれないとあって乗り気だ。
「あれは……フォレストウルフ……」
俺は俺で一人で依頼のアイテムを採取しつつ探していると、小型の狼型のモンスターを見つけた。
Eランクのモンスターで、基本的に群れで狩りをする。
3体のフォレストウルフがうろついていた。幸いここは風下だったおかげでバレていない。
よし、早速確認だ。
――――――――――――――
個体名 :なし
種族 :フォレストウルフ
属性 :なし
レベル :6/20
ランク :E
スキル :なし
状態 :空腹
弱点 :なし
潜在ランク:D
――――――――――――――
個体名 :なし
種族 :フォレストウルフ
属性 :なし
レベル :5/20
ランク :E
スキル :なし
状態 :空腹
弱点 :なし
潜在ランク:D
――――――――――――――
個体名 :なし
種族 :フォレストウルフ
属性 :なし
レベル :7/20
ランク :E
スキル :なし
状態 :空腹
弱点 :なし
潜在ランク:D
――――――――――――――
「全員Dランク……まぁ一回で会えるわけもないか」
高ランクの潜在能力を持っている個体なんてそんなに多くないだろう。もしそんなに沢山いるのなら、今頃きっと高ランクモンスターで溢れているはずだ。
「次に行こう」
次に見つけたのは、Fランクモンスターのコボルト。子供サイズの二足歩行の犬型モンスターだ。
5体いたけど、
―――――――
潜在ランク:D
―――――――
潜在ランク:E
―――――――
潜在ランク:E
―――――――
潜在ランク:D
―――――――
潜在ランク:F
―――――――
全てイマイチなランクばかりだった。
それからも、リリたちの案内を受けて何度もモンスターを見つけたけど、今のところCランクを超える潜在ランクを持つモンスターは1匹もいない。
「はぁ……やっぱりそう上手くはいかないか。そもそもSSSランクの可能性を持つこの4人に出逢えたことが、ありえないくらいの奇跡なんだよな……」
こんなに見つからないとは思わなかった。SSSランクなんて贅沢は言わない。せめてBならすぐに契約するのに。
テイマー学院はCランク以上のモンスターをテイムすることが卒業用件に入っている。つまり、テイマー学院の卒業生は少なくともCランクのモンスターをテイムしていることになる。
これを達成できずに中退して、傭兵に流れる生徒も多い。
Bランクならそれよりも上。テイムできれば、テイマー学院を卒業した以上の成果になる。
アイリのおかげで未練は吹っ切れたとはいえ、未だにわだかまりが残っているのは否めない。
「プー」
「クゥ」
がっかりしながら採取をしていると、ルナとその背中に乗ったポーラがまた呼びに来た。
俺は期待はせずに後をついていく。
「プー」
10分ほど歩いたところでモンスターを見つけた。
それはEランクモンスターのサイレントキャットだ。
周囲の景色と同化し、音もなく忍び寄ってきて襲い掛かってくる黒い猫型モンスター。攻撃力は決して高くはないけど、その隠密性ゆえにEランクに分類されている。
ただ、自分が見つかりにくいことをいいことに、気を抜いていることもよくある。
「これは!?」
俺はステータスを確認して驚いた。
―――――――――――――――
個体名 :なし
種族 :サイレントキャット
属性 :なし
レベル :11/20
ランク :E
スキル :ミラージュ
状態 :良好
弱点 :なし
潜在ランク:A
―――――――――――――――
この森で初めて見る潜在ランクがAのモンスターだ。これは是が非でもテイムしなければならない。
テイムは基本的に戦って屈服させる必要がある。モンスターは強いものに従う習性があるからだ。
ただし、Gランクモンスターは戦闘力皆無で人畜無害だから例外。Gランクモンスターは弱くて臆病なので、まず懐かれないと話にならない。
それに、高ランクのモンスターの中には気に入った相手なら契約してもいいという物好きもいる。
「それじゃあ、決闘といきますか」
俺は潜んでいた木の影から姿を現し、正々堂々サイレントキャットに戦いを挑む。
「シャーッ!!」
突然現れた俺に毛を逆立てて威嚇するサイレントキャット。すぐにまるで蜃気楼のように姿が揺らいで、姿を消した。
しかし、今の俺はリリたちのおかげで常人よりも五感が優れている。
Eランクモンスターが使える魔法で俺を誤魔化すことはできない。
「はぁっ!!」
サイレントキャットが隠れている場所を見つけ出して蹴りを入れた。
「キャンッ」
猫は木の幹に叩きつけられて、ぐったりとした様子で地面に落ちる。
これで第一段階は準備完了だ。
「ヒール」
俺はサイレントキャットに手を翳して俺が与えたダメージを回復させる。
サイレントキャットは頭を起こして周りをキョロキョロと見回して首を傾けた。
「痛かっただろ、ごめんな。でも、勝負は俺の勝ちだ。お前をテイムしたいんだだけど、いいか?」
「にゃーん」
サイレントキャットは観念したように鳴いた。
名前を考えないとな。
真っ黒な黒猫。もうこれは一択だ。ジジにしよう。
「テイム!! 命名、ジジ。良ければテイムを受けいれてくれ」
「なーん」
俺はテイムを発動させる。
サイレントキャットも気にいったようで元気に鳴いて受け入れた。
淡い光がサイレントキャットを包みこみ、サイレントキャットと俺との間に魔力の糸が…………繋がらなかった。
なぜかサイレントキャットから伸びてきた魔力の糸が俺に触れた途端、弾けて消えてしまった。
「……」
結果が上手く飲み込めずに呆然となる。
テイム失敗……だと……!?
「なんでぇえええええぇええっ!?」
俺は驚いて大声で叫んでいた。
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