更なる力
第008話 伝説との出会い
家に帰ると、幸いにも母さんの体調に変化はなかった。
俺は胸をなでおろす。
夕食を食べ、アイリと話をした。これまで話せなかったことやリリたちのことを。
その日も妹が俺の布団に潜り込んできて一緒に眠った。
次の日。
「行ってくるな」
「うん」
これまでと同じように森に出かける。
「あ、今日から毎日帰って来れると思う」
「ほんと?」
昨日のホブゴブリンとの戦いでEランクモンスターも倒せることが分かった。
これでEランクモンスターの縄張りに入っても、油断さえしなければ問題なく採取ができる。今までよりコソコソとしなくていい分、楽になるはずだ。
より高額なアイテムを狙いたいところだけど、より深い場所にはDランクモンスターがいる。今度もホブゴブリンのように上手く倒せるとは限らない。今は無理に近づかない方がいい。
幸い進化に必要なアイテムは、どれもこの森や街で手に入る物ばかり。レベルというのは良く分からないけど、時間が経てば何か分かるはず。奥に行くのはもう一度進化してからでも遅くない。
それまでは現状維持さえできればそれでいい。
「ああ。なんたってリリたちがFランクモンスターになったからな」
「チィッ!!」
「プーッ!!」
「クゥッ!!」
「あはははっ。やる気満々だね」
任せろとでも言いたげに返事をするリリたちを見て、アイリがニッコリと笑った。
家の外に出ると、半透明の板がずっと浮かんだままなのが気になる。
「……そういえば、この板はずっと浮いたままなのか?」
邪魔だから消したいんだけど、どうすればいいんだ?
「あっ、消えた」
意識したら消えたってことは俺の意識次第ってことか。出ろと思えば出て、消えろと思えば消える。
少し練習したら見える見えないが簡単にできるようになった。
「名前がないと呼びづらいな。ステータスボードと呼ぼう」
いつまでも半透明の板と呼ぶのもなんだから適当な呼び名を付ける。
「よし、これでいいな」
準備が終わった俺は森の中に足を踏み入れた。
「今日からFランクモンスターも狩っていくぞ!!」
「チィッ」
「プーッ」
「クゥッ」
同ランク帯のモンスターなら問題ないはずだ。今まで戦闘を極力さけてきたから、戦いにも慣れておきたい。
それに、上限はあるけど、モンスターは戦闘を重ねれば重ねるほど強くなる。今までは戦闘力がなさ過ぎて戦わせるのも難しかったけど、これからはそれができる。
「ゴブリンが一匹でいる場所に案内してくれ」
アイリを見つけたように、空・嗅覚・聴覚が揃った3人なら森の中でもかなり正確に探知できるはずだ。しかもみんな進化している。昨日よりもっと精度が上がっているに違いない。
リリが空を飛び、ルナがポーラを背中に乗せて歩き始めた。俺はその後を追って森の中を進んでいく。
「グギャギャッ」
数分であっさりと見つかったゴブリン。
ゴブリンはホブゴブリンを子供サイズにしたようなモンスターだ。腕と足も貧弱でホブゴブリンと比べたら、とんでもなく弱い。
――――――――――――
個体名 :なし
種族 :ゴブリン
属性 :なし
レベル :3/10
ランク :F
スキル :なし
状態 :疲弊・空腹
弱点 :なし
潜在ランク:E
――――――――――――
「おっ?」
遠くからゴブリンを見ていたら、意識していないのに勝手にステータスボードが表示された。
しかも表示されたのは、俺が見ていたゴブリンのものらしい。
「敵の情報まで見れるのか……これは本当にとんでもない力だな」
しかも、相手の状態と弱点まで見えるなんて反則も良いところじゃないか。まさかこんなことまでできるようになるとは思わなかった。
「潜在ランクってもしかして……」
そして、何よりも凄いのはこの潜在ランクってやつだ。
検証してみないと分からないけど、多分これってこのモンスターがどのランクまで進化できるのかってのを表しているんだと思う。
潜在ランクが分かれば、同じモンスターの中から一番潜在ランクが高いモンスターをテイムできる。
これは凄いことになるぞ!!
