記念日
「ユミ、この丸なに?」
「丸? 何の話?」
「カレンダーの、赤い丸。これ何?」
「え? うそ、本気で言ってるの?」
「いや、記念日だよな? 付き合って一年の」
「そうだよ。なんで?」
「や、別に……じゃ、こっちの丸は?」
「どれ?」
「この青い丸」
「……わかんないの?」
「こっちは出会ってから六百日記念日だよな?」
「……そうだけど。さっきから何?」
「これは? この緑の丸」
「……」
「や、ごめん。これは『初めてのおうちデート記念日』だよな」
「……」
「で、こっちの黒と水色の二重丸は『初めて手を繋ぎました記念日』と『初デートの遊園地開業ニ十周年記念日』が重なっちゃってこうなってる」
「……」
「十二月二十四日の潰れたアウディみたいな丸は『クリスマスイブ』と『初めて記念日』と『出会いの土曜日記念日』と『記念日制定記念日』が重なっちゃってこうなってる」
「……何が言いたいワケ?」
「いや、記念日、少なくね?」
「もぉ~~~~~! そういう所が好きぃ♡」
「俺としてはユミがいるだけで記念日みたいなもんだけど、毎日『今日もユミがいる記念日』じゃ味気ないし、とりあえず明日も何かしらの記念日にしないか?」
「するぅ♡」
「明日は十二月十日だから……何かいい記念ないかなぁ?」
「ね♡ ね♡ 十二月十日はノーベル賞授与式なんだって! 『ノベール賞授与式記念日』は?」
「別に俺達がノーベル賞とったワケじゃないしなぁ」
「あとは世界人権デーだって! 『世界人権記念日』は?」
「うーん、ちょっと仰々しいかもなぁ」
「えぇ~、じゃあどうするのぉ?」
「そうだなぁ……じゃ、ノーベル平和賞と世界人権記念日を鑑みて、『LOVE&PEACE記念日』は?」
「えぇ~!! いいかもぉ♡」
「ほんとかぁ? なんかバカバカしくないかなぁ?」
「全然そんなことない!! とっても良いよ!! すごくなんか、良いよ!!」
「そうかなぁ」
「そうだよぉ!!」
「そうかぁ。ユミが言うならそうだよなぁ」
「ね♡ ね♡ 明日のお祝い、お外でご飯食べようよぉ!」
「おぉ? もう明日の夕飯の話してるのか? 気が早いなぁ」
「だって、明日が楽しみなんだもん! カズ君は違うの?」
「いや、俺も楽しみだよ。でもまずは、今日の記念日を祝わなきゃ」
「そっかぁ、そうだよね。……ね、今日の晩御飯、二人でおうちで食べようね?」
「おぉ。そうしよう。外食は明日のためにとっておこう」
「うん!」
「そいじゃ、ま、いきますか。今日をちゃんと『侵略型宇宙人からの人類解放記念日』にして、二人でお祝いするために」
「……ね、ね。手、繋いでて?」
「おぉ。そうだな」
おわり
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