タバコ

「ね、タバコ。わたしにも一本くれる?」




「あ、はい……早乙女先輩って、タバコ吸うんスね」




「まぁね」




「……」




「意外?」




「や、まぁ……そりゃ」




「そうだよね。自分で言うのアレだけど、わたし、清楚系だし」




「そっスね」




「……ここでわたしがタバコ吸ってたこと、サークルの皆には内緒だよ?」




「……うす」




「ね、火、ちょうだい」




「あ、ライター……」




「ううん。キミの火、分けて?」




「……う、うす」




「ん……」




「……早乙女先輩」




「ん?」




「逆ぅ……スね」




「何が?」




「今咥えてる方……火つける方スね」




「…………」




「…………」




「ふふ。冗談。面白かった?」




「……う、うす」




「では、改めまして……ん……」




「……早乙女先輩」




「ん?」




「吸わないと……点かないスね」




「何が?」




「や、火が……」




「…………」




「あの……早乙女先ぱ」




「黙って」




「……」




「黙って、見てて。いい? 何も言わないで」




「……」




「では……ん……」




「……」




「んゲホォーッ!! ゲホォッ!! ゲホッゲホゲーッ!!」




「絶対吸ったことないじゃないスかァーッ!!」




「げほっ!! げっほげっほ、げほぉっ!!」




「なんで普段から吸ってますよみたいな雰囲気で来たんスか!? あまりにもダサすぎる!!」




「げっほ、だって!! っけん!! けんけん!! けんけんけん!!」




「あーあ!! 大丈夫スか!? とりあえずタバコ一旦置いて――――」




「ダメぇッ!!」




「!?」




「だっ、けんけんけん!! だめっ!! これ吸うのッ!! けんけんけん!!」




「無理スよ!! 無理!! ひと吸いでそのダメージなのに!!」




「やだぁっ!! 吸ゔっゲッホゲホゲーッ!! ゲホーッ!!」




「わがまま言ってる場合じゃないでしょーッ!? 死にたいんスか!?」




「ゲホーッ!! たばこ吸ったくらいじゃ死なないもん!!」




「死なないとは言えっ、たばこの煙はあなただけでなく周りの人が肺がん、心筋梗塞など虚血性心疾患、脳卒中になる危険性も高めるんスよーッ!? 吸わない方が良いッ!!」




「けんっ!! じゃっ、キミはなんで吸ってるのさ!?」




「か、かっこいいから……」




「げっほ!! バカじゃないの!! バーカ!! たばこやめろ!!」




「む、ムチャクチャだーッ!! 言ってることとやってることがムチャクチャだーッ!!」




「げっほ!! げほーっ!! もういい!! 吸わない!! じゃもうキミは吸ってれば!? 一人でスパスパ!! バカみたいに一生!!」




「えぇ~ッ!?」




「わたし帰る!!」




「えぇ~~ッ!?!?」




 ◇




「……ってことがあって、パパはタバコをやめたんだ」




「お母さんそういうとこあるよねぇ」






 おわり

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る