潜在ランクの高いモンスターを見つけたら、ぜひテイムしたい。
それはさておき、残念ながらゴブリンに弱点らしい弱点はないらしい。でも、そもそもゴブリンにはどんな攻撃でも効くので必要ない話だ。
俺は背後から忍び寄って思いきり剣を振り下ろした。
「グギャァアアアッ……」
剣が肩口から深々と体の中心に向かって食い込み、一撃で絶命する。
おおっ、これがFランク3体分パワー。ホブゴブリンと戦った時も感じたけど、改めて実感する。以前の俺ではリリたちにサポートしてもらわなければ、勝つのも結構大変だったのに今では一撃だ。
リリたちにもゴブリンと戦ってもらった。
リリとルナは一対一でも勝利。でも、ポーラだけは勝つのが難しかった。攻撃力が低いから仕方ない。
この森に棲むFランクモンスターはゴブリンとコボルト、そして、フォレストフロッグの3種。それぞれと戦ってみたけど、余裕をもって倒すことができた。
この分ならたとえ群れで襲い掛かって来られたとしても対処できそうだ。
それから俺たちはFランクモンスターを積極的に狩りながら森の奥地に入り込み、3人に見張りを頼んで採集を行った。
その結果、寝る間も惜しんで活動しなくても、1日の稼ぎがここ最近1番稼げた日とそう変わらないものになった。
帰り道、皆のステータスボードを確認すると、皆のレベルが1から2へ。
――――――――――――
個体名:リリ
種族 :シマナーガ
属性 :なし
レベル:2/10(+1)
――――――――――――
個体名:ポーラ
種族 :ヒールラビット
属性:光
レベル:2/10(+1)
――――――――――――
個体名:ルナ
種族 :スノーフォックス
属性:氷
レベル:2/10(+1)
――――――――――――
なんで上がったんだろう……。
あっ、モンスターを倒すと、このレベルってのが上昇して強くなるのかもしれない。そして、10の方が上限。上限まで上がるとそれ以上強くなれない。
知識とつじつまが合う。
ゴブリンもそうだったけど、Fランクモンスターの上限は10なんだろうな。
これからは毎日ステータスボードを確認することにした。
「ざぁこ、ざぁこ」
「よわーい」
「ざっこぉ」
もうすぐ家に着く頃、子供たちが何かをイジメている姿が目に入る。
それは最弱のGランクモンスターのスライムだった。
楕円形をしていて、半透明で奥が透けて見える。人畜無害でむしろ汚れや汚物などを浄化してくれる益モンスターだ。
「こらこら、無害なスライムをいじめるんじゃない」
「えぇ~、ぼくたちがつかまえたんだから、どうしようと勝手でしょ?」
子供の1人が近づいてきて下からニヤニヤした笑みを浮かべている。どうしたらいいか分かっているよね、そう言いたげな表情だ。
「はぁ……分かった。3人に小遣いやるからもう放してやれ」
「わぁ、ふとっぱらぁ。しょうがないなぁ。このスライムはお兄さんにあげるね」
お金を受け取った3人の子供たちは去っていった。
今日の稼ぎが…………仕方ない。助けてしまったんだから。
「もう捕まるんじゃないぞ」
俺はスライムを抱き上げて見つかりにくい場所へと移動させる。
「ピピッ」
「どうしたんだ?」
スライムを地面に置こうとすると、俺の方に体を触手のように伸ばしてきた。
「ピッ」
「もしかして一緒に来たいのか?」
「ピィッ」
「仕方ないな」
子供たちから助けたことで懐かれてしまったようだ。俺は責任をもってスライムを連れていくことにした。
―――――――――――――
個体名 :なし
種族 :リトルスライム
属性 :なし
レベル :4/5
ランク :G
スキル :なし
状態 :良好
弱点 :全攻撃
潜在ランク:SSS
―――――――――――――
ステータスを開くと、俺の目に驚きの情報が入ってきた。
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